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防音相談の課題・案件の難易度

今まで投稿した記事と重複しますが、約28年間続けてきた「防音相談」における対策課題と案件の難易度について考えてみました。

防音設計・施工の専門業者に限定すると、コンクリート構造の防音室を専門とする業者が最も多く、少数派は「木造防音」と「マンション防音」「低周波騒音対策」の専門家・事業者です。

このうち、現在は現場調査を直接行っていない「低周波騒音対策」については省略しますが、「マンション二重天井の騒音」と「木造家屋を透過する工場騒音」は低周波騒音の領域です。

ただし、私が担当してきた案件は「可聴域の低周波で、約30Hzから100Hzの周波数帯」であり、20Hz以下の超低周波騒音は専門外です。

マンション防音の難問案件は二重天井の騒音対策

他の記事でも触れましたが、一般的なマンションにおける二重天井の生活騒音は「重量衝撃音」と「軽量衝撃音」に大別できます。
*普通の二重天井は軽量音に対して減衰効果を出しますが、重量音に対しては逆効果になります。但し、二重天井の懐が約50センチ以上ある場合は重量音についても軽減効果があります。

ですが、普通のマンションの二重天井のフトコロ(深さ)は約10センチから20センチ程度ですので、軽量衝撃音に対しても不十分です。

重量衝撃音(足音、重量物の衝撃音など)の主成分は、約30Hzから250Hzの周波数帯です。一般の防音材メーカーが表示している性能データは125Hz以上の周波数帯ですが、これは建築基準法で定めている周波数が125Hz以上であるためです。低周波音の性能分析は軽視されていると考えても良いと思います。但し、吸音材については約30Hzから100Hzの周波数帯についても表示されており、このデータが重要です。

日本音響学会の研究者は、「通常のマンション二重天井における重量衝撃音対策は、現実的な対策工法が無い」とまで言うほど、難易度の高い案件です。ネット上の専門業者などの対策実績を検索しても、実例が殆ど出てきません。これは、マンション二重天井が共振体となって、天井裏空気層・軸組み下地・ボードを共振させて、騒音が階下に透過してくるからです。

この案件に対するマンションでの設計・施工事例は、相談者によると「防音職人のウェブサイト」にしか公開されていないということです。
*必ず成功するという保証を示したものではないので、あくまで騒音を軽減した事例という理解に留めて下さい。

木造音楽室と戸外騒音対策の防音相談

私の設計手法の特長でもあるのですが、他の専門業者に比べて薄型の多層防音構造の設計を得意としています。
このため、木造音楽防音室や新築戸建住宅の戸外騒音対策に適した「防音設計」と言えると思います。

契約を前提とした「防音相談」の場合は、約半分が元契約者の紹介及び建築士の依頼案件です。このため、紹介案件を優先してご予約をお受けしています。もちろん、内容に応じて、一般の新規相談者の打合せ予約にも対応しています。

難易度の高い案件としては、狭い部屋の音楽防音室の設計施工になります。また、木造住宅に透過してくる低周波騒音(可聴域)の防音設計も、それ以上に難しい案件になります。
このため、無料相談にこだわる相談者のご予約は後回しになります。

木造の場合は、共通して生活防音の構造的な制約として、分厚い防音対策は基本的に生活空間を必要以上に狭くするため、費用対効果は低くなります。

ちなみに、鉛シートを使用した遮音パネル工法は、木造音楽室にはNGです。音漏れが目立つだけでなく、音響を悪化させるからです。

木造防音の素人業者の特徴は「鉛の遮音パネルとグラスウール」を多用することですので、専門家の見分け方として、一つの判断材料になると思います。遮音材とグラスウールを多用する設計仕様は「約40年前の遮音設計」の古典的な手法です。時代遅れと言えると思います。

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