見出し画像

メガシンセシス・ケンブンロク pt4・FMエディット I

令和のサウンドショック、MEGA SYNTHESのお話。
昔の話になりますがファミコン全盛だった時代、地元の長崎屋(と言うミニデパートみたいなお店)のオモチャコーナーで貯めたお金を握りしめ、メガドライブを買い、我が家に始めてメガドライブがやって来た日の事。
画面は確かに綺麗で精細でしたが、サウンドに関しては実はそれほど衝撃を受けなかったんですね。
いやファミコンから比べればFM音源+PCMでめっちゃ豪華になっていたはずなんですが、その時代はブラウン管のテレビ。
メガドライブもモノラル接続(メガドライブでステレオ音声を楽しむときは本体のイヤホン端子にステレオイヤホンを接続する必要があった)なうえ、当時のテレビのサウンドだったのでそこまでの感動は無かったんですね。
が、後年になって色々と事実を知るうちに「いやメガドライブってめっちゃスゲエ音源積んでたんだ」って、むしろ驚愕したものです。

さて話は戻りますが、今回はいよいよ中核であるFMシンセシスに関して少し紐解きたいかなと。
ちなみに予め言っておきますがメガシンセシス・ケンブンロクではFMシンセサイザーのサウンド作りに関する深~いお話はメインには出てきません。
まあ、簡単な音色作りに関してのお話は出て来るかも知れませんが・・・
私自身、現時点でもソフトウェアやハードウェア等でFMシンセを勉強中の身であり、とてもじゃないけど人様に「FMシンセでこの音を作るには・・・」とか「これとこれの数値を掛け合わせるとあの音がでるんですよ!」みたいな説明は当然できません・・・
今でもソフトシンセとかのプリセットの値とにらめっこしながら「なるほど、この状態だとこんな感じの音が出るのね」的な、偶発でサウンドを作っている事が多かったりします。
FMシンセサイズは非常に難解な部分もあり、一朝一夕ではいかないシンセサイズでして・・・
詳しい、より深い部分でのFMシンセサイズに関してはグーグル等で検索すれば達人の解説が多数見つかるかと思います。

と言うワケでメガシンセシスのFM音源について。
まず概要としてメガシンセシスにはFM音源を扱えるFMトラックが3つあり、この3つのトラックで同時発音6ボイスを共有します。
元となっているYM2612ではFM音源が6トラックあり、1トラック1音となっています。
なので例えば和音(ド・ミ・ソなど)を鳴らす場合は3つのトラックが必要になるんですね。
しかもPCM音源を使う場合、6つのうちの1つを使用するのでFM音源の同時発音数は5トラックになります。
メガシンセシスではFMトラック数は実機よりも少ないものの同時発音数6音は確保されているので通常の使用であれば運用上問題は無いはずです。
しかしながらFMトラックを同時に4つ以上使いたい場合(例えばメガドライブのゲームサウンドを完全コピーしたい場合など)では同時発音数問題はクリアできても肝心のトラック数が足りない為、別途PSG音源(2トラック/同時4音まで使用可能)で代用する、DAWやサンプラー等に録音するなどの対策が必要になります。
もしくはMEGA SYNTHESを2台使うって手もあります。

いずれにしても1台ですべてをまかなうには制約が発生する可能性がある事も視野に入れての運用が良いでしょう。
ちなみにメガシンセシスにはサウンドロックと言うステップごとに別のサウンド(プリセット)を録音する機能があるので、同時発音でなければ3トラック以上のFM音源を奏でる事ができます。
これらはパラメータロックも同時に使用可能なので、個々のサウンドの音量やPANの位置、ゲートのタイム等を細かく指定する事もできます。

と言った所でようやっとメガシンセシスでのFMエディットを見て見る事にしましょう。
FMエディットモードでは付属のオーバーレイシートを本体に被せます。
これはFM音源での音色づくりを行うFMエディットモードでは本体ノブとボタンの内容が全く別の機能に入れ替わる為です。
この中には通常モードで別の割り当てになっている機能(例えばレガシーモードの選択やキーボードオクターブなど)もあります。

オーバーレイシートをかぶせたところ。
ちなみにシートの左端には剥がしやすいように取っ手替わりのシールを貼り付けてあります。
尚、オーバーレイシートはFMエディットの編集モード時に使用する形となります。


メガシンセシスでは以下のモードが切り替わる形となっています。

通常モード・・・選択したトラックのリアルタイム操作やシーケンスの再生や録音など、メガシンセシスをメインで利用するモード。

FMエディットモード(サウンド選択)・・・FMエディットモードの表面階層。この階層でエディットするFM音源のプリセット(32バンクx16音色)を選択したり音色をセーブしたりします。
このモード(階層)の時にオーバーレイシートを使用します。

FMエディットモード(サウンド編集)・・・FMエディットモードの中核部分。ここでエディットを行うオペレータの選択やパラメータの調整を行います。
※FMエディットモード(選択および編集)の時はキーボードによる演奏でサウンドチェックをできますがシーケンスを走らす事は出来ません。


とエディットに入る前に、まずはFM音源部分のちょっとしたお話。
メガシンセシスのFMサウンドの基となっているYM2612は4オペレータ/8アルゴリズムのFM音源。
いわゆる「FM音源!」の代名詞となっているYAMAHA DX7が6オペレータ/32アルゴリズムであるのに対して非常にコンパクトになっています。
が、それでも生成できるサウンドは非常に多岐に渡っています。

YM2612をエミュレートした、あるいは実際に利用したシンセサイザーは複数ありますが、どのメーカーの物もベースとなる資料(あるいはチップの持つ機能)そのままと言うよりは”シンセサイザー”として利用する為に色々と考えられて作られている感じがします。

Plogue社のソフトシンセ、chipsynth MDではこの様にシンセサイズの画面そのものがアルゴリズムの形を模しています。
各パラメータも一般的なシンセサイザーの考え方に基づいており、例えば音の立ち上がりに関係するアタックタイムに相当する部分は0だと最も早く、最大だと最も遅くなる様に設計されています。
YM2612の場合はアタックのタイムでは無くレートなので0だと最も遅く、31だと最も早くなる為、一般的なシンセサイザーと向きが逆になります。
また、chipsynth MDではアルゴリズムのオペレータ番号に関しても順番が逆(一般的には1-4の順序が逆)となっています。

こちらはTwisted Electrons社のMEGAfmでも同様でAR(アタックレート)が低い(MEGAfmの場合はフェーダーが最も下)だと音の立ち上がりが早く、高いと遅くなります。
また本体ディスプレイが2桁表示までの為、一部のパラメータが2桁(最大127までの3桁数値が存在する)までとなります。
実はこれに関してはサウンド作りの中核パラメータだったりして2桁となると再現と言う部分において微妙にニュアンスが変わって来てしまったりするのですが・・・


続いてInphonik社のソフトシンセRYM2612を見て見ましょう。

見た目はこんな感じで4基のオペレータが縦に並んでいます。
RYM2612ではARが高いとアタックが早く、低いとアタックが遅くなります。
アタックレートとは簡単に言うと「音量が大きくなるまでのスピード」となる為、数値が高ければ高いほどそのスピードが速く、逆に数値が低ければ音量が最大になるまでの時間がかかると言う考え方となっています。

こちらはアルゴリズムの画面。
一般的なものと比べ画像の上下が逆(通常は上から下へ信号が流れる様に描かれることが多い)ですが、オペレータの番号などは一般的なもの同じようになっています。

MEGAfm本体に描かれているアルゴリズム表はこんな感じ。
RYM2612と上下は逆ですが番号や並び順などは一緒になっています。

一方でメガシンセシスのオーバーレイシートに描かれているアルゴリズム表はコチラ。
MEGAfmに描かれているアルゴリズム表と全く同じとなっています。
各種ノブの動作に関してはシンセサイザ―準拠ではなく、RYM2612と同様に実際のパラメータ値の挙動(例えばARの数値が高ければ音の立ち上がりが速くなる)となっています。

これらはどれが正しいと言うものは無く、その祖父となりハードウェアなりを開発した人達の考え方であると言った感じでしょうか。
オリジナル(のチップ動作)に近いものとするのか、一般的なシンセサイザーに近い操作にするのか、これらは完全に作る側の好みであるんでしょうね。

メガシンセシスのFMエディットで使用するエリア(オーバーレイシート)はこんな感じ。
見るとわかる通り通常モードとは全く別物ですね。


てな感じで長い前置きはこの位にしておいて、実際のFMエディットモードへの手順を。
まずはfuncボタンを押しながら最も左下のキー(鍵盤キーの一番左)を押します。
これがFM EDITモードへ入る為のボタンとなります。
ボタンを押すとFMエディットのサウンド選択階層へと移ります。
この時点でノブやボタンを含め機能が変更されるため、オーバーレイシートをかぶせておきましょう。

サウンド選択モードでは主にBANKの選択(シート上のBANK項目。ボタンとしてはINIT(PTN)とCOPY(PAGE))、BANKのエクスポート(外部機器へのバックアップ)、BANKのリネームなどを行う事が出来ます。
選択モード中にBANKを選び(<がBANK番号を戻し、>がBANK番号を進めます)、1-16までのステップボタンでBANK内のサウンドを選択します(FMサウンドバンクは32個xプリセット16個)。
この時、鍵盤を弾くと選択したサウンドのプレビューを行う事が出来ます。
目的の(エディットしたい)サウンドを選んだらOKボタンを押し、FMエディットのサウンド編集モードへ入ります。
編集を行わない場合はCLRボタンを押し、キャンセルを押します。
メガシンセシスではBANK22までがプリセット登録されており、空白のユーザーエリアはBANK23~となります。
ただ「俺はプリセットなんて使わねえぜ!」とか「購入して最初にする事は全てのプリセットをイニシャライズ(消去)するのだぜ!」と言う強者であれば全てのサウンド、そしてパターンも使い倒すこともできると思います。

エディットしたいBANKとサウンド番号を選択したらOKボタンを押し、いよいよFMエディット(編集モード)へと入ります。

と言った所で長くなってしまったので今回はここまで。
次回はいよいよFMエディット(編集モード)へと進みたいと思います・・・が、まあサラ~っとパラメータを書こうかなと言う程度の予定だったり・・・
いや、実際どうなるかは記事を書き始めてみないと解らないんですけどね。

こちらはメガシンセシスのみで作ったファンタシースター千年紀の終わりにのOP。
前述でも書いた様にこの曲はFMシンセを4種同時に使う部分があり、1トラック分だけPSGトラックに移植して作成しています。
それ以外にもPSGトラックが和音構成で使われているので、まさにメガシンセシスのPSG4音同時の恩恵も受けている感じですね。
そのうち時間が出来たら(FM音源4トラックを使った)完全版を作りたいなあ・・・


メガシンセシスには現在、第二次生産分(3月以降に出荷予定)の予約が始まっていますので超気になるって人はMEGA SYNTHESIS製品ページ(こちらのページから予約ページへとジャンプできます)にとりあえずレッツゴーです。
またページ上部の[オンラインマニュアル]からMEGA SYNTHES日本語マニュアルやPCMリスト等、各種マニュアルをダウンロードする事が出来ますので併せてチェックしてみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?