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no.17 - 2020年の音楽を振り返って その1 -

2020年という年は、まさに歴史的な1年であった。
人類の歴史の過渡期とでも言ったらいいのか、文明の転換点といえばいいのか?

産業革命からひた走ってきた「成長・発展」というどこかうっとりするような言葉に捕らわれてきた人類は、ウイルスという自然の前では圧倒的になすすべはなく、これからどう地球環境と共存するかを考えざるを得ない。

私もこれからのことを随分と考えた。

勿論、音楽の果たす役割やヴィジョンも、2020年前と2021年後では、全く違うと思う。ある種この動きは、20世紀を牽引した音楽産業はもう過去のものにしていく流れも感じられる。ちゃんと自分たちの音楽的姿勢を形にしたミュージシャンは、実は世界中にたくさん存在するのだということを、私は改めて感じた。

世界から良質な音楽が届いた。

今年の音楽の振り返りも50曲と相当ボリューミーだが、一曲でも多く、読者の方に響く音楽があることを願う。

その1、その2に分けてご紹介します。なお、私が聴いた時系列に並べたもので、ランキングは全くありません。(今年は、BLM運動により、ブラックアメリカンの音楽はプロテスト的な音楽が多いようにも感じたが、そのあたりはあまり取り上げなかった。)



Mura Masa, Georgia - Live Like We're Dancing
イギリスのプロデューサー、DJとして活動するムラ・マサ(Mura Masa)こと、アレックス・クロッサン。イギリスのシンガー、Georgiaとの作品。
1月くらいにリリースされたが、2020年に起こるであろう期待感をこのダンサブルなポップを聞いて、この時は感じていた。


Tame Impala - Lost in Yesterday
Tame Impalaはオーストラリア・パース出身のバンド。
今作は、以前ほどサイケデリックな感じは受けない。ポップ感のバランスが良い仕上がり。


Mac Miller - Blue World
2018年に急逝した、Mac Millerの遺作。ラップの乗せ方の自由度が素晴らしい。


Jessie Reyez - INTRUDERS
コロンビアにルーツを持つカナダ・トロント出身のソウル/R&Bシンガーのジェシー・レイエズ。


Braxton Cook - All That I Want
サックス奏者、ソングライターとしての活動に加え、近年はヴォーカリストとしてもその才能を開花させ注目を集める若きアーティスト・Braxton Cook。


Dylan Sinclair - Home
カナダ、トロントの19歳のシンガーソングライター。4歳から教会で歌い始め、15歳から曲を書き始めたという、新人。


Frank Ocean - Dear April
ちょうど、日本でも緊急事態宣言が出た4月、やるせない思いだとか、これからどうなっていくのかわからない時に響いた曲。
フランク・オーシャンの書く曲は、ゴスペルなどのルーツを持ちながらも、個性的で、とても自由を感じる。


Kiana Ledé - Protection.
アリゾナで育ち、現在はカリフォルニア、ロサンゼルスを拠点に活動するシンガーソングライター、 Kiana Ledé (キアナ・レデ)。ソングライティングと並行して女優業も行う彼女。

コロナウイルスが世界を覆って、PVを自由に作れなくなったが、PVという文化は意味をなさなくなり始めたような気がする。この動画のように歌詞を画面上に流す動画は今年かなり増えた。
音楽は、耳で聴くという本質を問われたような時代の転換点でもある。


Celeste - Stop This Flame
ブリティッシュ・ソウルとR&B色が混じったジャズ調な楽曲を作り出す、イギリス人シンガー・ソングライター。
“Strange”のようなスモーキーなバラードとは対照的に、力強いヴォーカル。


Khruangbin & Leon Bridges - C-Side
タイのファンク・ミュージックから強い影響を受けたテキサス出身のトリオ・Khruangbinと、同じくテキサス州出身、グラミー受賞経験もある新世代のソウル・シンガー・Leon Bridgesによるコラボレーション。
一聴して、不思議な間があり、心地よいビートがあった。
ありそうで、なかった音楽。


CARIBOU - Home
カナダ出身ロンドン在住、ダン・スナイスのソロ・プロジェクト。元々はマニトバ名義で活動をスタートし、現在のCaribouに名義で活躍中。
マニトバ時代のいわゆるエレクトロニカの音楽を15年前くらいによく聞いていたが、最近はファンクやブレイクビーツのようなクラシックな匂いのする音楽を作っている。


The 1975 - The Birthday Party
The 1975は、イギリス出身のポップ・ロックバンド。2002年にチェシャー州ウィルムスローで結成され、現在はマンチェスターを拠点に活動している。
この人たちは、どこか普通のロックとは違う、何かが漂っている。音像が唯一無二なのかも知れない。


Giveon - LIKE I WANT YOU
Giveonはアメリカのシンガーソングライター。
今年、この曲が随分と再生回数を増やした。
初めて聞いた時、声をピッチシフトしているような錯覚があったが、どうやら地声らしい。


Yebba - Distance
米アーカンソー州ウェスト・メンフィス出身、本名はアビー・スミス(Abbey Smith)のYEBBA。
YEBBAは本名のアビーを逆さに呼んだもの。現在25歳であるが、フォーキーでハスキーな歌声は、素晴らしい。
ちょうど、コロナウイルスや、Black lives matter 運動が始まった6月くらいに聴いた。彼女の声には、どこか悲しみが同居していて、美しい。


Remi Wolf - Disco Man
カリフォルニアのシンガー Remi Wolf。
頭を空っぽにして、ビートに乗るだけで、かなり陽気になれる曲。
いい意味で、ぶっ壊れているので、とても良い。歌とグルーヴ感は素晴らしい。


Jack Dine, Masego & Alex Isley - Good and Plenty
ロサンゼルスを出身のR&Bシンガー、ソングライター、プロデューサーのAlex Isley。あのIsley Brothersのギタリスト、Ernie Isleyの娘。
ウィスパーボイスが素晴らしく、曲も2021年以降の音楽を予感させる、間のある音楽。


Tom Misch & Yussef Dayes - Kyiv
いわゆるネオソウル、という分野ではすっかり定着したTom Mischが、新世代ドラマーのYussef Dayesと作った新作。ベースは、Rocco Palladino。名ベーシスト、Pino Palladinoの息子。
グルーヴ感も新しい基軸のものとなり、非常に素晴らしい楽曲。


Yussef Dayes ft. Rocco Palladino & Charlie Stacey ~ (Live @ Jazzre:freshed)

こちらはライブとなるが(すっかりコロナでライブのほとんどは中止になり、ステイホームしながら動画を観る習慣がこの1年で一般化した)とにかく、鬼のようなテクニックを垣間見える。


Sam Wilkes - Descending
LA出身の若き才能溢れるベーシスト。
彼の音楽には、ジャズやエレクトロニックや様々な要素を感じられ、桃源郷のようなヴィジョンを感じる。Boards of Canadaのようにも感じられる。


The Breathing Effect - SHAPES THAT CHANGE SHAPE
LAを拠点とするビート・ミュージックシーンの最重要レーベル、Alpha Pupに所属するThe Breathing Effect。
これもジャズに対するカウンターカルチャー的なものを感じた。
インストバンドの新しい形のような、2020年以降のヴィジョンを得る。


Simon Jefferis - Vibrations
イングランド/ロンドン拠点のマルチ・インストゥルメンタリスト/プロデューサー Simon Jefferis。この曲はとてもかっこいいと思った。


Victoria Monét with Khalid & SG Lewis - Experience
SG Lewisがビートを作り、Victoria Monétが歌う、ディスコのような黄金パターン。非常にノリの良い曲。


Ezra Collective - Footprints
名門ブルーノートから今年出た、素晴らしいバンド。間のあるジャズ。


Athletic Progression - Japan
ヒップホップにジャズやソウルを融合させたサウンドで魅了するデンマーク発のユニット、Athletic Progression。
この曲は、いわゆるダブステップのビートを基本としてるが、洗練されている。
もう10年前くらいからこういう音楽はジャズやインストでやるだろうと思い、所属しているバンドで以前作曲していたが、ここまで洗練されたものは結局できなかった。
このユニットは、非常に型にはまらないところが、オリジナリティ溢れるところ。


Sinead Harnett - Stickin' (feat. Masego & VanJess)
イギリスのエレクトロニックシンガーソングライター、シニード・ハーネット。
今年発表したこの曲は、ビートがとても良い。

(no.18 その2に続きます。)

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