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no.09 -2019年の音楽を振り返って その2-

この前、この振り返りをシェアして頂いた結果、結構新しい音楽が気になっている方々がいるのだなぁと思い、この前ご紹介しきれなかった分も少し追加してみようと思う。少しでも皆様のライブラリを増やすお手伝いになれば、と思う。

これだけ”情報”が自由になってしまった結果、逆に不自由になってきているのかも知れない、とも思う。情報が分散しているからなのだろうか?レコード会社中心の中央集権的な音楽産業が崩れてしまった結果、1つのメディアにアクセスするといろいろな情報が得られた2000年以前とは今は情報が得られにくいのかもしれない。2020年になる今、私はいろいろな手段を使い音楽を掘っている。

以下、2019年リリースのカタログから。

Charli XCX & Christine and the Queens - Gone
今、ヨーロッパ界隈で人気のあるイギリスのチャーリーXCXと、フランスのクリスティーン&ザクイーンの曲。両者ともに個性がすごいのだが、今現行のヨーロッパのPOPチューン。

Christine and the Queens - Comme si
フランスのクリスティーンの曲。80年代のような音像で、2020年代の新しい音楽を彼女はやっている。よく彼女は、アメリカの西海岸のDam Funkにトラックを作ってもらっている。そうしたアメリカの音楽とのコネクションも今のヨーロッパにはある。音楽における地域性は今の音楽にはあまりないかも知れない。

Lizzo - Juice
リゾも去年冬くらいから鳴り始めて、今年ものすごくヒットした。この人もプリンスが生前フォローしていた歌い手。すごくポジティブな音楽。

Roosevelt - Falling Back
ドイツ・ケルンを拠点に活動するプロデューサー Marius Lauber (マリウス・ラウバー) によるプロジェクト。昨年は、チルウェイブというジャンルを数年前に確立した、Washed Outを迎えて楽曲を作ったりしていた。ポストチルウェイブというところだろうか。

Jordan Rakei mind's eye
オーストラリア出身で現在はロンドンを拠点に活動する人。トム・ミッシュとの親交も深く、ジャズをうまく組み合わせた新しいサウンドを作っている。これはイギリスの老舗、Ninja-tuneからリリースされた楽曲。トム・ミッシュ好きにはいいと思う。

GRACEY - Different Things
この人も今年、すごく新しい楽曲を出した。イギリス、ブライトン出身の21歳の新世代の音楽家。ビートの感覚とかも素晴らしい。この人はこれからカミングアウトすると思う。

Shura - religion
イギリスのマンチェスターのシャウラ。この人も80年代っぽさもありつつ、現代のポップミュージックを作っている人。ファンクとか色々な要素を感じる。

Donny McCaslin - The Opener
故デヴィット・ボウイが最後に制作したアルバム、「ブラックスター」でも共演したサックス奏者、ダニー・マッキャスリン。ビートの感じが、トリップホップのDJ Shadowのような感じ。

こちらはNPRのライブの模様。

Cardi B & Bruno Mars - Please Me
言わずと知れた、Cardi Bとブルーノ・マーズのトラップ。売れ線のPVのため、内容はとにかく薄いが、とにかく歌がうまい。ブルーノ・マーズは面白い音楽を作っていると思う。

Louis Futon - Supposed To Be (feat. Duckwrth & Baegod)
フィラデルフィア出身のプロデューサー/パフォーマー。これは新しいビート。こういうのが2020年代のビートになると思う。

SOFI TUKKER - Fantasy
ニューヨーク発の男女デュオ。上質なエレクトロミュージック。

No Mono - Keep On
オーストラリアの Tom Snowdon (Lowlakes), Tom Iansek のデュオ。
音楽の感じが面白かった。

Christian Scott aTunde Adjuah - Ancestral Recall (Feat. Saul Williams)
現代アメリカのジャズを牽引するトランペット奏者、クリスチャン・スコット。トランペットの音は独創的で、カミソリのような切れ味。
現代アメリカは分断されていると騒がれているが、人種問題を正面から捉えている素晴らしい楽曲。

Greg Foat - The Mage
イギリスのジャズキーボーディスト、Greg Foat。
これもあまり今まで見られなかったようなジャズの音像。

Mereba - Sandstorm ft. JID
アメリカのシンガーソングライター、Mereba。
新しいソウルの形を見た。

Red Axes - Ho Chi Minh
今年、ハウスのトラックの中で一番衝撃を受けた音楽。ベトナムの伝統音楽をサンプリングしながら、ハウスに仕上げたこれは発明。
Red Axesはクラブミュージックでは有名なボイラールームにも出演し、フロアを揺らしている。今、国際経済的にも文化的にもベトナムは熱い。

Kindness - Cry Everything
イギリスのシンガーソングライター、Adam Bainbridgeによるプロジェクト、Kindness。スウェーデンのシンガー、Robynを迎えた新曲。ハウシーな曲。

River Tiber - Taurus
カナダ/トロント拠点のプロデューサー/マルチ・インストゥルメンタリスト Tommy Paxton-BeesleyによるRiver Tiber。幽玄な楽曲づくりが魅力的。とても切ない曲で心を打たれた。

Amber Mark - What If
アメリカのソウル好きにはオススメの曲。しかし彼女はベルリン生まれの女性R&B(リズム&ブルース)シンガー。クラシックなソウルのベースがよく出ているいい曲。

Lyves – Faded
イギリスで活躍するLyves。一聴した時、シャーデーのような感じを受けた。
これも切ない感じの音楽で、2020年の音楽。

Mahalia - Grateful
イギリス・レスター出身のマハリア。数年前からフォローしていた。今イギリスで注目されている新人。こういう音数の少ない音楽は2020年以降の音楽。

Amaal - Coming & Going
ソマリア系のカナダ人のAmaal Nuux。このトラップのビートもすごく新しさを感じた。ワールドワイドに人が動くに連れ、それぞれの民族の持つビート感覚がエレクトロミュージックに反映されるようになってきたのだろうか?

KALLITECHNIS - HONE$TY
去年、アメリカで相当聴かれたPink Sweat$の”Honesty”のカバー。

ピンクをアーティスト・カラーとしている新人R&BシンガーPink Sweat$は去年の秋にブレイクした。

Pink Sweat$ - Honesty

Noble Oak - Evaporate
イギリスの新世代アーティスト。2020年から徐々に出てくる人。Tame Impalaが好きな人にはいいと思う。

Fontaines D.C. - Boys In The Better Land
イギリスの新しいオルタナティブなパンクバンド。久しぶりにいいパンクミュージックを聴いた。

Easy Life - Nice Guys
UKレスター出身のニューカマー、5人組バンドEasy Life。この人たちも2020年以降楽しみな人々。いい感じのファンク。

今回も26曲ほど紹介した。
前回のと合わせて、計51曲ほど、ノンジャンルでお届けした。ちなみに、音楽評論家の方々が紹介しているものもある程度チェックはしているが、ここでは紹介していない。それらは彼らの文章を参考にしていただければと思う。

私は地球上の若いインディーズの音楽ばかり聴いていて(ときにヒットチャートのものも偏見なくいいものは聴くが)あまりに聴いた曲数が膨大で今年のものがもう数年前に聴いた錯覚すら覚える。自分でもこの1年恐ろしいくらいの量を聴いたのだと思う。情報量が多い昨今、私は20代の時に聴いた1年分の量の音楽を、現在は1日で聴いていると思う。

私はサブスクリプションのAIのレコメンドなどを相当数チェックし、その中からピックアップする。さらに、海外のネットラジオでホストDJが紹介する新しい音楽をいつもチェックしているし、イギリスのBBCやNHKFMも聴いている。雑誌もチェックする。

音楽を作る上で色々な音楽に触れていたいのと、単純に聴いたことのない未知の音楽に触れた時のワクワク感がいつまでも欲しいので、好奇心の赴くままに聴いている。

若い頃は、1950年代から1980年代くらいまでの古い音楽ばかり聴いていたのだが、天国に行った人々の音楽ばかりで飽きてしまい、ここ数年前からは現代の若い人々の音楽の方を面白がっている。昔の音楽を長い間聴いていたおかげで、楽曲構成は一聴して昔のスタイルか、新しいかは判断できるようにはなった。

ともあれ、今年もたくさんの発見があり面白かった。

たくさんのミュージシャンに感謝と敬意を表したい。

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