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no.12 -混ざり合う音楽の風土:「ノイズ」の大海を泳ぎ音楽の「感動」を求めて-

私は日々、世界で鳴る膨大な音楽に身を委ねている。今まで20世紀の音楽、民族音楽から名盤まで、ジャンルレスに興味の赴くまま聴いてきた。ここ4年くらいは、現代の世界で流れるインディーズ音楽や最新のアメリカ、イギリスの音楽を中心に聴いている。

音楽が発展する、新しいジャンルの音楽が創造される、とはどういうことだろうか?

歴史が教えてくれることには、様々な文化が混ざり合う風土・カルチャー・場所がまず前提にある。その場所で異なる文化、音楽が混ざり合い、化学反応が起こり、新しい音楽ができる。

クレオールの文化と黒人音楽がアメリカ南部のニューオリンズで混ざり、ジャズの萌芽になった。アパラチア山脈の辺りにて、アフリカンアメリカンや様々な人々の音楽が混ざってカントリー音楽が形成された。スペインの植民地であったキューバでは黒人音楽とスペイン系の音楽が混ざり、キューバ音楽ができたりと、アメリカ大陸には文化的な化学反応の要因が多々あった。

例えば、日本においては、クラフトワークに触発され、マーティン・デニーの音楽を電子音楽にしたのが始まりであるYMOは、テクノミュージックの萌芽に影響を与えた。

つまり、新しい音楽は多文化の混血やテクノロジーとの融合により、新しいジャンルの音楽を形作ることである。

純粋に単一民族しかいない土地においては、そうした化学反応は起こりにくいが、現代のような情報が溢れ、何処に住んでいようと検索さえすれば何でも知ることのできる現代では、いつどこにいてもそのような化学反応は起こりうる可能性はある。

今や化学反応の場所は、ネットになったのだろうか?

私は、ネットの世界では、情報に内在する「ノイズ」が増えて、音楽の混血が起こりにくくなっているようにも思える。

SoundCloud やYouTube によって、個々人のマインドが海外や外に向いていれば、様々な音楽との化学反応が起きる可能性が高くなった。人々がその化学反応を楽しみ、一つのムーブメントにしてしまえば、ジャンルが成立していくようにも見える。

しかし一方で、日本で今流れている音楽を聴くと、アニソンやJ-POPは、ある一定の理論と法則によって音楽が他文化と混ざらず、ガラパゴス化しているようにも感じる。

今東京も20年前に比べれば沢山の外国の人が行き交い、国際都市のようになってきたが、日本の人々のマインドは果たして世界に対してオープンになっているのだろうか?

洋楽、海外の音楽が好きだった日本の人々は、今どの情報源をあてにしていいかわからない人がいるとよく聞く。これだけ「情報」に含まれる「ノイズ」が乱反射すると、その中に埋もれる自分の欲しい「感動」にはたどり着くのが難しいのかも知れない。

昨今のコロナウイルスの世界的な波及は、ウイルスそのものよりも、「ノイズ」が人々の持っている不安を増長させ、その不安が日々の日常、経済までも脅かすほどになってしまった。「ノイズ」=「恐怖」に、現代の我々は感染しているように思える。「ノイズ」の大海において本質を見極めるのは難しい世の中なのだ。

話を音楽の混血に戻そう。
文化の交流において大切なことは、人と人の心に響く歌声や、身体を基調とするリズムが音という音波となって体感され、それが混ざっていく過程である。ジャズ、カントリー、キューバ音楽はまさにそういうライブ感があった。

ネットにおける音楽は、耳だけで聴く、身体で体感する音楽ではないため、文化交流は進まないのだろうか?

大規模な海外のアーティストを呼ぶフェスはそういった意味で体感する音楽であり、一つのフェスで様々なアーティストを聴くことでジャンルレス化を促進し、文化交流の場となっている。

日本語で作られる音楽は、そうした意味で閉じた音楽になる傾向があるのだろうか、そんな気もする。これは日本に限らず、北京やアジアの国々の都市はどこも同じだと思う。実際に行ってみて、そう感じる。

今、ロンドンやアメリカで鳴っている新しい音楽は、もはやジャンルが溶けている。一聴して、飽きがない。ジャンルとしてパターン化されている音楽と違い、おもしろい。それは様々な人種が交錯するロンドン、LA、ニューヨークという風土だからこそ、そうなるのだ。

この検索文化の世の中は、情報の大海に飛び込んで、自分で探すより手立てがない。
英語が多少わからなくても向こうのラジオを聞いているとなんとなくわかってくるものだ。新しい音楽を作ろうと思ったら、未知なるものを吸収する、ただそのような気持ちでいるだけでワクワクする日々は広がる。

Spotify やApple Musicのレコメンドも、自分の聴く音楽の幅を広げることでAIやセレクターのチョイスも変わっていく。自分の欲しい「感動」は、自分の「感動」を深めなければ増えない仕組みになってしまった。

「ノイズ」の大海をスムーズに泳ぐには、自分で調べて吟味し、自分が感動するものを聴けばいい。

感動は、探し求めて外にあるのではなく、自分の心にある。その感動を自分で辿り体感することで、ネットの時代でも音楽の混血は起こりうるのだろう。

最後に、今世界で鳴っている音楽が聴けるリンクをご紹介します。

イギリスのBBC Radio1で平日放送されている人気番組、Annie Macの"Future Sounds"のリンクです。↓

こちらは、アメリカ西海岸、LA発のインターネットが生み出したレーベル、Soulectionのリンクです。↓


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