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no.6 -生活の音楽・日本と東南アジアの比較-

インドネシアに1ヶ月半滞在したことがある。
2014年、今から5年も前の話だが。ジャカルタにはモールが大小問わず3000ほどあり、巨大なモールで毎日プロのミュージシャンが至る所で演奏していた。店舗に入ると日本と同様にBGMが流れており活気がある。

年に一回、ジャワジャズフェスティバルという大規模なフェスもあり、音楽にとても関心のある国民性なのだと知った。現在では、日本以上に音楽熱がある国民性だ。

インドネシアといえば、ガムランやケチャが有名だが、東南アジアに特有の歌謡曲も多く、幅広い。当時現地で感銘を受けた、インドネシアでは有名なシンガー、Sandhy Sondoro。

アフリカンアメリカンのソウルミュージックのような音楽や、アメリカの80年代から90年代のロックも好んでいるようだ。そうした音楽は、首都ジャカルタのポンドックという南のモールでよく聞いた。対して、高所得者が集まる北のモールでは、イギリスBBCで流れるような最先端のクラブミュージックやセンスのいい音楽が流れていた。所得と文化の高さは比例しているのかも知れないと思った。

ともあれ、国民全体が音楽が好きなのだと思った。

町中で音楽が流れている日本に暮らしていると、インドネシアの状況は当たり前のように思うが、中国、香港などでは街に音楽が流れていない。

生活の中に音楽があるかないかは、文化によるものだ。

日本の場合は、どこに行っても音楽が流れていて、音楽全体がアンビエントミュージック、環境音楽になってしまったのだと思う。
特にモダンジャズのアンビエント化は甚だしい。誰も居酒屋で鳴っているジャズに耳を傾ける人はいないだろう。

単純にモダンジャズ=お洒落な気分という、ジャズの記号化も仕方がないことではあるが。

しかしチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピー、チャーリー・クリスチャン、セロニアス・モンクというジャズの巨人達が1940年代にニューヨークのミントンズ・プレイハウスで夜中にセッションを繰り返しながら発明したモダンジャズというフォーマット或いは装置は、その後の音楽に大きな影響を与えたことは間違いない。


ジャカルタで出会ったジャズミュージシャン達は、本当にテクニックも持っていたし、より彼らが音楽性を高めたプロダクションをするとおもしろいと思った。

これは最近マレーシアから出たシンガーソングライター、Yunaだが、アメリカのラッパーLittle Simzとリリースした素晴らしいソウルミュージック。

実は日本人が知らない間に、優れたミュージシャンは東南アジアから世界で活躍している。最近のアメリカのヒットチャートを賑わすのは韓国のビートメーカーだったりする点もおもしろい。

居酒屋のモダンジャズを無意識に聴いている我々は、とてつもない音楽を作れる環境にいるかも知れない。こんな環境をありがたいと思いつつ、外に目を向けて知らない世界やおもしろい音楽に触れながら、新しい音楽を創造していきたいものだ。


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