【当たり馬選定の決定打】新・測尺評価法を解説します
(1)すべての馬の測尺を一律に比較するのはナンセンス
ブログ『相馬の梁山泊』や『相馬の水滸伝』で何回も書いている新・測尺評価法が難しい、わからないという声が多いようなので、もう一度解説します。
測尺は1歳のある時点(社台・サンデー・G1は5月末から6月初旬)の時期に一斉に募集馬の体高・管囲・体重を計って発表している。
この数値を一律に比較して優劣を考えるのはおかしい。
サラブレッドの年1歳は、人間の6~8歳ぐらいと言われている。
サラブレッド、特にこの時期の若馬は成長が早い。6~8歳と幅をもたせたのは、馬ごとに生まれ月が異なるためだ。
馬の生まれ月2~3か月の差は人間で言えば1歳程度の違いにも相当する。
だから、生まれた月日が異なる馬を同じ時期に計った測尺基準に当てはめて比較してもうまくいくわけがない。
つまり、すべての馬の測尺を一律に比較するのはナンセンスというわけだ。
(2)新・測尺法は各馬の日齢(誕生月日)に合わせて修正して比較する
比較するのは、生まれた月日が違う馬どうしではなく、同じ日齢で同じ生まれ月の馬(でなおかつ同じ性別)の平均値と比較して成長度を測るほうが理にかなっている。
日齢が同じであっても、生まれ月や性別が異なれば、当然成長のスピードが違う。だから、比較するには、日齢と生まれ月と性別が同じ馬と比べなければ意味がない。
ちなみに、馬などの動物は人間よりも成長が早いため、年齢や月齢で成長度を表すのではなく、誕生日から何日経過したかの日齢で表すのが獣医学の基本となっている(これはモルモットなどの実験動物も同じ)。
(3)計算例:エフフォーリアの場合
それでは、今年(2021年)の皐月賞馬、エフフォーリアを例にとって、説明しよう。
まず、キャロットが発表したエフフォーリアの測尺が以下の数値になる。
ケイティーズハートの18(エフフォーリア):誕生年月日(18年3月10日)
このデータから、まずエフフォーリアの日齢を計算する。
キャロットの測尺測定日(2019年8月22日)
注.8月22日はキャロットのホームページの公表日で、厳密には測尺測定日ではないかもしれないが、他のキャロット募集馬も同条件であるので、8月22日を測尺測定日とみなす。もし厳密に出すのなら、クラブに電話で確認してみればよい。しかし、私はキャロットの会員ではないから、それは不可能だった。
日齢530日の馬の日齢を出すには、キャロットの測尺測定日(2019年8月22日)からエフフォーリアの誕生年月日を引けばよい。
そうすると、日齢が530日と出た。
次に、日齢530日でエフフォーリアと同じ3月生まれの牡馬と測尺を比較する。
これはJRAの育成がデータを公表しているので、これを利用する。
まず体高であるが、エフフォーリアと同じ日齢530日の馬のデータがない。
したがって、510日と540日の馬のデータを用いて、日齢530日の馬の体高の平均の推定値を154.7と計算した。
次に体重であるが、体高と同様に510日と540日の馬のデータを用いて、日齢530日の馬の体重の平均の推定値を444.9と計算した。
エフフォーリアの体高と体重を同じ日齢530日の馬の平均の推定値と比較すると以下のようになった。
見ての通り、エフフォーリアの体高、体重ともに推定平均値よりも大きく上回っている。
傾向としては、体高と体重が平均よりもプラスのほうがレースパフォーマンの向上につながる。
事実、この1歳時のエフフォーリアの測尺によるアドバンテージがそのまま皐月賞の舞台で優勝トロフィーをもたらした。
ちなみに胸囲と管囲はJRAが平均値を出していないので、測尺評価の対象に用いない。
(4)ライラックスアンドレース産駒を測尺で比較する
新・測尺評価法の計算はわかった。
でも、エフフォーリアはわざわざ複雑な計算をしなくても、クラブの測尺発表時に、数字を見れば大きい馬だということが大方の会員にはわっていた。
事実、エフフォーリアは2歳8月に新馬としては大きい516kgでデビューしたわけだから。
賢い人はこう言って反論するだろう。
それでは、別の馬の例を出そう。
サンデーサラブレッドクラブで募集されたGⅠ4勝馬ラッキーライラックで新・測尺評価法を考えてみる。
比較のために、この馬のきょうだいの測尺と比べてみた。
下に表を作成したが、一目瞭然、ラッキーライラックが体高・体重において、両方とも(推定)平均値を上回っている。
弟のライルも体重でラッキーライラックの数値よりも大きく(推定)平均値を上回っているが、戦績は2勝止まりだ。
このことから、体高・体重が(推定)平均値よりも大きいから必ず良好なレースパフォーマンスを示すわけではない。
また、ラッキーライラックの体重(平均よりも+1.3kg)という数字は統計上の誤差ということも考えられる。
しかし、体高(平均よりも+4.6cm)は誤差とは考えられず、これは(推定)平均よりもかなり大きい数値だ。
体高が高い馬はその後に大きな成長を見込める馬といっていい。
測尺が体高も体重も(推定)平均値よりも上回っているのが理想だが、あえてどちらか一方を挙げるなら、体重よりも体高が上回っているほうが、重賞勝ち馬を多く出している印象を持つ。
(5)まとめ
このように、測尺から募集馬の(大きい/小さい)や(体高が高い/低い)を判断する場合、微細な部分はどうしても主観が入る。
この新・測尺評価法はこうした主観を排除して、客観的にその募集馬の馬体を判別できるのに優れている。
もちろん、(数値は今回挙げないが)アエロリットやクロノジェネシスのように体高や体重が平均値よりもマイナスの馬で、GⅠを勝った馬もいる。
こうした馬は、アエロリットのように夏を境に急成長した馬や、クロノジェネシスのように3歳秋以降に本格化した晩成の馬という特徴を持つ。
だから、新・即尺評価法は万能・万全ではないことは言うまでもない。
しかし、波が多いあてカンに頼って今まで未勝利馬や500万下頭打ちの馬ばかり引いている会員にとっては、試してみる価値があるのではないだろうか。
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今年(2021年)の社台・サンデー・G1サラブレッド募集馬全馬について、新・測尺評価を行い、簡単なコメント付けた有料記事を作成する予定です。
みなさまの選馬の参考にしていただけたら幸いです。
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