【エピファネイア産駒狙うのはこの馬】2020年社台・サンデー、G1募集馬
(1)サンデーサイレンスの4×3のクロスを持つエピファネイア産駒の活躍が目立っている
4×3、または3×4のクロス※は「奇跡の血量」と呼ばれる。
サラブレッドの血統の歴史は近親交配を繰り返して発展してきた。
これは優れた競走能力を伝達する一方、気性難や虚弱体質を持つ馬が生まれる要因ともなる。
いわば両刃の剣といってよいが、そのちょうどよいバランスが
4×3(3×4)の絶妙の配合で、これは競走馬の交配を行う場合の標準的な血統理論で称揚されてきた。
実は、エピファネイア産駒の獲得賞金上位の馬にサンデーサイレンスの4×3のクロスを持つ馬が目立っている。
今年(2020年)の桜花賞優勝馬のデアリングタクトがまさにこのインブリードを持つ。
●デアリングタクトの5代血統表
試みに賞金ランキング上位10頭の馬を調べると、8頭もの馬が該当する。
そして、1位から5位までがすべてこの「奇跡の血量」を持つ馬で占められている。
これは、馬券戦術に使える!
そう思って欣喜雀躍(きんきじゃくやく)した。
ところが、冷静に考えると――
※クロス:血統表をさかのぼって、祖先に同じ馬が複数いること
(2)そもそも生産されたエピファネイア産駒に「奇跡の血量」が多くなっている
エピファネイア産駒でサンデーサイレンスの4×3のクロスを持つ馬がレースに行って有利、というわけでは必ずしもないのではないか。
そもそも、エピファネイア産駒自体に、このクロスを持つ馬がとても多い。
分母が多いから、当然勝ち上がる馬も目立って見える。
生産されたすべてのエピファネイア産駒を調べてみたわけではないが、こんな単純な理由が成り立つ可能性が高いのではないだろうか。
それを私は早とちりした。
数字のマジックに騙されたわけだ。
それでは、なぜエピファネイア産駒にサンデーサイレンスの4×3のクロスを持つ馬が多いのだろうか?
今回の主題はこのテーマを扱う。
(3)種牡馬戦線に異常あり
上の表は2017年の国内で繋養されている種牡馬の種付け数ベスト10である。
この表からいろいろな事実を読み取ることができる。
おおまかな傾向としてわかるのは、サンデーサイレンス系の後退とMr.Prospector系(というかMr.Prospector系は広すぎるので、もはやキングカメハメハ系と言っていい)の台頭と総括してもいい。
かつては上位にランキングしていたサンデーサイレンス系の種牡馬の種付け数が近年めっぽう減少した主な理由は、第一に国内でサンデーサイレンス系の種牡馬をつけまくって「血のジレンマ」(吉沢譲治)に突き当たってしまったこと。
つまり、国内の繁殖牝馬や種牡馬はサンデーサイレンス系ばかりになって、交配先を見つけるのに困難な状況に陥った。
癇性(かんしょう)がともすると気性難になりやすいサンデーサイレンスの濃いクロスを生産者は避ける傾向になった。
その結果が、上の表にみられるようにサンデーサイレンス系種牡馬の種付け数の著しい減少となって現われた、というわけだ。
もちろんその背景には、ディープインパクトの衰えを背景に持続可能性をはかって種付け数を抑えたこと。
またこの事象と関連するが、ディープインパクトの種付け価格の高騰化、ポストディープインパクトの種牡馬の混迷など、さまざまな事情がサンデーサイレンス系衰退の背景に絡み合っている。
以上を大胆にまとめると、生産者はサンデーサイレンスのきついクロスをなるべく避けている、ということになる。
(4)エピファネイアの種牡馬のなかの立ち位置
上掲の種牡馬の種付け数ベスト10を見ると、やはり上位にくる馬は種付け料もいい値段だ。
ドゥラメンテとモーリスは2017年は供用初年度で、まだ産駒が走っていない。それどころか生まれてもいないのに400万円は高額である。
だから、種を付ける繁殖牝馬もそれに見合った良血が選ばれる。
エピファネイアはこの年は供用2年目でこの時点では産駒はまだデビューをしていない。けれど、前年に付けられた産駒がこの年に生まれているので、おおよその傾向はつかむことができる。
でもって種付け料も250万円と、ドゥラメンテとモーリスに比べるとリーズナブルだ。
加えて、サンデーサイレンスの次世代の種牡馬が生産界ではあふれていて、その子ども、つまりサンデーの孫の世代にあたる中級血統の繁殖牝馬が牧場に数多くいる。
これらの馬を種付け数上位の種牡馬につけることはできない。
それは牝馬の血統的な質と、種牡馬の格(価格)のバランスをはかるうえで好ましくないという理由に加えて、サンデーサイレンス産駒の種牡馬を付けるとサンデーの血が濃すぎるからだ。
これに対してエピファネイアはサンデーサイレンスから数えて3代目(ひ孫)にあたり、サンデーの孫世代の牝馬に付けると4×3となり、インブリードの程度もちょうどいい。
こうした事情があって、結果としてエピファネイアの産駒にサイレンスの4×3のクロスを持つ馬が多いのだろう。
まとめると、エピファネイアは種付け料と種牡馬の格から見て、生産界にあふれるサンデーサイレンスの孫世代の繁殖牝馬につけるのにちょうどふさわしい立ち位置にある。
エピファネイア産駒でサンデーサイレンスの4×3のクロスを持つ馬が多い背景として、このような事情が推察できるのである。
そうはいっても、このクロスを持つエピファネイアの初年度産駒から早くも3歳クラシック牝馬のデアリングタクトが登場した。
やはり「奇跡の血量」と呼ばれるだけあって、このクロスを見過ごすことはできない。
今年の社台・サンデー、G1サラブレッドクラブの募集がもうすぐ始まる。
それでは、本年度の募集馬のなかにサンデーサイレンスの「奇跡の血量」を持つエピファネイア産駒が何頭いるのだろうか。
調べてみた結果を次章で検討してみたい。
(5)2020年社台・サンデー、G1募集馬でサンデー4×3のクロスを持つエピファネイア産駒
やはり、というか該当する馬は8頭もいた。
3クラブでエピファネイア産駒の募集 9頭(サンデー3頭、社台3頭、G13頭)のうちの8頭。
非常に高い率でこのクロスを持つ馬がいる。
これはエピファネイア産駒の全体的な傾向を反映しているものだろう。
だから、エピファネイア産駒でサンデーサイレンスの4×3のクロスを持つ馬が当たり馬でお勧めという言い方には違和感が生じる。
そこで活躍する条件を絞ってみた。
もう一度「エピファネイア産駒でサンデーサイレンスの4×3(3×4)のクロスを持つ馬 」の表を見ると、賞金ランキングの1位~4位まで牝馬が占めている。
エピファネイア産駒は牝馬が走るのだ。
キングカメハメハ
さらに、最近、母父キンカメの馬が活躍するトレンドがある。
ブラストワンピース、ワグネリアン、インディチャンプ、そしてエピファネイア産駒で桜花賞馬のデアリングタクトはいずれもブルードメアサイアーがキングカメハメハという共通点を持つ。
そこで、今年の募集馬で母父キンカメの馬にも注意を払うことにする。
そうして評価すると、4頭に〇印がついた。
いまのところ、暫定的な結論は、「サンデーサイレンスの4×3のクロスを持つ、エピファネイア産駒牝馬を狙え」というところまで絞りこめた。
続きは馬体や測尺などを精査してさらにふるいにかけてゆく。
いまのところは、ここまで。
※以上の文章は「goo質問」でのεγmakkiωさんの回答からインスパイアされたものです。
改めて、εγmakkiωさんには、この場にてお礼申し上げます。