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シュール

「えーと、どこからいらしたんですか」
「地球、ですね」
「ほう、地球ですか」
「はい、宇宙に浮かんでいる星のことですね」
「いや、えーと、住所のことなんですけど」
「ああ、失礼しました。宇宙ですね」
「いや、それもちょっと (と台本を確かめつつ)」
「あ、そこの先生はどうですか」
「いや、私は天文学専門ではないので」
「別の先生が必要だろ (客席からの声)」
(ここで微妙な笑いが起こる)
「別の先生とは?」
「たとえば、量子力学とか?」
(客の一人が大爆笑する)
「あれ、俺なんか変なこと言った?」
「いや、私はそう思いませんよ」
(司会者は呆然と立ち尽くしている)
「おー、よかった」
(客席は微妙な状態)
「量子力学ってなあに?」
(子供が手を上げる)
「そりゃ、海に行って魚を獲ることさ」
(客席でまた爆笑が起こる)
「なんだかシュールな展開になってきましたね」
(ようやく司会者が復帰)
「うちの猫はチュールに目が無いわよ」
「わたしんとこの猫も」
「いや、チュールではなくて....」
(客席の声で司会者の声がかき消される)
「わたしも大好きですね」
(と「宇宙」の猫が答えた)