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「山の歓喜」 河井醉茗

あらゆる山が歓んでゐる
あらゆる山が語つてゐる
あらゆる山が足ぶみして舞ふ、躍る
あちらむく山と
こちらむく山と
合つたり
離れたり
出てくる山と
かくれる山と
低くなり
高くなり
家族のやうに親しい山と
他人のやうに疎い山と
遠くなり
近くなり
あらゆる山が
山の日に歓喜し
山の愛にうなづき
今や
生のかがやきは
空いつぱいにひろがつてゐる

 『雲花雨街樹鳥海夜』という串田孫一さんが編んだ詩集の装丁が50年以上前のものとは思えないことを書こうとして、念のため過去の記事を調べたら、収録されている河井醉茗さんの詩を紹介しがてら、既にその画像を使用していた。

 久しぶりに「樹木の素質」をいう詩を読み返したら、素晴らしかったので、少し探してみたら、青空文庫に「山の歓喜」 という詩を見つけた。河井さんの他の作品を読んでみたいのだが、今のところ、再版はされていないようである。