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無蓋

画帳を抱え
山へと入っていった

稜線上に少し開けたところが
あったので一服した

ぐるりと見渡すと
遮るものが何もない

雲ひとつない空を見上げた
「遮るものか....」

遠くで海が光っている
「描けるものか!」

と、大笑いしたら
山もつられて笑った

何も描くことなく
ただただほっつき歩いた

帰りの電車の座席の正面で
母親に抱かれ赤子が眠っていた

その寝顔に魅入られ
思わず画帳を取り出した

窓の向こうには山並みが
母親は太陽だ