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不二

 「はじまりもおわりも人間の創作物だな」「地動説を看破しても人間中心主義は変わらない、と」「或る禅の老師が『大いなるかな心や』と看破したのを知ってるか」「はい。見方によっては.... ということですね」「無限を知ることはできんからのう」「勿論想像することも、ですね」

 「見ようとせずとも見えており、聞こうとせずとも聞こえておる」「盤珪さんの受け売りですか」「わしは『不生』という言葉に閉じ込めもしなければ、吹聴したりもせん」「ただ不思議だなぁ、ですか」「言えば言えぬを知るだけのこと」「黙っていられないのはそのためですかね (笑)」

 知能の発達した高等動物の生活を正しく知ろうと思ったら、檻や籠ではだめである。彼らを自由にふるまわせておくことが、なんとしても必要だ。檻の中のサルや大型インコたちがどれほどしょんぼりしていて、心理的にもそこなわれていることか。そして、まったく自由な世界では、そのおなじ動物がまるで信じられぬほど活発でたのしそうで、興味深い生きものになるのである —— 動物たちへの忿懣 —— 『ソロモンの指環』コンラッド・ローレンツ (翻訳: 日高敏隆)