『花の宇宙誌』 岩田慶治 (青土社)
「こころ」という、内も外もない不可思議千万の世界に足を踏み入れた人だけに、放つことが許された言葉である。山に入り歩き始めると「私」と「無私」が入れ代わりはじめる。30分も過ぎれば、歩いているのはもう「私」ではないが、人とすれ違うと「私」が光を超える速さで顔を出す。
鉱物でも、植物でも、動物でも、ましては、人間でもない「存在」。ただ「在る」ことすらも意識に上らない永遠の真っ只中。「ああ、岩田氏は『以心伝心』の話をしているのか」と今頃気づいたものの二者も三者も、また、一者さえもいない。祖先の話ではなく「ぶっ続き」の話しをしているのだ。
2020/08/28