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知恵

大きな大きな白いカンバスを前に
画家はしばらく佇んだ

おもむろに絵筆を手に取ると
点のようなものを描いた

こちらを振り返った画家は
満足気な表情を浮かべている

どうやら小さな小さな文字が
描かれているようだ

「題名は何でしょう」と伺うと
「言うまでもなかろう」と答えた

近づいて、さらによく見ると
「心」と書かれていた

「虫眼鏡でも置いておきましょうか」
と冗談交じりに言うと

画家はカンバスをびりびりに破った
窓の外には息を呑むような空が広がっていた