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照応

夜が明けてまもない
誰もいない早朝の海で
ぼーっと水平線を眺めながら
波待ちをしていると
足にヌメッとした感覚があり
魚か、と思うと同時に
自分の存在を訴えるかのように
目の前で魚が飛び跳ねた

長いこと物置に放置された
ウェットスーツとサーフボードに
こびりついた海の匂いに誘われ
不意に蘇った記憶 
特別印象に残った出来事ではない
すっかり忘れていたのだ
連なって蘇る様々な記憶の断片
取り払われる人間という衣