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灯心

 日が暮れてから降りはじめた雪が、陽光にとかされることなく、しんしんと大地を白く覆っていく。街明かりがいつになく幻想的に映り、隠されていた寂しさが込み上げてくる。転ばない様に慎重に足を運んでいると子供の頃を思い出した。朝起きて一面が雪に覆われていたら、一目散に外に出て、雪の感触を確かめたものだ。

 寂しさが懐かしさに変わると急に足取りが軽くなった。「傘を放り出して天を仰ぎ、雪を存分に味わってみようか。そのためにはポンチョが必要だな。どうせなら、派手な色の方がいいな」 明日は晴れだそうだから、朝には雪はとけてしまうかもしれない。心には既に晴れ間がのぞいている。街明かりが煌煌と燈りはじめた。