♩Wailers - Work

ブリストルにいた時、ジャマイカ人が多く住む地区に出かけると、看板も目印もない所から大音量でレゲエが聞こえてきた。近づいてドアを開けると真っ暗で何も見えない。耳に飛び込んできたのは経験したことのないベースの爆音。耳が慣れるまでは他の音が判別できなかった。

目が暗闇に慣れてくると、どうやらクラブらしきものだとわかった。しかし、時間が早いのか、閉店間際なのか、誰もいない。すると後ろからラスタマンが現れ「まだ時間が早い」と。時刻は既に午後11時を過ぎていたが、人が集まってくるのは午前3時くらいからとのことだった。

アドミッションとして数ポンド渡し、しばらく爆音の中で佇み、足が地から離れてしまうようなバイブレーションに浸った。暗闇に目が慣れたとはいえ、明かりはほとんどない。もちろん、テーブルもなければ、椅子もない。少し高いところにDJブースがあるだけの踊り場である。

レゲエに完全にノックアウトされた瞬間。その瞬間を超える衝撃を以来経験したことはない。30分ほどして帰路に就いたが、ほんの数十分で、まったく別の街並みが広がるのである。興奮冷めやらず、部屋で音量を最大にし、ヘッドホンでキングタビーを聞いたことを思い出す。

[追記]

Wailers のラストアルバム "Uprising" に収録されている "Work"。リリースと同時に敢行されたツアーのラストライブのリハで、ボブは "Rude Boy" という初期の曲の "I got to keep on moving" という一節を延々と45分繰り返し歌い続けたというエピソードが残っている。

ここまで「死」と直面したアルバムは数少ないのではなかろうか。36歳という若さ、まだまだこれから、という年齢である。ボブに関する書物は数多く出されている。その多くは「伝記」の類であるが、傑出した一人物としてのボブに焦点をあてたものが今後出されるであろう。

♩Wailers - Work - Studio Rehearsal
https://www.youtube.com/watch?v=Jw3RY19tMoA