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妙悟要窮心路絶。「狗子の仏性の有無」もしくは「無字」ばかりが取り上げられているように見受けられる『無門関』の第一則「趙州の狗子」にある文言である。これまで、岩波文庫版 (西村恵信 訳注) の「素晴らしい悟りは一度徹底的に意識を無くすことが必要である」という現代語訳しか読んでいなかったのだが、ふと原文が気になって参照したら「むむむ」と。
Enlightenment always comes after the road of thinking is blocked —— 千崎如幻 / Paul Reps
The attainment of this mysterious illumination means cutting off the workings of the ordinary mind completely —— R. H. Blyth
To attain to marvelous enlightenment, you must completely extinguish all thoughts of the ordinary mind —— Koun Yamada
他の和訳を調べたが似た解説だったので、英訳を探したら、いくつか見つかった (上記)。先の現代語訳よりもすっと入ってくる感じはするが、理解できぬが何となく仄めいてくる中国語の原文の趣は感じられない。言葉にとらわれて言葉にできぬことを知る、か。「進退窮まりて今 地に足ピタリ 御芽出度う」とでも創訳しておこうか。狗子ではなく仏性そのものの話。