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琴線

 「昔々、坊さんが揃って『隻手の音声』の公案を解こうとうんうん唸っているそばで、物心つかない子供が遊んでおったんじゃ」「ほう、それで」「その子供がな、つかつかと和尚の前に歩いていき、頰をピシャリと。和尚は驚きもせず呵々大笑し『わかったか』と言ったそうだ。で、一同拍手し『あっ!』と」「ほう、そんな話があるのですか」「いや、今作った」

 「そばには犬もいてな」「『狗子仏性』の公案を待っていたと」「お見通しか」「どの問いにも『ワン!』と」「その通り。だが続きがあってな。和尚の座を奪い取ったんじゃ」「で、和尚が礼拝したとか」「いや、和尚は『首輪をつけているなら外せ』と」「お、途端に説教節」「そしたら犬ががぶり。で、一同涙が出るほど大爆笑」「いやー、めでたしめでたし」