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妙味

 一期一会という。大辞泉には「茶の湯で、茶会は毎回、一生に一度だという思いをこめて、主客とも誠心誠意、真剣に行うべきことを説いた語。転じて、一生に一度しかない出会い。一生に一度かぎりであること」とある。瞬間瞬間のことである。瞬間瞬間は生まれたて、ということである。

 深く考える必要も、書物をあたる必要もない。ただただ、その事実を認めればいいだけのことである。「一度あることは、二度ある」なんてことを言う。はたして本当だろうか。どこかしら必ず違っているところがあるはずである。もしくは、単に同じ見方をしているだけではないか。

 思い通りに事が運ぶこともあれば、そうでないこともある。後者の方が圧倒的に多いからこそ、前者が際立つ。前者も後者も思い込みに過ぎない。何が起こっているのかを知るものが未だかつてこの世に存在したことがあるだろうか。「心こそ心迷わす心なり」という句を思い出す。

 ほんのわずかな時間、山の様に、また、木の様に坐ってみる。呼吸の有難さを感じ、絶え間なくはたらいている数十兆もの細胞を労ってみる。そのうち「自分」そのものが「自然」であることに気づくかもしれない。灯台下暗し。そんなに急いでどこへ行こうというのか。今ここ。