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意図という糸

生まれてこの方
日本人のお葬式にしか出たことのない私ですが
高校の社会科の授業で
『鳥葬』のVTRを見たことで見送り好きに色かかったのかも
と思ったりします。
そのVTRは

亡くなった人の身体を山の頂に運び
挨拶を終えたら一族の長老婆がその場に一人残り
頭部を・・・・・

という
文章にするとただのホラーなのですが
そのVTRを見て思春期真っただ中の私
とてつもなく美しい捧げ方だ(きらきらきらきら)
と思って感動したのを覚えています。

形式的なことやルールを重んじる日本に生まれて
今現代の在り方や
やり方が全世界の当たり前のようにとらえているのは
納まりはいいけど本質とは若干ずれていく。
でも
VTRの中にあった見送りは
人間が自然界の一部であり
決して人間が頂点に立っているわけではないこと
全ての命あるものと互いに助け合い
補い合いながら生きている

その一つの在り方を見せてもらった気がして
ものすごく感動した

死が訪れたその後までも
その身体の弔いにまでも意図がある
この『意図』というのがなんともたまらんのです。

私の愛する祖父
ばぁちゃんの呼び方を活用するとすればおズーさん。
肉体を卒業した身体が自宅に勇還して一晩を越し
翌日同盟が集う中で納棺の儀を行った。

個人的にですが
告別式とかよりもこの納棺の儀というのが好き。
納棺士の方々のサポートのもと
おズーさんの身体に感謝をする。
94年も使ってきた肉体に対して
おズーさんの意志を形にしてくれた身体に対して
私たちをぎゅっとぎゅっとしてくれた
愛しい身体に対して。

経験のある方ならお解かりでしょうが
簡易風呂の中にある身体を順番に洗う際
私たち鼻垂れ同盟でその日集合したのは6名。
同盟のパートナーとひ孫を入れて9名の鼻垂れたち。
全員で腕まくりをしながら
獲物を狙うかのようにおズーの身体をぐるっと取り囲み
ごしごし。
納棺士の方や、葬儀社の方が
『ここから49日故人様は長旅に行かれますからね』
という
本来であれば慰めの言葉であろうその一言に
無駄にスイッチの入った私たち。
『おい、足のツボどこや?』
『アキレス腱ほぐしといた方がいいんちゃうん?』
『どっかで酒飲むから腎臓にいいとこは?』

いや~
生きてる間にこんな丁寧に
マッサージなんてされたことないであろうおズー。
足の裏から手のひらまで
18個の手に揉まれ揉まれて逆にもみ返し来てませんか?と
聞きたくなるほど。

立って見下ろしている一つ上の世代も
『いや~それは』
『そこはやめとき』
『もっと丁寧にしなさいよ』
って言いながらみんな腕まくりして汗だく

姪っ子ちゃんが
笑いながら涙する姉(同盟長女で彼女の母)をさすりながら
おジィちゃんの身体ありがとうだね』って言ってて
皆で泣き笑い。
納棺士さんも一緒にげらげら笑って支度をしてくださって。
我が家らしい。
本当に良い納棺の儀でした。

鳥葬とは似ても似つかないけれど
納棺の儀における意図と鳥葬の意図はきっと似ていると思う。

誰しもが感謝し
伝えられなかった想いを掌に載せて
合掌する。
年齢を重ねて状況が理解できるようになってからは
出来るだけこの儀に参加したり
お通夜もお邪魔するようにしている。

だからっておススメしてるわけではないです。
どれも個人的な想いだから。

自転車に乗って散歩にいったおズーは
途中でこけてしまって溝にはまったらしく頭部にけがをしていた。
それでも
必死に必死に帰ろうとしてた。
最後まで最後まで

街頭のない真っ暗な田んぼ道を
光のある方向へ向かって一生懸命。

おズーの身体を発見してくださったポイントに自転車はなくて
見つかったのはそこからなんと1キロ先

よぉ歩いたね
体力はしっかりあったけど寒かったよね。
ばぁちゃん待ってたもんね。
ドリエル
ちゃんとポケットに突っ込んで。

皆のもとに
愛するばぁちゃんのもとに
一生懸命
旅立つつもりなく歩いたじぃ。

必死に必死に帰ろうとしたんだね。
最後まで最後まで。

最後の最後まで格好良すぎた

『わしの頭の中は鈴しか入っちょらんけんな(入ってないからね)』
と言っていたけど
ちゃんとみっちり詰まってたよ。
骨だって見事すぎて
元鑑識の同盟パートナーが標本にしたいくらいの球関節!
って褒めてたよ。

そんなおズーさんの告別式は
気持ちよく晴れた日だったけど
大経を唱える際に突然の雷雨
唱え終えるころには何事もなかったかのような日差しに。

竜神さんが迎えに来なはっただな(来たんだね)』


ばぁちゃんがぽつり。
全ての行動に意図があるように
人の命も魂にも全て意図がある。

それを人生という糸で結んでいく。

生きるってとっても素敵なこと。
そして
見送るって素敵なこと。
だから
今日という日に繋がれた糸をしっかり握って
生きていきましょう。



竜神が迎えに来てくれたとばぁちゃんが言ったとき
同盟族が
『え?あんなにケアしたのに歩かへんの?』って
式場で爆笑したのは内緒です。

最後まで読んでいただいたこと
あなたの時間をいただけたこと感謝します。

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