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目で聞き背中で語る

集中豪雨の影響がまだ残る中
夏の土用を迎えました。
どうか1日でも早く安心して過ごせる日が来ますように。
そして東京2020オリンピックが開会しましたね!!
連日の選手、スタッフ、ボランティアの皆様の頑張りに
励まされる私です。


さて、
今日書こうと思ったのは
自分自身が全く同じにはなれなくても
ほんの少し、一年ずつ近づけるように励みたい
あの愛する祖母の後ろ姿
自分を鼓舞するわけじゃないけど
書いておいて、
そうだ、一歩でも近づけるようにって
そう決めたんだった!!!と
へこたれた時に読むために記しておこう。

ある意味では、
私の中でもっとも優しく、そして従順な祖母の姿。
ああ、この人には愛があるって
多分共感されにくい視点なのだけど
すごくそう思った。
そんな姿。

梅雨が明け、
土用がくると、
梅を漬けているご家庭では三日三晩の土用干し
結構なイベントなのではないか?と思うのです。
私はベランダ梅干しであることと
日中つきっきりになれないのもあって
太陽にお任せする放任主義を貫いているのですが
愛するおばぁが私に見せてくれた
梅の土用干しは、そりゃそりゃまぁ大仕事。
なんてったって

つきっきり

なんですよ。
もちろんタイミングによってはお漬物工場へ
てくてく出勤するときもありましたが、
寄り添える時はずっとそばにいる。

大きな茣蓙を出して、
その上に何かを敷いていたような・・・曖昧
そこに塩漬けされた梅を並べる。
隣り合う梅がなるべく当たらないように。
乗用車1台分ぐらいの面積を占める梅の実を
ただただずっと見続ける。
食事やトイレや畑の水やりでほんのちょっとその場を離れる以外は
寝る時間まで大体そこにいる。
正気なのよ、これが笑

日中は暑いから
でっかい傘をさしてじーーーっと梅を見てる。
自分の影が梅を隠さないようにちょっと離れて座る。

私はそんなばぁちゃんの後ろ姿を
縁側に座ってこれまた懲りずにじっと見てる。
なぜ見ていたかと言うと
ばぁちゃんの行動がすごく不思議
すごく素敵で
すごく愛だったから。

ばぁちゃんは
日中、太陽に当たる梅の実を見ながら
時折すすっと動いてはピンポイントで梅をひっくり返す。

場所を入れ替えたりもするけど
大きく動かすというよりは
一粒一粒に対して配慮している感じ。
傍に行って何をしているのかを訪ねれば
『むやみやたらに返さんでも、
 じっと見ちょったら、声がすぅけん』
ひっくり返してほしい!
居心地が悪いと主張した梅の声を拾っては答え
拾っては答え。
それをただ繰り返しているだけだ。
そう教えてくれた。

当時私は7歳くらいだったかな。
以前書いた、大根を抜いた時よりはるかに小さかった。
ある意味では人間になりたての私に
愛する祖母は、やってみるか?と言ってくれた。
私は、ようわからんけど、遊び半分状態で、
あ!聞こえた!といって目が合った梅をひっくり返したりしてた。
でも、
その時のおばぁは、ただただ褒めてくれた。
『おお!そげだ(そうだ)!
 その梅の声がしちょったな!えらいえらい!』
そうやってずっとずっと褒めてくれた。
それを繰り返している間に私自身も
なんとなく梅と目が合うという感覚を掴んで、
むやみやたらに、あれ!これ!今度はこっち!って
言わなくなった。

そして、ばぁちゃんと並んで
同じ格好で梅を見つめる。
無言。

無言。

無言。

無言であることも、
同じ態勢でいることも
じっとしていることも苦しくなかった

『人間には個性があるが?
 梅にも個性はあるだけんな、大事にせにゃ。』

そういって梅にその意を優先させる。
そして出来るならば美味しくあってほしいと念を込める。
そうやって干しあがった梅の実は
各家に散らばっていくのだけれど
おなかを壊したら
頭が痛くなったら
なんか具合が悪くなったら
とりあえずこれを食べておけばいい。
そのうちケロっとする。
そういう一族の共通認識が事実を作って
『ばぁちゃんの梅』として立派に存在する。

でも、
その事実を形作るためには
この土用時期のばぁちゃんの行為が欠かせない。

強制されてやっているわけではなく
かといって
めちゃくちゃ楽しんでいるわけでもない。
ただ、そうあり続けてきただけ。

草花を育てるのも
畑に精を出すのも
梅の声に耳を傾けるのも
それ自体が暮らしであって
なにか褒美がもらえるということではない。

夏の土用の3日だけ
向き合い続ける梅によって私たち鼻たれ一族の身体は
支えられてきた。

90を過ぎて
梅干し作りからは卒業したばぁちゃん
今では各々好き勝手に梅を漬けているけど

きっとみんなあの梅干を
どこかで覚えているんだろうなって思う。
かくいう
私は面倒くさがりで適当な性格だから
太陽と月がどうにかしてくれるでしょうって気楽なものですが
いつか、
あの背中みたいに
梅さんに自由に発言してもらえるような空間を作り
その声を受け止められるようになりたいものです。

ちなみに
恐ろしいほどつけても1年できれいになくなる梅ですが
ばぁちゃんはほっとんど食べない。
あの人は甘党でね笑
生協のはちみつ梅がすきだったの笑

今日も最後まで読んでいたいて
本当にありがとうございます。
あなたの貴重な時間をいただけたことに感謝します。

夏の土用、
梅から声を聴くように
あなたのつぶやきを
おばぁが拾ってみるってさ。

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