疾病頻度の指標


曝露要因と疾病との関連を明らかにするためには、人口集団から発生する疾病の頻度を測定することが基本になる。最も一般的な疾病頻度の指標は、罹患率 (incidence)、死亡率(mortality)、および有病率(prevalence)である。

罹患率と死亡率
罹患率と死亡率は、以下のように表される。

罹患率 =集団から一定期間に新たに発生する患者の数/集団の観察人年

死亡率 =集団から一定期間に発生する死亡者の数/集団の観察人年

観察人年(person-years)は、1人を1年間観察すれば1人年に相当する。2人を5年間観察すれば10人年、5人を2年間観察しても10人年に相当する。がんなどのまれな疾病の罹患率や死亡率は、通常、10万人年あたりの新規発生患者数や死亡者数で表現される。例えば、ある1万人の集団を10年間観察したところ160人の胃がん患者が発生したとすれば、この集団における胃がんの罹患率は160(対10万人年)となる。

罹患率や死亡率の分母として、観察人年ではなく、観察開始時の集団の人数を用いる場合がある。これを累積罹患率・累積死亡率と呼ぶ。例えば、1万人の集団を10年間観察したところ160人の胃がん患者が発生したとすれば、この集団における胃がんの10年累積罹患率は160人/1万人= 1.6%となる。

有病率
有病率は、以下のように表される。

有病率 =ある一時点ですでに疾病にかかっている患者の人数/集団の人数

罹患率が集団の観察期間を考慮に入れた指標であるのに対して、有病率はある一時点での有病者の割合を示している。10万人を対象に胃の内視鏡検査を実施したところ、10人に胃がんを認められたとすれば、この集団における胃がんの有病率は10人/10万人となる。

曝露要因と疾病との関連を研究するためには、罹患率を指標として用いることが、通常は最も適切である。罹患率が使えない場合には、次善の手段として、死亡率や有病率が用いられる。

https://epi.ncc.go.jp/edc/594/2635.html

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