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社会人学生作家

使用の手引き…https://note.com/souffle_lyric/n/n0ba1320f658a
ごゆっくりどうぞ!

いつが社会人1年目、というのは、自分で決めて良いのではないだろうか。

履歴書に嘘を書いたら経歴詐称になってしまうけれど、ここは履歴書フォームではないし、幸い面接官も見当たらない。
「社会人学生」なんてレンジの広い言葉もあるのだ、ふわふわしゅわしゅわと、考えを柔らかくするところからはじめてみたい。

ということで、「社会人1年目」に設定したい年があります。
学生時代に初めて、商業CDの仕事をした年です。

当時の私は、授業がない時間帯はPC室に入り浸っていた。
動画投稿サイトで様々な方の自作曲を聴きながら、レポート作成や同人活動に明け暮れる毎日だった。いつかプロになりたいなあ、と思っていた。
ジュースが大好きだったため、正直ビールの味は美味しいとは思えず、ジュースにアルコールを入れたような果実酒をちまちま飲んでいた。氷結のパイナップルとフレーバーには大変お世話になりました。

そしてある日、お世話になっていた作曲者さんから、「僕達がサイトに投稿していた曲がレコード会社さんの目に留まり、商業CDに収録される」というご連絡を頂いた。あまりに突然のことで思考はポーズし、何を言われているのかわからなかった。頭の中にはスマートフォンのありったけの絵文字が並べられて点滅し、状況を飲み込んでくるにつれてテンションはアップ、ビール掛けでも始めてしまいたいような有頂天状態になった。もちろんPC室でそんなことをすれば問題となるため、努めて冷静な表情で、作曲者さんに変身の文章を打ったのを覚えている。

さらに私を夢見心地にさせたのは、ここで付与された「(プロの)学生作家」という肩書きだった。肩書きというよりは状態、とか実質、とかいったものであるが。
そして母校は役者や作家が多く在籍していたために、冷静に考えれば特段珍しいステータスでもないのだが…とにかくその時は憧れの称号であった「学生作家」を掴み取れたことに大きな喜びを感じていた。誰からも特別そう呼んでもらえることがなくっても、自分のことを「作家として社会に足を浸した学生」として肯定することができたし、「私は学生作家」と思うことで自分を鼓舞した思い出もいくつもある。
自分の「社会人1年目」というとやはり、あの日あの瞬間から始まったように思える。

そして、上述のCDにはさらに新作を1曲作って欲しいということで、生まれて初めて商業の商業による商業のために作詞をした。アルコールは一切入れずに制作したはずなのに、商業ラインという未知の世界への興奮と達成感に酔いしれていた。
楽曲にコメントを書いてください、ブックレットに載せます、と言われて、非常に張り切って一人だけ長文を寄稿し、完成品を見て顔が真っ赤になったのもこそばゆくも刺激的な思い出である(どのCDなのかはここに書いていいのか何ともいえないところですので、知りたいという方は、こっそり聞きに来てください)。
そして、たくさんの人と画面越しに、あるいは画面越しではなく会うようになった。また、残念ながら…というべきか、好きな仕事はそう頻繁に来るものではないんだなと思い知り、それでも多くのご縁を作ったり繋げようという思いは持ち続けて、今日に至る。アルバイトも正社員も経験したけれど、やはり私の「社会人1年目」は唯一無二の宝物として、鮮やかに色づいている。まだ10年は経っていない。

さて、そんな「社会人1年目」の自分に伝えたい事。
上記のように当時の自分は盆と正月を足しても足りない程喜んでいたので、「未来の自分」が目の前に現れた時点で、何だか水を差してしまうなあと思う。この喜びが翌年(つまり「社会人2年目」に)、音楽作家事務所にデモ音源を送り、面接を突破する原動力になるのだが、ここでネタバレをしてしまうと、これ幸いとばかりにぬくぬくとPC室で胡坐をかいて、何も頑張らなくなってしまう気がする。
私は時々未来の自分からアドバイスをもらえないだろうか…と心を澄ますことがあるが、ネタバレはしない主義なのだろう。未来の自分も頑張りたい事を頑張っているのだろうから、1年目の私にも頑張りたい事を頑張れ、と言おうと思う。

そうそう、ビールを美味しく飲むことが出来たのは、インフルエンザに罹患しながら何とか卒業課題を提出した後、卒業記念の打ち上げの宴席だった。やはり日々の生活における苦味を経験すると、ホップの苦味にも親近感が湧くのだろうか。ありふれた言葉遊びだけど、ホップと聞けばステップ、ジャンプという流れが浮かんできて、ほんのりと勇気づけられる。
同時に学生作家も卒業してしまったので寂しい…とはいえ、学校は母校だけではない。不埒なことを書くけれども、「心底寂しくなったら、学生作家という形だけはまたどうにか作れますよ」というメッセージを未来の自分に向けて残しておく。
幸い、今の自分はここに作品をアップしていくことが好きなので、そういった欲はないようです。

お声がけ頂いたレコード会社は、担当者さんのアカウントやメールアドレスごとなくなってしまった。
流動的な業界なので、珍しいことではないですが、寂しいです。お酒はお好きな人だったのだろうか。もしもこの記事が目に留まっていたらまたお話をしたいです。連絡を頂けると嬉しいです。当時何度もお伝えしましたが、本当にお世話になりました。

私は私で、自宅で働いたり、外で働いたり、人と話したり、人に話し掛けてもらったり。
自分なりの社会人として、ゆるゆると歩みを進めています。
ああ、それと、「いつか音楽アルバムの全曲作詞を担当したい」という夢もまだ持ち続けています。これくらいならネタバレにならないかな。
さて、ここまでノンアルコールでお送りしました。
ヘッダーの写真のお酒達は投稿後、ご賞味したく思います。

乾杯、社会人学生作家だった私。
社会人作家は、これからも続けていきます。


【終】

お気に召しましたら是非お願いします! 美味しい飲み物など購入して、また執筆したいと思います ( ˙︶˙ )