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【✏】えんぴつ堂#390~#417

使用の手引き…https://note.com/souffle_lyric/n/n0ba1320f658a
ごゆっくりどうぞ!



【390】 
【✏】“お悔やみ拝察いたします”…人の悲しみへの応対さえ、定型文で打ててしまう。悪い事とは思わないけど、何かを奪われた気はしてる。この文字列には私の人生がない気がするのだ。「…ギフト、見てみようかな」時短で生まれた残りの時間こそ、まだ奪われていない私の人生であると申し上げたい。

【391】
【✏】「かわいそうに。こんなに震えて、戦慄と戦って」…そうだっけ?今まで何して、されてたんだっけ?意識を辿ろうとしても、綺麗な人が見つめながら両手の指を絡ませてきて、気が逸れる。あなたは誰?「忘れさせる者だよ」頑張ったね、そう言って額がこつんと合う。もっともっと、忘れていく──。

【392】
【✏】「もっと苦言とか疑問とか、呈していいよ。凄いとか素晴らしいとか生きてるだけで偉いとか言ってくれるの、確かに嬉しいけど。そう言ってくれるキミの顔は辛そうだよ」真っ直ぐキミに手を伸ばす。叩かれても、引っ掻かれてもいい。「私たち…褒め言葉を一往復して終わる関係じゃないと思うから」

【393】
【✏】どう転がるか?なんて言ってられるのは試験終了まで。用紙を集める瞬間、もうサイコロは静止している。合否はネットで見られるけど、勇気がなくて電車に乗り込む。合否はスマホで見られるけど、今は音楽アプリとイヤホンだけ。車窓に太陽光、知らない住宅街。掲示板まで、おそるおそる揺られる。

【394】
【✏】本から逃げられません。面白かったとか楽しかったとか書く間にも、何文字も読むことができます。早く次の本に行きたいので、読書感想文というよりも読書間奏ということでお願いします。読みたい。では、次の本があるので行きます。(以下余白)

【395】
【✏】「お弁当箱へ行きましょう!」そう言って、天然令嬢は俺を立食パーティーへと誘った。は?「バイキングの料理が壁沿いに並んでます!ご飯に囲まれて…うふふ」うふふじゃねえわ、何ここ有名人しかいねえ。「今は私達みんな、ひとつのお弁当箱の中です♪ドキドキですね」別添えの醤油になりたい。

【396】
【✏】「最近言葉の付け合わせみたいな言い方してんなって、自分。“個人の主観だけど”“、”良ければ”、“分かんないけど”、“一応”」「パセリみたく」「うん。苦い。見た目華やかだけど、緑色の壁で埋めまくってる感じ」「それで本当は何て言いたいのさ。あいつに」「……。“もっと、深く話したい”……」

【397】
【✏】夜闇にまぎれて散歩に出たら、折悪しくもあいつを見かけた。嘘だろ、鼓動が痛く飛び鳴る。中学?高校?いつ振りだろうか。身を翻して逃げ出した速さで、ベッドの上で息を潜めてあいつの名前を検索にかけた。こういう日陰作業ばかり、昔から早いのだ。「……苗字、変わったりしてんのかな……」

【398】
【✏】話の広げ方と同じくらい、話の逸らし方にも個性ってある。さり気なく逸らしてく人、たぶん無自覚に逸れてく人。バーガーショップで課題を解きながらため息をついた。模試の問題文みたいな会話するより、枝道に逸れた方が人間味あるじゃん。枝の形のお菓子類もポテトも美味いし。話逸れたけど。

【399】
【✏】傾いた後は、なるべくまっすぐになろう。傾注してもいいけれど、人は傾いた先の壁に、全身で寄りかかってしまうから。「……そしていつしか、誰かの事を少し、支えられるような壁になろう」いつかそう言われたように、我が子の頭に手を乗せる。最近抱っこをねだらなくなってきた、ひとりの人間。


【400】
【✏】干した布団を頑張って叩けば、広がってどこかに響くと思っていた。空でも鳥でも、ご近所さんでも宇宙でも。……そんな事を、帰省した実家の押し入れ、暗がりにしまわれていた布団叩きを見て思い出した。今は布団なんて叩いてないけど、小さな私が放ったあの音は、どこかに届いていたのだろうか?

【401】
【✏】そんなに近づきづらいひとかなあ?高嶺の君と呼ばれるその方は、無闇にガードが固いというより、心の門構えの装飾や開閉方法にこだわりがあるって印象。むしろファンクラブ会員達が、高嶺の君の心の門前にしょっちゅう立っている。高嶺にしてるのは自分達だって事に、気づいてないのかなあ…。

【402】
【✏】ケーキ屋さんのショーウィンドウのショートケーキ、いつもすっごくおいしそう。だけど注文をしてその飾り棚から出たケーキって、なんだかひどく色褪せて見える。だからわたしが透明になって小さくなって、ガラスを抜ければいいんだわ。ショーウィンドウの籠の中、ショートケーキと過ごしたい。

【403】
【✏】自制しすぎてもしなさすぎてもダメなんてひどいじゃないか。ストレス発散一つするにもルールが細かいなんてあんまりじゃないか。こんな文句だって言いたいわけじゃない、充実した生活がしたい。頭ではちゃんと分かっているのだ、いるけど。「はい、寝床。ほら迷うな、寝た寝た」あ、どうも……。

【404】
【✏】家電量販店の通路に、その化け物が噛み合い殖える。見ているこっちまで呻きそうで、ひりひりと足取りが重くなる。ここは何階だったっけ、店内放送が鳴り響いた。「ゾンビ共!あたしたちは人間全員でここを出た!こんな建物、もうふっ飛ばすから!」え?待って、僕もここに。逃げ、……逃ゲ遅レ…

【405】
【✏】「受講中に机の下、片手で狐を作ると将来幸せになれるらしい」誰もがネットの適当な噂と分かってはいても、受験コースの教室にはしばしば様々な狐が生まれた。きみの手も夏期講習中、一度だけ白狐と化した。控えめに下を向く両耳。気まぐれだろうか不安だろうか、こっちは化かされ続けている。

【406】
【✏】経験にものを言わせて、見えないロッククライミングをして。上に行こうと今の石から手を離せば、確かにこぼれるものがあった。(どうして、どうして独りで経験を積めたなんて思っちゃったんだろう)参考書もネットも知識だって、誰かが作ったものだった…落ちるたびに空中で思い出す。空が、青い。

【407】
【✏】「あの頃って一発ギャグ流行ってたじゃん?何だっけ、イベリコ豚のやつ?」苦し紛れに繋げた話題に、お前の顔が突然輝いた。「そうなんだよっ!俺あの肉ネタのファンでさ!」うお、当時一度も見たことがなかった勢い。正直つまらなかったと思っていたものに、後から助けられることってあるのか。

【408】
【✏】家のあった場所は荒れ野になって、ぼくは捕縛した子供をボスのところへ引きずっている。気絶している顔をよくは見ていない。きっと同い年だなんて、もう思い出したくない。見るなら手にしろ、戦いの火のなかで、こいつの手はあんなことをしたんだ。歯をくいしばって、力をこめて、命をひきずる。

【409】
【✏】夢をみて、その夢と長くつきあっていくのなら、それは持病にもなるのだろう。薬を飲んで、栄養を取って、病院に駆け込んで、時には寝込んで、生活の枠にはめこんだり、症状とによっては生活が変わったり……。夢っていう爆弾じみた持病を抱えながら、風をきって、スケジュール帳の上を歩くんだ。

【410】
【✏】“そんなに力んでどうするの?”そう尋ねてきたのは、自由帳の中の自作キャラクターだった。オリジナルの恥ずかしさ。このノート自体、開くの何十年ぶりだろう?騎士も姫も、当時の自分の未熟さゆえにその目の焦点が合っておらず、武器も歪んでる。それでも変わることなく微笑む。「久しぶり」と。

【411】
【✏】明日の自分の度肝を抜こう。他の誰が気づかなくても、全員がいつも通りでも構わない。明日何かにあきらめかけてる自分の肩を強く掴んで、力任せに振り向かせて、その眼の前に色とりどりの花びらをバアッと撒き散らしてみせよう。
もう一度、僕は僕に向けて復唱する。明日の自分の度肝を抜け!

【412】
【✏】「誤作動だよ、それは!」きみの両肩を掴んで叫べば、その唇の弱音が途切れた。瞳を見開かれたけれど、だけどまだ頑張り時は終わってないんだ。ここで止まって感傷に浸ってたら見えない足元がどんどん崩れて、落ちるきみの手を掴めなくなる。
今だけ機械になってくれ、わたしも一緒に加速する。

【413】
【✏】この子、荷が勝ちすぎてるな。控えめな新入社員のデスクから、タスクが書かれた付箋を三枚外す。「え…」「やっとくよ。残り頑張れ」「あ、ありがとうございます…!」涙さえ浮かべて、人間らしい表情。──ねえ、先輩。もういないあなたが私にしてくれたみたいに、今自分はできてるでしょうか。

【414】
【✏】お茶会とプラモデル。「この子には翼はないけど、触れれば心が舞い上がる。ショーケースに閉じ込めても、見れば自由な気分になれるの」西洋人形のような少女が、掌のロボにブラシを滑らせる。名前を訊いたらアルファベットと数字の組み合わせで返された。水陸両用にモデルチェンジした特殊型よ。

【415】
【✏】何度異世界転生しても強化素材にしかなれません。「今度は本型か…」暇潰しに自分自身のページをめくる。一括強化コマンドを使われればまた別世界に飛んで、粉になったりマナになったり下級武器になる。…ええい、強いのはこっちなのだ。どんな武器も勇者も伝説も、素材がなきゃ始まらないのに!

【416】
【✏】強くなってからどうしたの?「歓迎してる」…歓迎…?「今までは、ダメだーって手を引いちゃってた。だんだん人の手を引けるようになった。どの手も、思ったより震えてた」そうなの…?「そう。されてみればわかるよ」手を差し伸べられて、びくりと肩が跳ねてしまった。「おいで。いつでも!」

【417】
【✏】最近前より注意力散漫になって。そう相談したら、「環境に馴染んできたんじゃない?」と返された。そうなのだろうか、何かズレてる気もするけど…。だけど、「良かったじゃん」と続けられ、もう何も返せなくなった。灯ったから。「…なじめ、た…」月の見えない夜、それは確かに内側に灯った。

お気に召しましたら是非お願いします! 美味しい飲み物など購入して、また執筆したいと思います ( ˙︶˙ )