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芋と葉の香り

使用の手引き…https://note.com/souffle_lyric/n/n0ba1320f658a
ごゆっくりどうぞ!

タピオカミルクティーが人気だ。令和、黒粒の雨がプラスチックカップに注がれては、追いミルクティーと透明な蓋で閉じ込められて、トレンドを攫うドリンクへと変わる。
芋由来のデンプンの塊であるタピオカ、そのもちもちの歯ごたえ、作用反作用の法則はこちらにまで存在感をくれる。深淵を覗くまでもなく、タピオカを噛む時噛む主体の自分は生きている。とろんと解すような匂いが混じる。香っているのは茶葉の方であることは言うまでもないけれど、こうも話題になっているとタピオカ自体にも人間を吸引する香りが発生し始めているのではと思う。
満タンのプラカップを手にする学生達からは、今にも何かにぶつかり中身をこぼしてしまうのではというスリリングな香り。メディア映像映るタピオカからは、視線を意識してぎらぎらと光る香り。個人が撮影したタピオカからは、手作り感と隙のある香り。無意識の造物主たちの手により、タピオカミルクティーの不可視の海は広さと深さを増す。
私自身は元々「もっと水を飲むように」とお医者様に注意されるほどの紅茶好きだから、普段飲んでいる物の中に最近新顔(タピオカ)が入ってきたなあ、という感覚。嬉しいのは、タピオカは心の安心のみならずお腹にも溜まってくれる事だ。執筆の合間、作業の合間の現実的な補給手段。この点って結構売り文句にもなるように思うけれど、タピオカのお店で「小腹を満たせます」という宣伝文は見たことがない。お腹に入れた者だけが知っている、秘密の香りなのかもしれない。
例えばその時、どこかはみ出し者のような気分であっても、タピドリを飲んでいる時は、世間の最先端に居られる気がする。がっつりとデンプンマウント、芋の威を借りているけれど、みんなと同じ香りになりたい時もあるから、この点も捨てたものではない。そういえばタピオカ店の周囲には「ここにドリンク容器を捨てないでください」という、負の個性までもがあっという間に形成されてしまった。
いつかタピオカブームは去るだろうという言説もあって、そうしたらまるで先に一緒に入浴していた共用風呂から先に出るように黒いお洒落なごろごろは消え去って、紅茶の香りだけが何となく、いつものドリンクとして世間に残り続ける。そうなることはきっと止められないだろうけど、芋と葉のツーショットは数多のフレームに収められ、幾多の舌のまどろみにとろんと香り続けている。


【あとがき】
noteの機能、みんなのフォトギャラリーを初めて利用しました!ドキドキしますね。奥深くイメージが広がる素敵な画像をありがとうございます。
本文は以前賞応募した作品に3割ほど加筆、残りも8割ほど変更したものです。ところでタイトルと本文間の叙述トリック上、キャッサバの画像も探してみたところ0件でした。マイキャッサバフォトをお持ちの皆さん、今がチャンスです。

お読みいただきありがとうございました!

お気に召しましたら是非お願いします! 美味しい飲み物など購入して、また執筆したいと思います ( ˙︶˙ )