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【刀ミュ】静かの海のパライソ -Formation of パライソの歌声の彩-(後編)

おことわり
※「静かの海のパライソ 2021」の感想です。初日配信、東京公演、大阪公演、東京凱旋初日配信、東京凱旋、宮城公演を元にした感想記録のようなものです
※一部、「静かの海のパライソ(2020年版)」と「東京心覚」の情報に抵触する記述があります
※歌や音楽に関する話をしていますが、筆者は専門家ではありません。本記事は一個人の経験に基づく感想であることを予めご了承ください

歌に色を感じる人が書いた感想です。
「静かの海のパライソ」に関してはこれでラストになります。

▼前編(大倶利伽羅、鶴丸)

▼中編(浦島虎徹、日向正宗)

*   *   *

5.松井江(演:笹森裕貴)

肌の下を流れる血の気配を感じさせてくれない。
そんな本作のヒロインポジ。

うつくしいですよね。
造形もそうだし、佇まいも。
笹森さんは松井を演じることが決まって、姿勢を矯正するベルトを使うようになった(身体に痕が残ってしまってグラビア撮影のお仕事で焦ったらしい)らしいんだけど、それが実を結んだのだなと思っていました。

松井も日向とおんなじで、CD音源と現地で声の印象ががらっと変わるんだな。
笹森さんの松井の歌はとてもメタリックなところがあり、ぎらぎらした尖りがしゃんしゃら見え隠れする。
あれだあれ、テラヘルツ鉱石みたい。

乱舞音曲祭では、可憐なビジュアルと漢らしい第一声のギャップに驚かされたけど、ぶっちゃけ「漢らしい」の一言じゃ到底言い表しようがないんだよ「あの感じ」は。
とにもかくにも、物理的な「音」として耳に叩き込まれる。

そして、あぁいう声を聞いてしまうと、「その人にしか出せない音」の魅力を深々と再認識する。

わたしは声フェチで音フェチで、もちろん自分好みの周波帯の音も自覚してるけど、そういったものをぶち抜いてくるんだ。理屈じゃなく惹かれるものがあるんだ。

オープニングの「刀剣乱舞」の松井ソロの直後で、
転がり落ちていくシンセの旋律がめちゃくちゃ気持ち良く聞こえるのは、
他の誰でもない、笹森さんの松井の歌の直後だからだと思うんだよ。

第一部の自己紹介ソング「滴る血」
「♪鮮やかな血が映えるのは 静かな月明かりの下」という部分がある。
あの「鮮やかな」の「あ」の音が好きすぎていつもまいってしまう。
アタックといい、胸郭への響きといい、ジャストミートが過ぎる。いつもマスクの下でにやにやしながら聴いてしまう。

「♪静かな月明かりの下」の「もと」
「♪最後のその一滴まで」の「まで」
……の末尾の声をほろほろ揺らして落とす感じとか、

「♪どれだけ流し続ければ、拭い去れるだろう」の「ろぉ」
「♪霞んだ血の臭い」の「におい」で柔らかく掛けられたビブラートも、
こう……なんていうか……浸らせてくれてるんだよね。
自分は歌に香りは感じないタイプの人間だけど、松井の歌はバラの香りがしそう…とかそんな詩的な感想を大真面目に書きたくなる。書いてる。

二部のソロ「Supernova」はこれまた使用音域が広い難しい曲だなって矯めつ眇めつ見ていたんだけど、
初日と大楽で全く変わったなと……
あの堂々たるパフォーマンス、ほんと素晴らしかったのでらぶフェスでも見たいです……もっと進化するよあの歌は……
「Bigbang!」って低く太く真っ直ぐ飛んでくるあの声、また浴びたいよ……

CD音源では「♪Supernova 完全 閃光 細胞切り裂いて」の「細胞」の「さ」の歌い回しが好き。
ストレートな「sa」じゃなくて「sa」の「a」で一回お腹に落とし込んでる(しゃくりあげてる?)。
あの抑揚がいいよねぇ。目を見張ってしまう。

(※余談。
「Supernova」の歌詞って
ダンテの神曲の天国篇(その名も「Paradiso」という)で
主人公が第一天から第十天まで階梯を上るのになぞらえてるように思う。だけどオケにベートーヴェンの第九のオマージュも入ってるんだね。
「獣」「押忍!!」のSAKRAさんによる新曲、おもしろい曲だった。
これからも刀ミュに楽曲提供してもらえたらいいな)


6.豊前江(演:立花裕大)

誰が最初に言いだしたか「彼氏の擬人化」。

かっこよすぎるものを目の当たりにすると言葉がまるで出なくなる。
OP「刀剣乱舞」の間奏の時のあの指パッチン、見た???

私の中で「かっこいい指パッチン」といえば
鋼の錬金術師のロイ・マスタング大佐なんだけど、豊前の指パッチンはあれに比肩した。あれはね、ずるい。ずるすぎるんだよ。
こってこてにキザなのに、むちゃくちゃ絵になるんだよ。
情緒が乱れて、はくはくして、どうしようもなかった。

歌に対してイケメンというのは何だかおかしな感じがするけれど、
豊前は歌もド直球にイケメンだと思う。

前作「東京心覚」で「遺された志」というソロがあった。

風は止まらねえ
川の流れも
「それ」は変わらねえ
だから俺は走ると決めた
 風のその先へ

「♪川の流れも」の「ながれェも」の「ェ」ってところと
「♪風のその先へ」の「かァぜぇの」の「ァ」ってところが、個人的に聴きどころで、いつも注目していた。
爽やかで、とてもまっすぐなライトブラウンが歌の中で照る時があって、あれを初めて聞いた(そして視た)時にどうしようもなく好きになってしまった。
あれを見ることができた日はにやにやが止まらなかった。

あの「いい感じ」、本作でもバリバリ健在でうれしい。

ついさっき「イケメン」と言い切ってしまったけど、立花さんの豊前の歌の「いい感じ」は、恰好いいだとか、美しいとか、そういう形容がしづらい。

あんな風にストレートで透き通ってて真ん中で普遍的な「いい感じ」、
意外になかなか出会えないんだよなぁ。

一音一音こてこてに粒だったり、ぬめるように照ったりするんじゃなく、
気が付いたら過ぎ去ってて残り香のようにさりげない。
核心を突くのに捉えどころがない。
不思議な爽やかな色気があるんだよ。


あの歌声の「いい感じ」が最も活きてるなって思うのが、
1部の「明け暗れ刻」。松井と豊前のデュエット。

鶴丸と大倶利伽羅のデュオは極限の背中合わせ、
日向と浦島のデュオは隣り合って笑ってて、
そして、豊前と松井のデュオは少し離れて向かい合ってるような感じがする。
歌と一緒に零れ落ちて暗鬱に散らばっていった松井の心を、
豊前が全部拾って集めて、だいじょうぶだかんなーって手渡して、ポンポン肩を叩いてるような。

……だめだな、難しい。やっぱり言い表すのに難儀する。

詩的な表現に寄せると、じりじり灼けつくアスファルト(松井)と降り注ぐ慈雨(豊前)。
日常的なものに喩えると、オレオミルクシェイクを作る時に、ミキサーで材料を混ぜている時のクオリア。

そんな感じ。
とにかく「明け暗れ刻」の豊前と松井のハーモニーは心地良い。


立花さんはミュージカル仕様の演技を込めた歌い方をする時、
オケをしっかり聞こうとしてるからかどうかは分からないけど、
微妙に遅延する(歌い出しの頭のアタックが遅れるとかじゃなく、全体的に微妙に遅延する)ようなところがあって。
心覚の時には少し気になっていたそれが、パライソの宮城公演では、かなり払しょくされたように聞こえた。
多賀城で聞けた歌は、今までで一番好きだなぁと思った。

二部は「Free Style」のCメロで、松井→大倶利伽羅→浦島→鶴丸でリレーしたあとの
大サビ頭の豊前ソロ「♪そう 今の僕になるため」
……にいつも注目している。
あのパート、バチーンってキマるとめちゃめちゃ気持ちいいんだよ……はぁ……

「YUKARI」第三形態の衣装もとんでもなかったね。豊前の腹筋。見事なシックスパック。視覚による暴力にあっぷあっぷしてしまう。
うかうかしてるとだいたい豊前に視線をおいしく持ってかれるんだ。大変だ……
おそるべし、彼氏の擬人化……

*   *   *

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