熱中症で苦難の行軍を味わった時の話

 時は2017年8月。当時学生であった私は、就活のために都内へと足を運んでいました。私は夏ともなれば朝7時に起きてエアコンをつけ、夜までエアコンつけっぱなしの部屋にこもっているスーパー引きこもり人間。 

 その日の気温は約35℃。冷房付けの人間には酷な温度。おまけにわたしは地元から都内までは、公共交通機関を使って片道数時間という地方勢。熱さの中、社会における人権を得るため面接会場へと向かっていきました。

 面接から解放されたところで私はふと思います。
「……なんか口の中が乾くな」
喉が渇いてるのかと思いつつ、持っていたペットボトルのお茶を飲み飲み。
しかし一向に口の渇きが収まらない。
口と言うか、喉の奥まで乾燥してイガイガするような尋常ではない乾燥。

よっぽど喉が渇いたのかと思いつつ、購入したスポーツドリンクを補給。
これはさっさと帰った方がいいなと考えたところで、気が付きます。

――――汗を全くかいていない。

熱いです。めちゃくちゃ熱いです。
身体の奥底からじりじりとした暑さを感じます。
しかし肌はさらっさらです。制汗剤使った後のようです。
腕も顔も首筋も脇の下も、汗を一滴もかいていません。

――――これヤバいんじゃね?

 そう思いつつも、ここは都内。地方勢のわたしにとっては未知のエリア。
周囲に見知った人なんていないし、病院なんてどこにあるかも分からない。
私が取った答えは「取りあえずさっさと家に帰ろう」

 ヤバげな状態の中、懸命に地元への帰還を試みます。親に「体調が悪いので速攻で病院へと行きたい」ことの連絡。売店で氷とスポーツドリンク・体温計を購入。汗は一切かく気配がない、でも意識はまだちゃんとしてる。

 購入した氷でわきの下を冷やしながら、特急に乗って地方へと帰還。
 車内で測った体温計の温度は『38.6℃』。耳の奥で心臓の音がめっちゃ聞こえる。寝たら終わりそうな気がする。呼吸だ。深く呼吸をして意識を保て。電車さっさと着けよ俺を殺す気かこの苦難の行軍は一体いつまで続くんだ……?

 数時間後、地元駅へ到着。待機していた親と共にすぐに病院へと直行。
 そして待合室にて立ちくらみを起こし、椅子に座ろうとしたのもつかの間、全身に力が入らなくなりました。今まで立ちくらみを起こしたことはなんどかありましたが、その比ではありません。手で受け身を取る間もなく待合室でぶっ倒れました。

 看護師の方が車いすを用意してくれましたが、身体を起こすこともできません。抱えられてなんとか車いすに座りましたが、指先一つ動かすのも重くてできないような状態。全身に力が入らないとはまさにこのことです……。

 ベッドに移ったところで、点滴を受ける私。
 ここで第二の症状が発動。

 ――――寒い!

 身体は暑いのに! 炎天下の野外で突っ立ってる時のあの感覚。
 ジリジリムシムシしたあの感じがしてるのに。

 寒い寒い寒い寒い寒い――――寒いッ!!!!

 両手両足腹筋が痙攣してるみたいにブルブル震えてる。
 歯もガチガチで全身の震えが止められない。

 点滴終了後は、なんとか家へと帰還。
 ここで第三の症状が発動。

 ――――あ゛つ゛い゛!

 あつ゛いあつ゛いあつ゛いあつ゛いあつ゛いあつ゛いぃぃぃぃぃっ!!!

 全身が暑くてうなされっぱなし。冷房をつけた部屋でなるべく肌の露出を増やし、首すじ・脇のした・股の付け根に氷を当てているのに、全然涼しくない。汗も全然出ていない。

上半身裸になって、霧吹きで水を吹っ掛けると多少はマシに。
しかしすぐに水はぬるくなってしまう、それほど熱を持った体温。
結局、寝付けず「あつ゛いあつ゛い」とうなりながら夜を過ごす。

その後、数日にわたって体温は『37℃後半』のまま。
熱がこもったままの身体は何をするにも、ぼんやりとした感覚。

結局体調が元に戻ったと言えたのは、すっかり秋を迎えたころのこと――。

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