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六月の卒業アルバム

漸く梅雨らしく、蒸し暑く、目覚めは単調な雨音によって引き起こされた。

昨日、ひとつの任務が終わり、漸く2020年に幕を下ろせた安堵からビールが増した。その任務とは、ニュースなどでも話題になった「卒業アルバム」。
平穏な年であれば、小学校ラストイヤーの様々な行事や数々の大会での勇姿、友と語らう満面の笑みで溢れる卒業アルバムになる。

しかしだ。このコロナ禍で、笑顔はマスクで隠され、軒並み行事も大会も中止となり、最後の運動会も修学旅行すら危うい状況が続いた。学校も状況を判断しつつ、この二大イベントだけはと、延期や致し方のない規制の実施により、漸く開催実施にこぎつけた。
例年であれば、11月までに各行事が終わり、卒業ムード深まる11月から個人撮影や文集に取り掛かるところ、学校によっては修学旅行は12月、それを待っての思い出綴る文集となれば、卒業式前の完成は見込めなくなった。ならばいっそ、卒業式が終わってからの完成を目指そうということになったのだ。

そこで課題がひとつ。“寄せ書き” だ。
それぞれの思い出と共に、友への別れの言葉や希望のメッセージなどを書き合う“寄せ書き”。この“寄せ書き”が添えられない卒業アルバムとなってしまう。それは大事な一旦を欠いたようで、寂しい気持ちが否めない。
そこで出たアイデアが「メッセージシール」だ。
卒業アルバムは完成していないけれど、クラスメイトや先生からのメッセージをシールに書いてもらい、アルバムが完成したら各々がコラージュを施して貼るというアイデアだ。
実はこの“寄せ書き”。毎年限られた時間の中で書き合いをするので、書いてもらいたい友人や先生になかなか書いてもらえなかったりするらしく。そりゃ、一冊のアルバムを回して書くわけだから、想像以上に時間と手間を要する。それに昨年においては、この“寄せ書き”による三密が心配された。
そう考えると、この「メッセージシール」のアイデアは...

① メッセージを書く時間が十分取れる
② たくさんの友人や先生にメッセージが書ける/もらえる
③ アイデアを凝らしてオリジナルのメッセージが書ける(写真添えたり)
④ 三密が避けられる

良いことづくめじゃないか。
ということで、この「メッセージシール」案が採用となった。
「クラスメイトみんなに書こう」そんなルールを決めて、文集と共に「メッセージシール」を書きはじめた。

こうして紆余曲折を経て、卒業アルバムが完成した。
そしていよいよ、今や立派な中学生となった元卒業生に配られる日がきた。
学校帰りに母校に集合。場所は体育館。夏服の制服姿でみんな集まった。
アルバムを手にしたら、そそくさと帰ると思いきや、なんとなんと仲良しグループで座り込んで大盛り上がり!大笑いどころか笑い転げている子もいる。記念撮影しているグループもいれば、久々の先生との再会に、いっぱいいっぱい話ししている子もいる。想像もしていなかった展開に、なんだかこっちも嬉しくなった。

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この時期の卒業アルバム完成については、結構心配した。でもこの様子からみんな待ちに待ったアルバムだったんだなと。こんなカタチの卒業アルバム囲んでのプチ同窓会もいいもんだなと。先生方も嬉しそう。
そして、みんなちゃんとマスクをしている姿に、寂しさ以上に「えらい!」って褒めてやりたい気持ちになった。

これからみんな卒業アルバムを持ち帰って「メッセージシール」を貼るんだろう。本当の卒業アルバムが完成するんだね。
こうして無事に、2020年の卒業アルバムは幕を閉じた。

2021年の卒業アルバムも、すでにスタートしている。
残念ながら今年もマスク姿でのスタートとなった。でも何年か経って、みんなが大人になって、「こんな状況だったね」と思い出話のひとつ...いやいや笑い話になっていることを願うよ。

あらためて、2020年度卒業生の諸君。
卒業おめでとう!

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