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これまで書いた製作ノート

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過去公演の製作過程を書いた“製作ノート”を一つにまとめました。
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記事一覧

1月『隣人』名古屋公演

新年だし何か新しいことを始めてみたくて、今年は公演が終わったらnoteを書いてみることにした。面白さとかは保証出来ません。道端に落ちていたカリントウを口に入れるようなもんだと思って読んでください。 久しぶりの名古屋公演 「演劇Showcase!という企画で40分程度の作品を上演していただけませんか?」名古屋市にある昭和文化小劇場に声をかけて頂いたのは22年の夏。名古屋ではバトル形式の演劇イベントが多いが、この企画では競うことなく、多様な三つの作品を陳列すると言うのが企画趣

2月 演劇解体新書vol.1-vol.4

フェニーチェ演劇解体新書 はさまざまな角度から、一つ一つ丁寧に演劇を腑分けしていく演劇ワークショップシリーズです。この記事では、企画がどうやって始まったのか、どんな内容になったのかを書いてきます。 「やったことがないことをやる」 2021年の秋、劇場の担当者さんと企画を立ち上げる為、京都駅の喫茶店で打ち合わせをしていた。フェニーチェ堺は2019年秋にオープンしたばかりの劇場で、僕は2020年から毎年WS(ワークショップ)をしている。 「今年はこれまでの枠にとらわれず、や

「STORY FOR TWO」藤井個人的ベストエピソード

1996年4月より2021年3月までの25年間、Kiss FM KOBEで毎週金曜夜に放送されていたラジオドラマ番組『STORY FOR TWO』 2018年 僕はこの番組にゲスト作家として短編を書き「その際のフリートークの声が良い」というミラクルな理由で次の年度からパーソナリティをしないかとお声がけ頂きました。そして2019年-2021年の二年間、レギュラー出演することになるのです。 そんな、この番組最後のパーソナリティー藤井が、過去放送アーカイブから選ぶ個人的な傑作選です

3月 幻灯劇場第十回公演『DADA』

先日、伊丹アイホールで上演された幻灯劇場第十回公演『DADA』の創作過程について、きっかけとなった2013年の冬から書いてみます。ちょっと長くなるかもしれません。長いことこの作品に向き合ってきたもんですから。 ※上演風景と歌詞はこちら 京都駅のホームレスとの出会い 2013年。僕は兵庫県立宝塚北高校演劇科に通うため、滋賀県の実家から毎日片道2時間50分かけて通学していました。演劇が好きで、演劇科の授業だけでは物足りず、演劇部にも入って作品を作っていました。演劇の授業と演

3月THE GREATEST SHOW-NEN Aぇ!group×幻灯劇場 『鬱憤』

朝日放送で放送されたTV番組「THE GREATEST SHOW-NEN」の Aぇ!group×幻灯劇場『鬱憤』回について振り返るnoteです。ひとまず『鬱憤』という作品の成り立ちまで遡ります。 十六人と『鬱憤』を作る。 音楽劇『鬱憤』は16人の俳優とディスカッションを重ねながら作っていきました。台本が何も無い状態で稽古初日を迎え「コロナ禍で感じた鬱憤」をテーマに、お互いの話を聞いていく。コロナ禍によって関係が良くない家族と離れることが出来ない/バイトしたくてもシフトに安

5月-3月センチュリー豊中名曲シリーズ

「喜怒哀楽、四つの感情をテーマに四つの小説を書き下ろしてほしい」とお声がけ頂いたのは2021年の夏頃でした。劇作家の僕がオーケストラの公演にどのように関わればいいのか全く想像がつかず、ひとまず日本センチュリー交響楽団の公演を観にいくことにしました。 生まれて初めてみるオーケストラの演奏会は、とても刺激的な体験でした。統率された音の群れは巨大な一体の生物の呼吸音にも聞こえ、躍動する音の塊に、僕は何度も何度も心を揺さぶられました。劇場を出て興奮冷めやらぬ内に返事をかえし、この素

音楽劇『鬱憤』 再演版 製作ノート

フェニーチェ堺で上演された音楽劇『鬱憤』を振り返るnoteです。パンフレットを作れなかったので、代わりにここで製作過程を振り返ってみます。細かい内容にも言及するので、ご来場いただいた方や戯曲をお持ちの方向けの内容になるかもしれません。 再演するってさ! 京都で『鬱憤』の初演が終わった頃、大阪の劇場・フェニーチェ堺から「幻灯劇場の作品を上演しませんか」と声をかけて頂いた。これまでフェニーチェ堺では『演劇解体新書シリーズ』という実験的なWSシリーズを継続して実施してきた。今年

“東京演劇道場”が開催する“Dojo WIP”で上演する“再生”について

東京演劇道場が開催する【Dojo WIP】で上演する『再生』に演出として参加することになりました。なったんですが、この報告だけでは演劇に詳しい人にしかよくわからないんじゃないかと思い、僕の個人的な視点から「どんなイベントなのか」「誰がなにをするのか」「何を見れるのか」このnoteで整理してみたいと思います。 “東京演劇道場”ってなにさ 僕は“幻灯劇場”という劇団にも所属していますが、“東京演劇道場”という集団にも所属しています。“東京演劇道場”を簡単に説明すると、東京芸術

『Play is Pray』製作ノート

豊中市立文化芸術センターで上演された『Play is Pray』を振り返るnoteです。パンフレットがわりに、ここで製作過程を振り返ってみる。今回は作品の中身のことより、外側のお話が多めかも。 オーケストラとつくる演劇 僕は2021年から日本センチュリー交響楽団と豊中市立文化芸術センターが年四回開催している“物語と連動する演奏会”に小説を書き下ろしてきた。 2022年『忘れられた怒り』から2025年に上演される『アキレスと亀』まで、三年間オーケストラの演奏会と並走し十二作