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問題Ⅲの対策法:衛生工学部門「建築物環境衛生管理」~技術士第二次試験~

本記事では、技術士第二次試験「選択問題Ⅲ」の対策法について、衛生工学部門の「建築物環境衛生管理」科目を対象として、以下に私見を述べます。

【1】 注意事項

・100点の答えにはなりません
・60点を目指すヒントとして捉えてください
★あくまでも、自力で考えることを忘れないでください。


【2】 問題Ⅲの過去問

 「日本技術士会」HPに公表されていますので、上記リンクより参照してください。

【3】 科目の変更

 衛生工学部門では、以下に示すようにH30年度試験以前まで5つの科目があったが、試験制度の改正に伴い下記に示す3つの科目がR01年度試験以降より「建築物環境衛生管理」1科目へ統一された。

 ● H30年度以前の「科目番号:科目名」
  ・11ー1:大気管理  → R01年度以降「建築物環境衛生管理」へ
  ・11ー2:水質管理  → R01年度以降「水質管理」のまま
  ・11ー3:廃棄物管理 → R01年度以降「廃棄物・資源循環」へ
  ・11-4:空気調和  → R01年度以降「建築物環境衛生管理」へ
  ・11-5:建築環境  → R01年度以降「建築物環境衛生管理」へ
 
 ● R01年度以降の「科目番号・科目名」
  ・11ー1:水質管理
  ・11ー2:廃棄物・資源循環
  ・11-3:建築物環境衛生管理

 次節以降の過去問題の調査では、現行の1科目へH30年度以前の3科目が集約されていることから、この3科目についても分析する。

【4】 過去問題の傾向の整理

4.1 過去問題の「テーマ」(△△△を○○○する or させる)

 過去問題の「テーマ」(△△△を○○○する or させる)は、非常に多岐にわたっている。H25年~R05年の問題Ⅲの各テーマを以下に記載する。なお、R01年の試験制度改正前後で各問題のテーマの整理を区分する。

 4.1.1 H25~H30年「大気管理」科目

1)H25(2013):Ⅲ-1
 PM2.5(微小粒子状物質)の近隣諸国からの越境汚染が問題となっているが、我が国の大気環境の保全の観点からも、近隣諸国における排出源対策などの技術協力を実施することが求められている。
 このような状況を踏まえ、近隣諸国からのPM2.5の越境汚染を軽減させる。

2)H25(2013):Ⅲ-2
 
発展途上国の農村部では、多くの家庭で調理などに薪、家畜糞、農業廃棄物等のバイオマス燃料や石炭などの固形燃料を使用しており、簡易コンロ等で燃やされている。WHOによると、その結果、高濃度汚染物質で室内空気が汚染されることによって、5歳以下の子供を含む年間約200万人が死亡している。
 こうした状況を踏まえ、室内空気汚染による健康リスクを低減させ、かつ発展途上国における室内空気汚染の低減技術が地球温暖化防止策としてもコベネフィットを有するようにする。

3)H26(2014):Ⅲ-1
 
UNEPとWMOによれば、地球温暖化に対する緩和策として、CO2を始めとする長寿命の温室効果ガスの削減に加えて、温暖化作用を有する短寿命気候汚染物質(SLCPs、Short-Lived Climate Pollutants) の削減も効果的であること、SLCPsは大気汚染物質でもあることから気候と大気浄化のコベネフィットになることが報告されている。SLCPsの主要物質はメタン、対流圏オゾン、及び黒色炭素粒子(スス)であり、これらの削減による地球温暖化緩和策は大きな関心を呼んでいる。
 これらの背景を踏まえ、発展途上国で急増するSLCPs及びその前駆物質の発生源と、途上国の実情に即した排出源の対策を講じる。

4)H26(2014):Ⅲ-2
 大気汚染の予測方法は大きく、現地観測、室内実験、計算の3つに分けることができる。それぞれ、予測性能や実施のしやすさなどで特徴がある。また、3つの予測方法は、例えば計算であれば、電卓から高性能のコンピュータを用いるものまで、各々様々なレベルがある。
 これらの背景を踏まえ、住民の関心が高く、 大気環境への負荷が大きい事業が計画されている山間部で大気汚染を予測する。

5)H27(2015):Ⅲ-1
 排ガス対策は大きく、工程内処理 (in-process technology) と終末処理(end-of pipe technology)に分けて考えることができる。これまで終末処理によって我が国の大気汚染は大幅に改善されたが、二酸化炭素の問題については解決に至っていない。
 このような状況を踏まえ、事業所の煙源施設から二酸化炭素の排出を減らす計画を策定する。

6)H27(2015):Ⅲ-2
 航空機からの大気汚染物質の排出については、ICAO(国際民間航空機関)において航空機の離着陸を模擬したLTO (Landing and Take-Off) サイクルでエンジンを運転した際に排出される窒素酸化物、炭化水素等の単位推力当たりの排出ガス量を規制している。窒素酸化物については段階的に規制が強化されているが、炭化水素については1982年ガイダンス値から変わっていない。
 この背景を踏まえ、航空機からの炭化水素排出量をさらに低減するための対策を計画する。 

7)H28(2016):Ⅲ-1
 近年、大気環境の観測や予測の分野で、新しい技術の開発、導入が進んでいる。このような状況を踏まえ、新しい技術を導入する。

8)H28(2016):Ⅲ-2
 船舶からの大気汚染物質の排出については、国際海事機関(International Maritime Organization; IMO)において、2015年から硫黄酸化物の指定海域での排出規制が強化され今後一般海域でも強化が見込まれ、また、2016年からは新造船について窒素酸化物の指定海域での排出規制が強化されるなど、近年、規制が強化されつつある。
 これらの背景を踏まえ、国際海運を想定して、船舶からの大気汚染物質の排出抑制対策を計画する。 

9)H29(2017):Ⅲ-1

 環境省によると、平成27年度の微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準達成率は、一般環境大気測定局で70%、自動車排出ガス測定局で50%をともに超え、前年度と比べて大幅に改善された。
 このような状況を踏まえて、PM2.5のように近隣諸国からの越境汚染の影響が大きい大気汚染物質について、改善を図るための方策を提案する。 

10)H29(2017):Ⅲ-2
 粒径が50nm (ナノメートル)又は100nm以下の大気環境中の超微小粒子(ナノ粒子)に対し、大気環境中の削減対策を計画する。

11)H30(2018):Ⅲ-1
 大気汚染物質の環境中での動態は、発生源の形態や、気象、発生源周辺の地形、建物などの影響を受ける。これらの条件によっては深刻な大気汚染を引き起こす可能性がある。
 このことを踏まえ、都市部で開発が進んでいる地域に計画する固定煙源を対象に、 大気汚染の発生を抑制するための方策を提案する。

12)H30(2018):Ⅲ-2
 
石炭火力発電所を建設計画する場合、環境アセスメントにおいて、2030年削減目標達成への深刻な支障を懸念した環境大臣意見が出されているが、それを踏まえ二酸化炭素削減の抜本的な対策を提案する。 

 4.1.2 H25~H30年「空気調和」科目

1)H25(2013):Ⅲ-1
 我が国の建築物は比較的短寿命でスクラップアンドビルドとも言われてきた。そうした中、近年、住宅を中心に良質な建築ストックの形成及び長期使用の推進をはかるべく数々の施策や研究開発がなされている。こうした建築物の長寿命化は地球環境負荷の低減にもつながることから、一般建築にも波及するものと思われる。
 このような状況を踏まえ、一般建築の長寿命化を実現する上で、空気調和設備のあり方を計画する。

2)H25(2013):Ⅲ-2
 
地球温暖化防止の観点から、民生部門における非住宅の業務用途ビルの省エネルギ一化が求められている。なかでも3,000m2以下の中小規模事務所ビルは、既存の建物棟数の中でその占める割合が高く、 件数が多いにもかかわらず省エネルギー化が進んでいないと指摘されている。
 これらの背景を踏まえ、中小規模事務所ビルの省エネルギー化を促進させる。

3)H26(2014):Ⅲ-1
 
我が国でも、公共サービスの提供に際して公共施設が必要な場合に、民間資金や民間の技術を活用して、民間に施設整備と公共サービスの提供を委託するPFI(Private Finance Initiative)制度が定着してきた。
 この背景を踏まえ、PFIで事業者側として応札し、事業を行う。

4)H26(2014):Ⅲ-2
 民生部門の業務用建築物におけるエネルギー消費量は増加傾向が続き、炭酸ガス排出量も増加している。このエネルギー起因の炭酸ガス排出量を削減するために、ZEBの推進が期待されている。
 このような状況の中で、事務所ビルのZEB化の実現する。

5)H27(2015):Ⅲ-1
 2014年にエネルギー基本計画が閣議決定された。この基本計画では、再生可能エネルギーを、『温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、エネルギー安全保障にも寄与できる有望かつ多様で、重要な低炭素の国産エネルギー源である』と位置付け、今後導入を加速していくことが述べられている。
 これらの背景を踏まえ、民生用の建物に空気調和設備で再生可能エネルギーを導入する。

6)H27(2015):Ⅲ-2
 近年、ビル用マルチパッケージ型空調方式(以下ビル用マルチ空調方式) の採用は増加を続け、事務所ビルでは竣工件数の50%を超えるビルが本方式を採用しているとの報告がある。また、フロン回収破壊法が平成25年6月に改正され、名称も「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律 (フロン排出抑制法)」に改められた (平成27年4月1 日施行)。
 これらの背景を踏まえ、ビル用マルチ空調方式をさらに事務所ビルへ普及させる。 

7)H28(2016):Ⅲ-1
 企業、官庁、公共施設などでは、地震などによる大規模災害が生じた場合に建物の継続的使用を図るためにBCP (Business Continuity Planning; 事業継続計画) が策定される。ある新築建物でBCPへの対応を考慮した計画を策定することになった。しかし、BCP策定後、それを実効性のあるものにしていかなければ、 実際に運用する事態に際して機能しないことが考えられる。 そこで災害時のBCP運用の課題等を抽出し、その運用を改善する。。

8)H28(2016):Ⅲ-2
 2015年12月にパリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)でパリ協定が採択され、地球温暖化防止に向けて新たな成果が得られたと評価されている。また、 COP21の開催に当たり、日本は2030年までにCO2排出量を2013年度比で26%削減するとの約束草案を提出した。しかし、我が国では、なかでも業務用建築物は40% の削減が必要とされている。
 これらの背景を踏まえ、業務用建築物においてCO2排出量を40%削減するための対策を計画する。 

9)H29(2017):Ⅲ-1

 民生部門(業務・家庭部門)のエネルギー消費は、年々増加傾向にあり、最近では日本の全消費エネルギー量の35%程度を占めている。そのため、政府では、建物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル) 化を推進するために、 2020年までに新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEB化することを目標としている。この目標を達成するために、ZEBロードマップ検討委員会が2015年に設置された。
 このような背景を踏まえ、さらなるZEBを普及を促進させる。 

10)H29(2017):Ⅲ-2
 近年、建築物の環境性能の表示制度が普及しつつあり、これに関連し、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)がある。また、BELSの制度普及とは別に、近年、不動産投資家の間で、環境(Environment)、 社会 (Social)、 ガバナンス (Governance)の頭文字を取ったESG投資が注目されつつある。
 これらの背景を踏まえ、建築物の環境性能の表示をさらに促進させる。

11)H30(2018):Ⅲ-1
 我が国では、「循環型社会」の形成を目指し、循環型社会形成推進基本法に基づいて循環型社会形成推進基本計画(以下、「循環基本計画」という)が策定されている。この循環基本計画では、下表のように物質フロー指標として、資源生産性、循環利用率、最終処分量を定め、それぞれ目標が設定されている。
 これを踏まえ、循環型社会の形成に向けて、各指標に関連付けて対策を計画する。

表:物質フロー指標と目標(第三次循環基本計画)

12)H30(2018):Ⅲ-2
 
2015年9月に開催された国連サミットで「SDGs (Sustainable Development Goals) (持続可能な開発目標)」が採択された。SDGsにおける具体的指標の1つとして「最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギー比率」がある。
 この背景を踏まえ、建物における再生可能エネルギーの利用量を拡大させる。 

 4.1.3 H25~H30年「建築環境」科目

1)H25(2013):Ⅲ-1
 居住者が住んでいる築後約20年を経過している中層マンション(10階程度)の大規模修繕に当たり、給排水衛生設備改修を行う。

2)H25(2013):Ⅲ-2
 
次のような条件の事務所ビルの所有者から、「排水設備のトラブルが発生しているので、調査してほしい。」との依頼を受け、原因調査を行い、解決策を提案・実行する。
【条件】
 ① 竣工後10年経過している。
 ② 地上20階地下3階。
 ③ 10階で排水管がオフセットしている。
 ④ 地下1階に複数の飲食店舗、地下2階に駐車場、地下3階が機械室。
 ⑤ 排水の夜間放流規制 (大量排水調整槽の設置) がある。

3)H26(2014):Ⅲ-1
 
省エネルギー、省資源、省CO2の社会的な要請は、給排水の分野にも影響し節水型社会への対応が迫られている。図1の生活用水使用量の推移(国土交通省:平成25年度版日本の水資源)と図2の世帯当たりのエネルギー消費原単位と用途別エネルギー消費の推移(資源エネルギー庁: 平成24年度エネルギーに関する年次報告) の2つの図を踏まえ、生活用水使用量の近年の穏やかな減少傾向の要因と世帯における給湯エネルギー使用量の変化の要因を調査し、それに対する対応策を計画する。

図1:生活用水使用量の推移
図2:世帯当たりのエネルギ消費原単位と用途別エネルギー消費の推移

4)H26(2014):Ⅲ-2
 給排水衛生設備において衛生性・安全性の保持は重要である。そこで、衛生性・安全性の保持のために、給水設備・給湯設備・排水通気設備それぞれにおいて対応策を計画する。

5)H27(2015):Ⅲ-1
 近年、地球温暖化やヒートアイランド現象の影響から、都市部を中心に局地的な集中豪雨が発生しやすくなってきている。また、2014年4月には「雨水利用の推進に関する法律」が公布され、都市や建物における雨水利用を促進し、 水資源の有効利用を図るとともに、下水道や河川への雨水の集中的な流出を抑制することが求められている。
 このような背景を踏まえ、 建物に設置する雨水利用設備の役割もますます重要なものになってきていることから、雨水利用設備を計画する。なお、当設備導入後の維持管理の検討も含む。

6)H27(2015):Ⅲ-2
 スクラップ&ビルドからストック活用の時代へと移行し、設備更新が重要視されている。そのような背景より、施工後30年が経過した建物を対象に想定される不具合を示す。
 さらに、給排水設備の長寿命化・省エネ化・省資源化を推進する観点から、設備更新を計画する際の設計・施工・維持管理に関する採用すべき技術を検討する。 

7)H28(2016):Ⅲ-1
 2011年3月に起きた東日本大大震災、2016年5月に起きた熊本地震において、都心部や市町村における様々な用途の建物が、 甚大な被害を受けた。 このような大規模な地震災害が発生した際に、防災拠点や避難拠点となる県・市庁舎等の公共建築、学校等の公共施設において、 被災時においても事業を継続できる事業継続計画(BCP; Business Continuity Planning)、 住民の生命や生活を維持できる生活維持計画(LCP;Life Continuity. Planning)の整備が必要性とされている。これから、計画し建設される公共建築や公共施設においては、それらへの対策が強く求められている。特に建物周辺の水環境や建物内の給排水衛生設備は、生命保持や衛生性の確保等の観点から、優先的に検討されるべき要素であり、震災時への備えという観点からのその具体的な方策が求められている。
 このような状況を踏まえ、 公共建築、 公共施設における水環境や給排水衛生設備の計画・設計を行う。

8)H28(2016):Ⅲ-2
 低炭素社会の実現に向け、太陽光発電や風力発電は、都市部、郊外に係わらず、一般化し広く多くの施設で利用されている。それに対して、今後、公共施設や工場などにおいて、水の有効利用の観点から、下水に含まれる熱と下水汚泥のバイオマス利用が期待されている。
 これらの背景を踏まえ、低炭素社会の観点から、これらの再生可能エネルギーの有効活用を広く推進する。 

9)H29(2017):Ⅲ-1

 建築関連5団体は、今日の地球環境問題と建築との係わりの認識に基づき、「地球環境・建築憲章」を制定し、持続可能な循環型社会の実現にむか って、連携して取り組むことを宣言している。この宣言では骨子となる5つの方針を述べている。
 これを踏まえ、各自の専門領域においてその方針を実現する。 

10)H29(2017):Ⅲ-2
 我が国の環境政策として第4次環境基本計画が設けられており、同計画において、政府が目指すべき持続可能な社会を実現するためには、今日の社会が地球規模での環境問題に関して様々な危機に直面しており、それらの危機から脱却するための1つとして「自然共生社会」を構築することが必要であるとされている。この自然共生社会の形成に向けた取組の推進では、「健全な水循環の確保等の推進」が課題の1つとして挙げられている。
 これを踏まえ、多様な水源の確保、 官庁施設における 雨水利用 ・ 排水再利用システムの計画、下水道整備により水環境改善を各々実施する。

11)H30(2018):Ⅲ-1
 2015年9月25日第70回国連総会で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」、いわゆるSDGsが採択された。これを受けて日本政府は以下の8つの優先課題を掲げている。
 これを踏まえ、1~8の優先課題のうち2つを取り上げて、これに対して給排水衛生設備に関わる今後の解決策を提案する。

表:2030アジェンダに掲げられている5つのPと日本の8つの優先課題との関係  People (人間)
  1. あらゆる人々の活躍の推進
  2.健康・長寿の達成
 Prosperity(繁栄)
  3.成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
  4.持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備
 Planet(地球)
  5.省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
  6.生物多様性、 森林、海洋等の環境の保全
 Peace (平和)
  7.平和と安全安心社会の実現
 Partnership(パートナーシップ)
  8.SDGs実施推進の体制と手段

12)H30(2018):Ⅲ-2
 
環境省でまとめられた「再エネ加速化・最大化促進プログラム2018年版」 では、太陽光、風力、水力、木質バイオマスや家畜糞尿、廃棄物エネルギー、地中熱、地熱発電、温泉熱など、再生循環する再生可能エネルギー(再エネ)の利用は、CO2削減による脱炭素社会が形成されることで、我が国の持続可能な成長・発展の切り札とされている。ここでは、本プログラムに示されている、 消費者・企業・地方公共団体と連携して再エネを拡大するための主要施策に示されている次の①~③の各「テーマ」に対し、いずれかを解答せよ。
①住まいやオフィスなどエネルギーを使う場における再エネ・省エネ・蓄エネの導入に関し、再省蓄エネの1つであるZEBを対象に、その導入を推進する。
②環境調和型バイオマスの活用において、家畜糞尿や食品残さ等をバイオマス発電に利用した際に、発電により発生する液肥の地下水汚染などが問題となっている。家畜糞尿を利用したバイオマス発電において、液肥の地下水汚染の対策を講じる。
③廃熱・湧水等の未利用再エネの有効活用の中で、具体的な例として、(a)事業所空調やコジェネ等の廃熱地域利用、(b)地中熱・下水熱の活用、(c)地域熱供給の促進のいずれかを実施する。 

 4.1.4 R01~R05年「建築物環境衛生管理」科目

1)R01(2019):Ⅲ-1
 ZEBとは1次エネルギー換算でバウンダリー(敷地境界あるいは建築面積)における1年間のエネルギー消費量と再生可能エネルギー生産量が正味でバランスする建物(net Zero Energy Building) である。ZEBの定義と実現可能性については、グローバルな視点から見ると様々な議論が存在する。
 これらを考慮した上で、新築・改修計画及び運用段階を問わず、ZEBを実現する。

2)R01(2019):Ⅲ-2
 2019年1月に神戸でレジオネラ属菌の院内感染により入院患者が1名死亡するなど、レジオネラ属菌による被害は決して減少してはいない。建築設備におけるレジオネラ属菌対策はきわめて重要である。
 この背景を踏まえ、建物内のレジオネラ属菌感染を予防する。 

3)R02(2020):Ⅲ-1
 
2009年11月から始まった住宅用余剰電力買取制度の適用を受けた太陽光発電については、買取期間 (10年) が満了になりつつある。また、2012年7月から導入された固定価格買取制度(Feed-In Tariff:FIT)において太陽光発電による電力の買取価格が住宅用・事業用ともに引き下げられている。
 これらの状況を踏まえ、今後、太陽光発電の固定価格買取制度からの自立させ、太陽光発電を普及させる。

4)R02(2020):Ⅲ-2
 地球温暖化の要因であるフロンの機器廃棄時回収率は4割弱にとどまっており、漏洩防止及び回収率の向上対策が急がれている。
 このような状況を踏まえ、業務用冷凍空調機器からのフロン漏洩を防止し、フロンの機器廃棄時回収率を向上させる。 

5)R03(2021):Ⅲ-1
 大気中のCO2増加抑止対策の1つとして太陽光発電など再生可能エネルギーから水素を製造し、水素の利用を拡大することが進められている。しかしながら水素の製造、利用には課題が多く、拡大には時間を要している。
 このような状況を踏まえ、再生可能エネルギーからの水素の製造及び水素の利用を拡大させる。

6)R03(2021):Ⅲ-2
 
自然界とバランスの取れた健全な水循環の保全を図ることを目的として2015年7月に「水循環基本計画」が策定された。このような中、節水節湯機能を高めた衛生器具・機器類の開発・普及が進められ、水及びエネルギー消費量の削減に大きく貢献してきている。それらの施策の遂行において、施設の計画・設計に携わる技術者の果たす役割は大きい。
 これらの背景を踏まえ、節水化に対応した施設を計画・設計する。

7)R04(2022):Ⅲ-1
 建築物における節電は重要な課題であり、建築設備の機器の更新のみならず、運用によって実施されているところであるが、環境衛生の質を落とさないことも重要である。
 このような状況を踏まえ、 建築物の節電に寄与する設備を運用する。

8)R04(2022):Ⅲ-2
 
近年、我が国は大規模地震やさまざまな自然災害に見舞われており、地震に対する建物のレジリエンス性能を向上させることを目的として、免震構造を採用する事例も増えている。
 この背景を踏まえ、免震構造を導入した建物において給排水設備を計画・設計する。

9)R05(2023):Ⅲ-1
 
建築物において、その利用者の健康の観点から衛生的環境の確保とともに、快適で、ウェルビーイング (身体的、精神的、社会的に良好であること)につながる空間を作り出すことが重要である。建築物環境に課せられた役割は大きく、室内環境の計画だけではなく、その制御を適切に行うことが必要となっている。
 このような状況を踏まえて、建築物環境衛生の技術者として、建築設備の計画・運用を計画する。

10)R05(2023):Ⅲ-2
 脱炭素社会実現のためにはインフラへの負荷低減も重要な課題であり、上下水道への負荷低減の観点から建物と敷地内での水量の収支を総合的にゼロとするゼロ・ウォーター・ビル(ZWB: Zero Water Buildings) を実現するため、その計画・設計を行う。

 4.1.5 「テーマ」設定の有効性

 これらの「テーマ」(△△△を○○○する or させる)を参考に、「建築物環境衛生管理」科目に関する各受験生の経験業務または最近のトピックを抽出することが、R06年以降の想定問題作成に有効と考える。

4.2 設問(1)の傾向・対策

 R01年以降、設問(1)~(3)の問題文は、部門・科目により違いがあるものの、おおむね統一されている。また、「建築物環境衛生管理」科目のR01年以降の設問(1)は、問題文が年々変化しているものの、大局的にほぼ共通である。ここでは過去問題を参考に、設問(1)の標準問題文を以下のとおり設定する。

★「テーマ」の実現に向け、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

 設問(1)では、この問題文がR06年以降の想定問題に引用できると考える。

4.3 設問(2)の傾向・対策

 R01以降、「建築物環境衛生管理」科目の設問(2)問題文は年々変化しているものの、大局的にほぼ共通である。ここでは、直近のR05年の問いかけを参照として、設問(2)の標準問題文を以下のとおり設定する。

★前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。

 R06年以降の設問(2)は、上記の問題文に類似した問いかけで出題されると考える。

4.4 設問(3)の傾向・対策

 R01以降、「建築物環境衛生管理」科目の設問(3)問題文は年々変化しているものの、大局的にほぼ共通である。ここでは、直近のR05年の問いかけを参照として、設問(3)の標準問題文を以下のとおり設定する。

★前問(2)で示した解決策に共通した新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

 R06年以降の設問(3)は、上記の問題文に類似した問いかけで出題されると考える。

【5】 問題Ⅲ対策

 「建築物環境衛生管理」科目の問題Ⅲ対策として、前述した内容を踏まえ、以下に示す3つのレベルに対応する想定問題を作成し、その問題への解答論文の作成を提案する。さらに、本対策では既技術士等に添削を受けることで、解答の質を上げられると考える。
 なお、各レベルの課題文{設問(1)より手前の問題文}は、受験生各自で設定してください。

5.1 レベル1

 「テーマ」(△△△を○○○する or させる){4.1.4節 参照}として、R01~R05年過去問題の課題文のいずれかを選択し、以下の(1)~(3)の各設問に解答せよ。

(1)「テーマ」の実現に向け、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策に共通した新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

5.2 レベル2

 「テーマ」(△△△を○○○する or させる){4.1.1~4.1.3節 参照}として、H25~H30年過去問題の課題文のいずれかを選択し、以下の(1)~(3)の各設問に解答せよ。

(1)「テーマ」の実現に向け、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策に共通した新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

5.3 レベル3

 「テーマ」(△△△を○○○する or させる)として、「建築物環境衛生管理」科目に関する各受験生の経験業務または最近のトピックを1つ挙げ、以下の(1)~(3)の各設問に解答せよ。

(1)「テーマ」の実現に向け、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策に共通した新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

【6】 添削を受け付けております!

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おわり

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