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【R5農業部門:必須問題】Ⅰ-1「再現論文」/技術士第二次試験


【1】 問題文

 令和4年5月に公表された「令和3年度 食料・農業・農村白書」に述べられているとおり、我が国では、農村人口の減少や農業従事者の減少、高齢化、それに伴う耕地面積の減少等の傾向が続いている。農業は、国民の健康を維持するために必須な産業であり、食料を安定供給するためには農業の持続的な発展が求められる。このような背景のもと、食料供給における需要の変化、急速に進歩しているAI、IoT技術、持続的開発目標(SDGs)の関心の高まりから農林水産省が発出した「みどりの食料システム戦略」、農村の多面的機能等をも踏まえつつ、持続的な農業の発展を推進しなければならない。
 以上の基本的な考えに関して、以下の問いに答えよ。

(1)食料の安定供給・持続的な農業の発展を推進するために必要な対策について、技術者としての立場から多面的な観点で、「農作物の生産」、「農作物の加工・流通・消費」並びに「農業の経営」の3つの場面から課題を1つずつ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行したうえで生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。

【2】 再現論文(from 受講生)

※ 受講生さんの了解を得て、ここに掲載します。

 標題の再現論文を以下に示しますので、みなさんもご一読いただき、改善点があればご指摘いただけませんか?
(noteの表示上、項目名を下線で表示できないので、太字で表示させます)

(1) 食料の安定供給および持続的な農業の発展の推進において、設問に示された3つの場面に対する課題を以下に示す。
1. 農作物の生産:農業生産において、労働力不足や高齢化が深刻な問題となっている。また、気候変動による異常気象や災害によって、農作物の生産量が減少することがある。
2. 農作物の加工・流通・消費:食品ロスの削減および地域の特産品の活用などが課題である。また、消費者の健康や安全に配慮した食品の提供も求められている。
3. 農業の経営: 農業経営においては、農家の高齢化や後継者不足、農地の分散化が課題である。また、農業経営の安定化や収益の向上も求められている。
(2) 前問(1)に示した課題の中で、最も重要だと考える課題は「農作物の生産」である。この課題に対する解決策を以下に示す。
1. 労働力不足や高齢化に対する対策
・農業生産において、労働力不足および高齢化が深刻な問題となっている。この問題に対して、農業生産の自動化が有効である。例えば、農業用ロボットの導入、ドローンを用いた農業生産などが挙げられる。これらの技術を活用することで、労働力不足および高齢化による生産量の減少を防ぐことができる。
2. 気候変動による異常気象や災害に対する対策
・気候変動による異常気象や災害によって、農作物の生産量が減少することがある。この問題に対して、耐災害性の高い品種の開発が有効である。また、災害時には、農業用の保険制度を整備することで、農家の被害を最小限に抑えることができる。
3. 農作物の生産量の増加に対する対策
・農作物の生産量が減少することがあるため、生産量の増加に対する対策が必要である。この問題に対して、農業生産の多様化が有効である。例えば、農業と畜産を組み合わせた複合的な農業生産、農業と林業を組み合わせた森林農業が挙げられる。これらの取り組みにより、農作物の生産量を増加させることができる。
(3) 前問(2)で述べた解決策を実行した場合に生じる波及効果および懸念事項を、以下に示す。
1. 労働力不足や高齢化に対する対策
 農業機械の導入によるコスト増加、若者の農業就業促進による人材確保の難しさなどがある。
2. 気候変動による異常気象や災害に対する対策
 耐災害性の高い品種の開発には時間がかかること、灌漑設備の整備には多額の費用が必要である。
3. 農作物の生産量の増加に対する対策
 肥料や農薬の適切な使用による環境汚染、適切な栽培管理によるコスト増加などがある。
 次に、前述した波及効果および懸念事項への対応策を以下に示す。
1. 労働力不足や高齢化に対する波及効果・懸念事項への対応策
 農業機械の導入によるコスト増加に対しては、政府が補助金を出すことで、農家が機械を導入しやすくする。また、若者の農業就業促進による人材確保の難しさに対しては、若者が農業に興味を持つような環境づくりを行うことが必要である。例えば、農業体験プログラムの充実および農業に関する情報発信の強化などが考えられる。
2. 気候変動による異常気象や災害に対する波及効果・懸念事項への対応策
 耐災害性の高い品種の開発については、研究開発に予算を充てることで、より早期に品種改良を行うことができる。また、灌漑設備の整備については、政府が補助金を出すことで、農家が灌漑設備を整備しやすくする。
3. 農作物の生産量の増加に対する対策
 肥料や農薬の適切な使用による環境汚染については、有機農業の推進や、肥料や農薬の使用量を減らす技術の開発などが考えられる。また、適切な栽培管理によるコスト増加については、農家が効率的に栽培管理を行うための情報提供および農業機械の導入が考えらる。
(4) 技術者倫理の観点から業務遂行に必要な要件は、 安全性、信頼性、公正性、専門性、環境保全性、社会的責任などを考慮することである。
 次に、社会の持続可能性の観点から業務遂行に必要な要件は、環境、社会、経済の側面から、長期的な視野での持続可能性を考慮することである。

以上

【3】 評価事項(by 小泉)

 この再現論文の受講生さんの試験結果はC評価でした。
 私もC評価と考えます。その根拠を以下に示します。

▼ 設問(1)

・設問では「3つの場面から課題を1つずつ抽出し」と示されている。しかし、本再現論文において、各場面に対し複数の課題を挙げていることがマイナスポイント。
 この複数の課題抽出が設問(2)以降に響いている。

▼ 設問(2)

・設問(1)で各場面に対して複数の課題を挙げたことにより、本設問において、その解決策も複数の課題に対して述べてしまっている。本来設問(1)の課題1つに対する解決策を述べるべきところが題意に沿っていないことになる。

▼ 設問(3)

・技術的な内容は良いが、設問(1)から派生した課題数の影響が本設問にも及んでいる。題意に沿い設問(1)で各場面に対する課題を1つだけ抽出していれば、本設問の解答内容も全体的に変わると思われる。
・「波及効果・懸念事項」と「その対応策」について「見出し」を表示すれば、各論点を述べている箇所が明確になる。文章ばかり続いており、試験官によっては読みにくいと判断される可能性がある。

▼ 設問(4)

・設問(1)~(3)と比較して、解答量が極端に少なくバランスが悪い。
・さらに内容を深堀りして解答量を増やした方がよい。題意に対し上辺だけの解答になっていることがマイナスポイント。

▼ 全体的なこと

・設問(1)~(4)の書き出しにおいて、見出しタイトルをつけたほうが、何を述べようとしているか理解しやすくなり、さらに各設問の解答箇所が明確になる。全体的に読みにくい。

・設問(1)の解答が題意に沿っていれば、(1)~(3)の解答量を減らせ、設問(4)の解答量が増やせると思われる。

・本再現論文を解答用紙に当てはめると枚数オーバーとなった。再現の段階、試験本番で書いた内容に追記したと思われる。もしくは、試験では最後まで書き切れていない可能性がある。

以上

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