sosoの素(45)
登校日記 その5
雨の中、いつものように集合場所に行き、一緒に門の中に入り、少し離れたところからみんなが登校するところをぼんやりと眺める。一緒に行こうとしている子はいつも遅くにくるのでそれまで待っていた。その間も同級生の女の子が「どうしたの?」と近寄ってきては自分の話を一生懸命している。少し前の娘のようで可愛らしいけど、息子の顔には表情はなかった。
ほどなくして待っていた友達がやってきた。息子は自分で声を掛けれない雰囲気だったので呼び止めて「一緒に行きたいって言ってるけど行ってくれる?」とお願いすると頷いてくれたその次の瞬間、息子は大きく手を振りかぶって僕の方をみていた。僕が手を出すといつものお別れの合図のタッチを力一杯して仲良く歩いていった。
その風景を見て感動しながら見送り、一人雨の中小さな穴の空いた傘をさして帰りながら小さくガッツポーズをした。
ただただ子供が学校にすんなりと行くだけでこんなにも嬉しく心踊るものかのかというくらい嬉しかった。帰ってからもゆきちゃんにも伝えて二人で気分良く話し、いつもは元気に帰って来るか心配しながら帰宅を待っていたけどその日は褒めてあげたくて早く帰宅をしないか待ち遠しかった。
息子はいつも通り楽しかったーと言いながら元気に帰ってきた。そして夜に一緒に行ってくれた友達のお母さんからも息子が一緒に行きたいって呼び止められた時その友達の男の子は嬉しくてマスクの下で変な顔しちゃったと嬉しそうに話してくれたと連絡をくれ、なんとも嬉しい気持ちになったのです。
その1週間は学校までついて行き、友達が来るまで一緒に待ち、友達が来たら下駄箱まで競争していけるようになった。ああ、これで大丈夫だと思うくらい元気に走っていく。たくましい。
その週の土曜日、サッカースクールの見学に行ってみることにした。そこでは1-3年生の子たちが元気にサッカーをしていた。ここに混じって一緒にサッカーをしたらきっと楽しむだろうなーと思って少し離れて見学していたけど、体験スクールを3回まで出来ると教えてもらい、せっかくならやろうよと促してみたら急に顔が曇っていった。
きっと入ってボールを蹴り始めれば夢中になるはず。やりたい気持ちはあるけど中に飛び込む勇気が出ない。自分の慣れた環境じゃないからドキドキして入れない。そんな感じ。
学校と一緒で促しても説得してもドキドキからくる不安が勝って体験にいけず離れたところからずっと眺めていた。
僕も息子がサッカーをするならと思い、一緒に来た。もしも興味を持てずしないのなら帰った方がいいけど、興味はあるけど不安に勝てない。学校にいけずにぐずってる時と同じ状況なのでどうしたもんかと思いながら話を聞いてもやりたい、やりたくないの繰り返しで最後はサッカー云々より不安から逃げようとするようにやらずに帰ると言い出した。
このまま帰ったらもうサッカースクールに来れないよ?と話しながら離れた所で見てても分かりにくいから一緒に近くに行こうよと少し嫌がる息子を半ば強引に連れていき、2mくらいのところまで近づき間近で同じくらいの友達がサッカーをしている姿をみていると不安から逃げることしか考えず無表情で死んでた目が急にキラキラと輝き出し、生き生きし始めて来た。
そのタイミングを逃さず、同じ小学校の2年生で一緒にサッカーをしたことのあるお友達と2人でボールを取り合う練習に混ぜてもらい、ボールを追いかける姿は僕らが普段目にしている元気な息子の姿だった。
そのあとも数回はもじもじしてたけど、それ以降はコーチの話を聞いて元気に手を上げて返事をしていた。
あんなに嫌がってもじもじしていたのに、入ってしまえば誰よりも走ってボールを追いかける。その変わりようがなんだか可笑しくてそして幸せな光景だった。
僕は真横でキラキラした表情に変わっていった息子の顔はきっと忘れない。
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