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「660キロの死闘」

靴磨き世界一周アジア編49日目

前日はオルベリー駅で一夜を過ごし、
風を凌いで眠ることができた。


それでも2日連続の野宿はキツいな。


さすがに3日連続は体のバッテリーが切れてしまう。


アルベリーからキャンベラまで330キロ。


生死をかけたヒッチハイクを開始した。
#ヒッチハイクで生死をかけるな


1時間ほど経った頃、後ろから話しかけられた。


「そんなに遠くまでは送れないけど、
キャンベラ方面に少しなら乗せていくよ」


そう言ってくれたのは軍人の学校に通い
今年から海軍で働くジェイだった。


ジェイはオルベリー周辺に住んでいるので、
キャンベラ方面に行く予定はない。


買い物をしに来た時に私を見つけて、昔自分も
旅をしていたことを思い出して、乗せる決断を
してくれたそうだ


ジェイの旅話が面白かった。


7歳の時、家族4人キャンピングカーで
オーストラリアを一周した。


毎日移動して、新しい街に行って、
食料を調達して、外でご飯を食べて、
テントを張って眠る。


この生活を4年していたそうだ。


その間学校は行かない代わりに朝の9時〜14時
まではテキストを使って母親が先生になってジェイ
と弟に勉強を教えた。


テストも定期的に受けて、郵便局から教育委員会的
な場所に解答を郵送し、後日採点されたテストや課題
が指定された郵便局に送り届けられたそうだ。


オーストラリアではこのスタイル
で勉強している子どももいるそうだ。

#現在はオンライン教育になっている


素敵な思い出話を聞いていると、ホールブルック
というアルベリーから60キロ以上離れた場所まで
送り届けてくれた。


「お互いの人生を楽しんでいこう。
今後の旅もSNSを通じて追いかけるよ」

とジェイは言い残し、60キロかけて
またアルベリーに帰っていった。

ジェイ




ホールブルックからキャンベラまで残り280キロ。


まだ時刻も15時くらい。


日が暮れる前にキャンベラへ行けるかもしれない。


しかしその後止まってくれる人はいなくて
日も暮れてしまった。


車の通りもかなり減ってきた。


1分に1台通ればいい方だ。


かなり風も強くて、ヒッチハイクのボード
を持つ手を少しでも緩めると飛んでいってしまう。


3日連続の野宿。


しかも今回は風を凌げる場所もないし、
充電もできないし、電波も悪い。


想像しただけで恐ろしい。


そんな時、1人のマダムが反対側の車線
からこっちに向かって歩いてきた。


「あなた、キャンベラへ行きたいの?
だったら電車で行くのはどう?

もしお金がないなら私が払ってあげるよ。

オルベリー駅まで送ってあげるよ。」


悪魔の囁き。

2時間やっても成功できず、このままやり続け
てもダメなんじゃないか。


このマダムの言う通り電車でキャンベラまで 
行った方がいいんじゃないか。


悪魔の囁きに身を任せようと思ったが、


ダメだ!


私の辞書に"来た道を戻る"という2文字はない。

#6文字


それにジェイと約束したんだ。


「必ずヒッチハイクでキャンベラまでいくよ」って。


往復2時間かけて送ってくれたジェイに申し訳ない。


まだ諦めるには早い。


悪魔の囁きをしてくれたマダムには丁重に
お断りし、ヒッチハイクを再開させた。


そのマダムは暖かいコーヒーを差し入れしてくれた。


もう退路を断った。


The way to live is only in front.
〔活路は前にしかない〕


暗くなった大通りで、引き続き希望を
持ってヒッチハイクを再開させた。


そして奇跡は起きた。


「シドニー まで仕事で行くから、キャンベラ
まで送れるよ」と声をかけてくれた。


これから5時間かけて1人でシドニー 
に仕事へ行くという。


その方もなんと海軍だった。


「今年からジェイがシドニー の海軍で
働くのでお願いします!!」と親父目線
でジェイのことを紹介した。


まさかの2台連続で海軍。


2時間半の移動は話していたらあっという間だった。


「このままシドニー まで乗っていくか?」
とまた悪魔の囁きをされた。


むっちゃ迷ったけど、特にキャンベラで
用事があるわけではないのだけれど、断った。


またキャンベラからシドニー への道中で
素敵な出会いが起こる方にベッドすることにした。

シェイムさん




キャンベラのゲストハウスは6人部屋で、
私以外の5人は中国人だった。


夜も彼らはゲームをしており、少し騒がしかった。


騒げ騒げ。


全く問題ない。


野宿中に"誰か近くにいるのか!?"と
思ってパッと目を開けて確認する必要はない。


2段ベッドの上に寝転んだ。


体が敷布団に包まれていく。


なんだ?

顔に水滴がついている?


まさか雨漏り。


違う。これは俺の涙だ。


久々に感じる布団の上でなんの不安もなく
眠れることに、嬉しくて涙が出たのか。


野宿か、野宿以外か。


2人の海軍のおかげで、この日は
3日ぶりの野宿以外だった。

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