クラスペディア(誕生花ss)
その扉は、固く閉ざされていた。一見、軽く開きそうな薄い色の扉は、いくら押しても引いても、びくともしない。扉の把手は一面にびっしりついていて、そのどれもに、違う形の鍵穴がある。私の手の中には数個の鍵が付いた鍵束があるが、見たところ、鍵穴の数の方が遥かに多い。私は途方に暮れて、辺りの地面に目を落とす。
私には、この扉を無視するという選択肢もある。世界には沢山の扉があり、どれに近づこうが、開けようと試みようが、自由なのだ。中にはいつでも開いていて、誰のことも拒まない扉もある。そ