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─素敵な作品群─

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何度も読み返す作品群や創作企画等のブックマーク。創ってくださって有難うございます。
運営しているクリエイター

#創作

取り込むこと

彼女はフォークを右手に持ち、無慈悲に力を込めた。意識が銀の鋭い先端に集まり、赤い肉の中に…

丑尾
3年前
9

ジャーマンアイリス(誕生花ss)

 何でも人並み以上にできたせいで、何にも情熱を持つことができないまま、高校生になってしま…

てい
3年前
2

海は返す(短編小説)

海の日なので、海の話を書きました。暗いです。  釣りに行ってくる、と言って出かけた弟が、…

てい
3年前
5

バーベナ(誕生花ss)

 教会から村へ向かう小道で、天使を拾った。  清らかな異国風の装束を身にまとった白髪の少…

てい
3年前
1

グァバ(誕生花ss)

 その男は幼少の頃から頑健で、風邪ひとつひいたことがないと言う。どんな感染症が流行しても…

てい
3年前
2

タツナミソウ(誕生花ss)

 生命科学の発達はめざましく、近年、動物の生命力をそのまま数値に換算することが可能になっ…

てい
3年前
3

イングリッシュラベンダー(誕生花ss)

 人間が書いた旧約聖書によれば、ヘビにそそのかされたイヴとアダムは知恵の実を食べ、恥じらいを知った、とある。そうして原初の人間は楽園を追放された訳だが、彼らを誘惑した廉で、ヘビも腹這いで生きていくことを余儀なくされたと言う。 「しかし、なぜヘビは彼らを誘惑したのだろうね」  私の言葉に、向かいに座る黒髪の男が笑う。 「誘惑に理由なんてないだろう。そいつはただ、誘惑という誘惑に駆られたんだ」 「誘惑という誘惑?」  戸惑う私に、誘惑を主な仕事とする悪魔は、ますます笑みを深くする

コモンセージ(誕生花ss)

 庭のアイツをどこかへやってくれ、と、寝台に横たわった祖父に言われたので、私は驚いて首を…

てい
3年前
2

アメリカフヨウ(誕生花ss)

 街コンなんて俺好みの淑やかな女性が来るような場所じゃないだろうと思っていたけれど、どう…

てい
3年前
1

ベルフラワー(誕生花ss)

 言葉の代わりに手にした楽器で、あるいは自身の声で、旋律を奏でる人々がいた。長い旅の途中…

てい
3年前
2

ラベンダーの夏(短編小説)

 ラベンダーが揺れる。人が来る。また、ラベンダーが揺れる。人が来る。  ここは、雑貨屋だ…

てい
4年前
3

ホタルブクロ(誕生花ss)

 今日も施設は明るくて、底抜けに頭の悪いガキどもの声が耳に障る。自分もそれらと殆ど変わら…

てい
3年前
3

ガザニア(誕生花ss)

 少年の足は重かった。家のドアを開ける前に、重いランドセルを置き、ほどけてもいない靴紐を…

てい
3年前
2

クラスペディア(誕生花ss)

 その扉は、固く閉ざされていた。一見、軽く開きそうな薄い色の扉は、いくら押しても引いても、びくともしない。扉の把手は一面にびっしりついていて、そのどれもに、違う形の鍵穴がある。私の手の中には数個の鍵が付いた鍵束があるが、見たところ、鍵穴の数の方が遥かに多い。私は途方に暮れて、辺りの地面に目を落とす。  私には、この扉を無視するという選択肢もある。世界には沢山の扉があり、どれに近づこうが、開けようと試みようが、自由なのだ。中にはいつでも開いていて、誰のことも拒まない扉もある。そ