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普通列車は香りを乗せて

今日、電車に乗った瞬間にふわりと何かが香った。
それは花のような優しい香りに所々木のような香りだった。
おそらくお香だろうか、今この時代にお香の香りをまとわせる人はすごくきれいな着物を着たはんなりとした人なんだろうなと勝手に想像しながら周りを見渡したがそのような人は見当たらない。

もしかしたらお香のような香りが好きな人があの匂いを纏っていたのかもしれない。それにしても気になる…とてもいい香りだった。

なんて思っていた矢先、私の隣にブランド系のカバンを持ったいかにも欲望に溢れたような人がきた。見た感じアクセサリーを身に着けているというよりアクセサリーの化け物に絡みつかれているような人だ。

臭い….

その人は香水を纏っているのだが、その匂いはドン・キホーテの棚にディスプレーされているようなオーシャンブルーみたいな香りで私が一番嫌いな香りだ。

その匂いが私の鼻の近くで漂い、ツンと香った。まさにその人の表情を表しているようだ。

その香りによってさっきまで香っていたお香のような匂いがかき消されてしまった。とても残念な気持ちだ。

そんな残念な思いを残しながら私は最寄り駅へ降りた。
そして列車は香りを乗せて次の地へ走っていったのであった