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【SH考察:058】『11文字の伝言』と『星屑の革紐』は対応している説
Sound Horizonの『11文字の伝言』について、私はひとつ前の記事で曲中の死んで往く母親がイヴェールの母ではない可能性に触れた。
では誰の母親かというと、『星屑の革紐』のエトワールの母親の可能性は無いだろうか?
今回はその可能性と考えた理由をまとめた。
対象
5th Story Romanより『星屑の革紐』『11文字の伝言』
考察
読まなくても全く問題ないが、もしよろしければひとつ前のこの記事とセットでどうぞ。
2曲の共通点
『星屑の革紐』のエトワールは母親を亡くし、父親と、そして後に黒い犬プルーとも一緒に暮らしている。母親と父親の名前は不明。
『11文字の伝言』は母親も子も名前は不明だ。父親に関しては全く触れられていない。
この母同士、子同士が同一人物である可能性を考えたい。
なぜかというと、2つの曲の間には以下の3つの共通点・関連性がみられるからだ。
子が朝に生まれている
子を遺して母が先に死ぬ
「銀色」
1. 子が朝に生まれている
どちらの曲でも、子が朝に産まれてきたことがはっきりとわかる。
星空0502抱かれて夢を見た…あなたが産まれてきた朝の追憶を…
※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり
嗚呼...昨日のことのように憶えて0102ます――
寒0102冬の朝――
産声は高らかに天を掴み取り――
橙色の光が射しました...
※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり
2. 子を遺して母が先に死ぬ
『星屑の革紐』では母親が先立っており、エトワールはプルーが来るまでは父親と二人暮らしだった。
『11文字の伝言』は、もうすぐ死にゆく母親が子に対して伝言を遺すという形で独白している。
愚かな母の最期の願0102です...アナタは――
『0302・0101・1001・0304・0502・
0105・0501・0902・0501・0301・0102』
(中略)
嗚呼...傍で歩みを見守れな0102のが...無念ですが...どうか...凛と行きなさ0102
※途中の『』部分は音源ではlalala… ライブでは歌詞ありで歌唱
3. 銀色
前提として、サンホラでは生まれてから死ぬまでの時間経過を、砂時計の砂が落ちるという表現をすることが度々ある。
かなり初期の曲に『輪廻の砂時計』があり、基礎的な概念になっていることがうかがえる。
星屑を集めるように 朽ちてゆく世界で
零れ落ちるまでの詩を綴る
美しく咲いてる花も 過ぎ去れば砂になり
静かなる終りの場所へ落ちる
煌めく星空を詰めた 銀色の砂時計
これを意味が通りやすくなるように、文節の順序を少し入れ替えたり補足を入れてみた。あくまで私なりの解釈だが、それぞれの語が表すものが何かは整理できた気がする。
朽ちていく世界(=好ましくない世界)で、(砂時計の)砂が零れ落ちるまで(=人生に与えられた時間が尽きるまで)の詩を綴る(=記憶を思い出す、もしくは記憶に刻む)。
その行為はまるで星屑を集めるかのようだ(=人生の中にあった小さな輝きを寄せ集めている)。
美しく咲いている花(=生き生きしている女性)も、(時間が)過ぎ去れば砂になって下に落ちる(=砂時計の砂が落ちきる、つまり人生に与えられた時間はいつか尽きる)。
そう考えると、人生を表す砂時計の砂はその人生であった小さな輝きで、まるで星空を詰めたような銀色の砂のようだろう。
Romanの中でも、『天使の彫像』で、終盤に彫刻家Auguste Laurantが死ぬ直前であることを示す描写として登場する。
如何0501る 賢者 であれ 零れる砂は止められ0501い
彼に用意された銀色の砂時計 残された砂はあと僅か・・・・・・
それをふまえて『星屑の革紐』の歌詞を見ると、母親はプルーとして輪廻転生する過程をこう表している。
銀色0502輝く夢の中…零れた砂が巻き戻る幻想を…
※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり
「零れた砂が巻き戻る」は、落ちた砂時計の砂が巻き戻る、つまり死から蘇るということ。
そしてそのときの様子が銀色であるという点が特徴的だ。
そしてこの銀色の描写が『11文字の伝言』にもある。
そして...地平線を滑る銀色の光
今...幾度目かの朝が訪れる
※書き起こしのため誤差がある可能性あり
光ということは輝いていると受け取っても相違はないだろう。
つまり、この母親の死を銀色の砂時計の砂が落ち切ることとして認知・描写し、その砂が巻き戻るために流れ動くことで光り輝いているという情景描写になったと思われる。
あえての「アナタ」呼び
最後に、これは子の性別をあえて特定させないようにしているという点に触れておく。
前提として、「あなた」と言う表記を変えることで相手を絞り込む表現はしばしばみられる。
Romanの中で言えば、例えば『見えざる腕』では恋人の女性が金髪のローランを「貴方」と呼んだ。
「大抵の場合…貴方はうなされ殴るから…
私は…此の侭じゃ何れ死んでしまう1001…
さよなら…貴方を誰より愛してる…
それでも…お腹の子の良い父親には成れない1001・・・・・・」
※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり
別の地平線で言うと、Moiraでは運命の女神のことを「貴柱」と呼んだ。
これは神を数える単位が柱であることから、貴女ではなく貴"柱"としたのだろう。
母上...貴柱ガ命ヲ運ビ続ケルノナラバ
※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり
では『11文字の伝言』をみると、カタカナで「アナタ」となっている。
もし生まれた子がイヴェールならば「貴方」で良いはずだ。
それにもかかわらず「アナタ」と、性別の特定ができない表現なのは意図を感じる。
ありふれた人生だったと...我ながらに憶0102ます
それでも...アナタを産めたことは『私の誇り』でした・・・・・・
解釈の自由を担保するためにあえてそうしたとも考えられるが、それと同時に子がイヴェールでない可能性も考えられないだろうか?
結論
『星屑の革紐』において、母親がエトワールを産んだときと、プルー生まれ変わった後の心情は一人称で述べられている。
そこにはないエトワールを遺して死んでしまう際の気持ちが『11文字の伝言』という1曲まるまる使って表現されていると思うと、ひたすらにエトワールへの深い愛情を感じる。
描写としても両者の共通性に違和感は無いように思う。
特に「銀色」については、『11文字の伝言』の方ではやや唐突な表現にも感じたため、『星屑の革紐』との共通性を持たせるためと考えるとより自然とも考えられないだろうか?
―――
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
更新履歴
2023/09/17
初稿
2023/10/07
「あえての「アナタ」呼び」追加
2023/11/02
サムネイル修正
2024/04/24
一部歌詞引用について「※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり」の注釈追記
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