【SH考察:047】『StarDust』の舞台設定から見える『輪廻の砂時計』の舞台設定
Sound Horizonのメジャーデビューする前に発表された曲である『輪廻の砂時計』。
そのif物語である『食物が連なる世界』を聴いた時、随分印象が変わって驚いた記憶がある。
改めてこの曲の時代や舞台設定を考えたい。
対象
2nd Story Thanatosより『輪廻の砂時計』
4th Story Elysion 〜楽園幻想物語組曲〜より『StarDust』
9th Story Neinより『食物が連なる世界』『憎しみを花束に代えて』
考察
当初予想外だった舞台設定
『食物が連なる世界』を聴くまで、『輪廻の砂時計』がそこまで現代的な時代設定だと思っていなかった。
この記事を書いている今でこそ絵馬に願ひを!があるため、現代的な曲がだいぶ増えたが、Nein発売当時で考えたら珍しい方だっただろう。
『食物が連なる世界』が出るまでは、『輪廻の砂時計』はRomanの『美しきもの』と対応関係があると考えていた。
姉がモニカ、弟がロランで、死が近づくロランのためにモニカがうたっている情景だ。
『美しきもの』がモニカ視点、『輪廻の砂時計』がロラン視点では?という仮説を立てていたし、他にもそういう説を唱えている人がいたように思う。
が、その可能性はほぼなくなった。理由として大きいのは性別。
まず『食物が連なる世界』の主人公は女性であることが判明した。つまりそれは『輪廻の砂時計』も同様ということだ。
ロランは男性名だ。フランス語での代表的なつづりはRoland。
よって、『美しきもの』で姉に看取られたのは男性つまり弟で、『輪廻の砂時計』『食物が連なる世界』の女性像とは完全に不一致。
『輪廻の砂時計』『食物が連なる世界』の舞台となる国
『美しきもの』との関連性がなくなった以上、『輪廻の砂時計』『食物が連なる世界』は国も時代も不明となった。
時代がある程度現代的なのは医療的な状況からわかるが、国の情報はかなり少ない。
ヒントとなりそうなのは、主人公の夫だ。
彼は子供に関する福祉団体に勤めている。
そして、Neinの中で福祉団体(に近い団体)が関係する曲がもう1つある。
『StarDust』が改変された『憎しみを花束に代えて』だ。
曲を聴くだけだとヒントがまだ乏しいが、コンサートでヒントが増える。
ここで募金を受け取っている男と、『食物が連なる世界』の主人公の夫が同じ人物に見える(演者が同じで衣装も同じ)。
『憎しみを花束に代えて』の登場人物名はすべてイタリア語だ。
デザイナーのジーノことジョルジョ レッジェーロはいかにもイタリア語らしい名前だし、芸名かもしれないが主人公ステラ(おそらくStella)と、そのライバルの芸名ルナ(おそらくLuna)もイタリア語で星と月。
そのため彼らの生活圏はイタリアなのだろうと予測できる。
(なおChronicle2ndと繋がる世界線なら、国名はItania イターニアの可能性が高いが、ややこしいため今回はイタリアと表記する)
となると、募金を受け取っている男もイタリア在住で、その妻であるならば『食物が連なる世界』の主人公もイタリア在住だろうと推測できる。
『輪廻の砂時計』『食物が連なる世界』の時代設定
つまりは『StarDust』『憎しみを花束に代えて』の時代設定でもあるのだが、これらは登場するワードから時代設定や時期感も考えてみる。
というか正直『憎しみを花束に代えて』で考えるのが一番わかりやすいため、しばらく『憎しみを花束に代えて』の話をする。
まずわかりやすく時期感を絞れそうなのはこの部分。
このヴェルコレ、明らかに現実でいうとパリコレのことだ。
ヴェルセーヌとは、サンホラの世界のフランドル(現実のフランス)内の地名。
綴りからして、現実のヴェルサイユ(Versailles)をもじっている可能性が高い。
ヴェルサイユはパリから見て西側のイヴリーヌ県の県庁所在地で、豪奢な宮殿があることで有名な場所だ。
パリとはまた別の場所だが、どうもサンホラの、特に現代に近い時代設定のフランドルでは、パリとヴェルセーヌの役割が混ざっているようだ。
現に絵馬に願ひを!では、2024年のオリンピック・パラリンピックの開催地がヴェルセーヌになっている(現実ではパリ)。
そのため、ヴェルコレはパリコレのこととみて良いだろう。
パリコレとはプレタポルテ(高級既製服)・コレクションとオートクチュール(高級仕立服、つまり一点もの)・コレクションの総称。前者が3月と10月、後者がレディースの場合1月と7月に開催される
パリコレがこの形式になったのは1973年からだ。
つまりヴェルコレも同様ならば1973年以降の話と捉えることが出来る。
またジーノが「ついに完全復活を遂げた」ということは、ジーノの参加にはブランクがあったことがわかるため、1973年からさらに、少なくともかつての参加+ブランク+復活という数年間を加算する必要がある。
ざっくり1990年代以降とみて良いのではないだろうか。
さらに、ステラが【児童虐待防止団体】への《援助が働く仕組み》を作ったのはヴェルコレ出演後の話。
となると、元ネタである『StarDust』を含むElysionの発売が2005年で、ちょうど発売当時を設定していてもおかしくないかもしれない。
結論
『輪廻の砂時計』『食物が連なる世界』の国と時代は、『StarDust』『憎しみを花束に代えて』から推測できた。
おそらく2005年かその前後のイタリア、サンホラ風に言えばイターニアでの話だろう。
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
更新履歴
2023/08/08
初稿
2024/04/24
一部歌詞引用について「※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり」の注釈追記
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