【SH考察:074】ロランとモニカはどこで暮らしていたのか?
Sound Horizonの楽曲『美しきもの』では、四季折々の情景が描かれる。
この情景描写から、登場人物であるロランとモニカがどこに住んでいるのかを絞り込めないだろうか?
今回はこの観点で検討してみた。
対象
5th Story Romanより『美しきもの』
考察
蝉が鳴き雪が積もる地
前提としてRomanに収録された曲は全て、時代は古今混ざっているものの、フランス(フランドル)の地がモデルだ。
その中でも『美しきもの』は情景描写が多く、フランスの中でも特にどこかを推定するヒントが得られそうだ。
具体的にはこの2点。
蝉時雨が聴こえる
雪が積もる
蝉時雨が聴こえる
蝉時雨とは、たくさんの蝉が一斉に鳴いて大音量で鳴き声が聞こえる様子を、時雨(秋冬の一時的にざっと降る雨)Iに例えた語だ。
ロランとモニカがいる場所では、この蝉時雨が聴こえるらしい。
日本に住んでいる人はあまり気にならないかもしれないが、蝉時雨が聴こえるというのは地域を絞り込むヒントになる。
蝉はどちらかというと暑い地域に生息する生物であるため、北過ぎると寒くて生きられないのだ。
フランスの場合、蝉は南側にしか生息していない。
蝉は気温が約25℃以上ほど高くなると、オスがセミを惹きつけるために鳴き始める。こうして蝉が一斉に鳴く様が蝉時雨だ。
なお"南"フランスといっても北緯は北海道と同じくらい。
ただ南フランスは地中海性気候で、1年を通して温暖な気候だ。蝉が生息できるのもそのためだろう。
南フランスのなかでもプロヴァンス地方では、蝉はポジティブなイメージでシンボル化しているらしい。
もう少し北側でも蝉がまったくいないわけでもないが、北上するにつれて珍しくなるのも事実であるため、珍しさと地中海性気候のリゾート感が合わさってポジティブなイメージになっているようだ。
雪が積もる
先ほどの蝉の話に加えて気になる点が、雪が降り積もっている点だ。
「大地を包む」ということは、パラパラっと降る程度ではなく、結構しっかり積もっていることが想像できる。
この情報と、前述の蝉の生息地域を掛け合わせると、結構範囲が絞れる気がする。
南フランスは地中海性気候で温暖であることが特徴だ。平地ではほぼ雪が降らないらしい。
たとえば南フランスのリゾート地、プロヴァンス地方のニースは避寒地として有名だ。
一応、稀に寒波で雪が降ることもあるにはあったようだが、ニュースになるほどなので珍しい事象なのだろう。
景色について「綺麗だね」と言い表し、全体的に穏やかに進んでいく様子から、突然の寒波で驚いたり困ったりしているようには感じられなかった。
そのため、南フランスの中でも標高が高めの、雪が降りやすい条件下に住んでいるのではないだろうか。
プロヴァンス地方でも、北・北東部にある山や渓谷では湿度が上がる。例えば、イタリアとの国境付近にあるぺラ山脈のパノラマでは積雪が確認できる。
また、同じく雪が降るウバイエ渓谷には大小さまざまな町がある。
例えばバルスロネットという町は、やはり冬には結構しっかり雪が積もるようだ。
(この辺りになると地中海性気候ではなく高山性気候。なお蝉が生息できるかどうかまでは確認できなかった…)
またはスペインとの国境にあるピレネー山脈の方面も考えたが、フランスで蝉と言えばプロヴァンス(南フランスの中でも東側、イタリアやフランス寄りの方)であるため、アルプス近くのほうが可能性が高いのではと感じている。
結論
ロランとモニカが暮らしていたのは、南フランスのプロヴァンス地方。かつ比較的標高が高いところではないかと考えている。
夏には蝉が鳴き、かつ冬には雪が降るという条件下では、大雑把に絞り込めるのはこの程度だ。
―――
よろしければスキボタン(♡)タップ・コメント・シェアしていただけますと幸いです。
他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
更新履歴
2024/01/20
初稿
2024/04/24
一部歌詞引用について「※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり」の注釈追記
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?