【SH考察:053】「焔」の読み方からその意味を推測できるか
Sound Horizonの楽曲にはたびたび「焔」が登場する。
(何なら曲のタイトルにもなっている)
その読み方はそのまま「ほのお」のこともあれば、あえて「ひかり」と読ませる場合もある。
また、そのまま字のごとく燃える炎の意味のこともあれば、明らかにそうではないこともある。
今回はその読み方と意味の組み合わせから、読み方で意味を推測できるかを検証した。
対象
Sound Horizonの複数楽曲(今回対象曲が多すぎるため曲名の羅列は割愛)
考察
生きてるなら燃えてやれ!
この後詳細を説明するが、歌詞中に「焔」と表記して命や人生を連想させる箇所が頻繁に登場する。
命とは焔のように燃えて燃え尽きるものという概念があるようだ。
その概念の表れとして最たるものはこれだろう。
だが、この命の比喩表現以外にもたびたび「焔」は登場するため、これまでの歌詞の傾向からどれがどの比喩表現なのか、傾向を探ってみる。
焔が登場する曲
歌詞カードに表記がありその字が「焔」で確定しているもの、もしくはナレーションで発音からして「焔」を指すと断定できるものを拾った。
日本語の場合、音声のみで表記が確定しないものは除外。
手作業で探したため、漏れがあるかもしれない。その場合はご容赦を…。
全部で24曲。1曲に複数個所登場することもあった。
こうしてみると、「焔」の使われ方を大まかにでも分類できそうだ。
「焔」の読み方
調べた限りでは全部で3パターンだった。
1. 「ほのお」
漢字そのままの読み方だ。
2. 「ひかり」
この場合は『焔』や《焔》など、カッコをつけて強調して使われることが多い。
3. 「ほむら」
これは例外的なもので、絵馬に願ひを!でのみ登場。
伊咲 那美の子供の名前だ。人名として使われている。
音声のみで正確な表記はわからないものの、曲名『贖罪と《焔》の息吹』からして「焔」でほぼ確定と見なした。
ただこの使い方はここのみであるため例外として扱い、以降の考察では触れない。
「焔」の意味使い分け
次に意味について、こちらは大まかに4つにわけることができた。
こちらも順番に例と並べる。
1. 燃える炎
これは字そのままの意味だ。
戦火が連想される曲がいくつかあるうえ、この『Sacrifice』のように登場人物が思いきり放火している曲もあるため、当然本当に燃える炎の意味で登場する場合がしばしばみられる。
2. 命や人生
まさに「生きてるなら燃えてやれ!」の意味だ。
なお「焔」とは少し表現は異なるものの、命は燃えるものだという表現は初期の楽曲、具体的にはchronicle(2ndではない方)の『樹氷の君 ~凍てついた魔女~』から登場している。
またそれ以降もしばしばみられる概念だ。
この《灯火》は彼女の胎児のこと。
生まれる前のまだ小さな体に宿る命であるため、焔よりもより小さな火のイメージの灯火で表したのかもしれない。
3. 感情の高ぶり
強い欲求などを表す場合だ。
辞書的にも炎・焔には、燃える火炎の意味のほかに、感情や欲望で、まるで心が燃えるかのような状態を例える語という意味がある。この後者の意味で使われている場合だ。
4. 病
これは1回だけ登場した使われ方だ。
なお、少ないがこれら4つのどれにもあてはまらない特殊なケースもある。
たとえばこれ。
これは単語の意味そのものよりも、曲タイトルを順番に並べることに意味があった。このような曲タイトルの引用は特殊例として、以降の考察からは省く。
読み方と意味の組み合わせ
では、この読み方と意味の組み合わせには何らかのパターンがみられるかを確認しよう。
炎の意味で使う場合、字の通り「ほのお」と読ませる方が多い。
その意味であえて「ひかり」と読ませたのは下記1つだけだ。
これは燭台の蝋燭の火で、暗がりの中の光源として使っている火だ。
揺らめく小さな灯火が光源という心もとなさが、姫が塔を探検して見知らぬものを探すという、不安と興味の入り混じったドキドキする気持ち、いわば不安定な感覚を思わせる演出として使われているとすると、より光源をイメージさせる「ひかり」という読みにしたのは納得感がある。
興味深いことに、命(や人生)の意味の場合、「ひかり」と「ほのお」の読み方の割合が3:4で、意外と「ほのお」のほうが多い。
何となく先入観で「ひかり」のほうが多いかと思っていた。
一方で、感情の高ぶりを表す場合はすべて「ほのお」だった。
これは納得感がある。たとえば燃え上がるような恋愛、といった表現は一般的に見かけるだろう。強い感情を炎に例えているのだから、読みもそのまま「ほのお」のほうがしっくりくる。
結論
Sound Horizonでは字そのものの意味以外に、別の意味を潜ませることがある。
その一種が今回取り上げた「焔」の用例だ。
そのまま燃える火・炎の意味で使う場合もあるが、命や人生、高ぶる感情を表す表現として使われる場合も多々ある。
そして、命や人生を表す場合はその6割程度(21回中12回)で「ひかり」と読ませる傾向が見られた。
1回のみ例外はあるものの、「ひかり」と読ませて命や人生以外の意味になることはほぼなさそうだ。
したがって、「焔」と書いて「ほのお」と読む場合は前後の文脈から意味の判断が必要だが、「ひかり」と読ませる場合は命や人生の意味の可能性が高いと言って良さそうだ。
読み方で意味の推測が一定程度できることがわかった。
―――
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
更新履歴
2023/08/27
初稿
2024/04/24
一部歌詞引用について「※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり」の注釈追記
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