【SH考察:069】宮比の本来の想い人と無慈悲な現実と大神解釈
Sound Horizonの絵馬に願ひを!で、恋愛成就を願う金髪ギャル、天野 宮比。
彼女の想い人は絵馬の解釈によって勝手に決められるが、彼女が絵馬を掛けるまでに想っていた本当の想い人は誰だったのだろうか。
対象
7.5th or 8.5th Story 絵馬に願ひを!Full Editionより『恋は果てまで止まらない』『夜を駆ける二人』『夜を滑る二人』
考察
絵馬の解釈に左右される想い
宮比は恋愛成就を祈願するために絵馬を掛けた。
彼女が最初からポリアモリー(同意の上で複数人と恋愛関係を持つ人)でない限り、思い出に登場する幼馴染の八石 許理と猿田 犬彦のうち、片方だけに恋していたはずだ。
ということは、絵馬の解釈によっては宮比の想いを捩じ曲げたことになる。
宮比は本来どちらに対して恋心を抱いていたのだろうか。
宮比の恋の相手
宮比の本来の恋の相手は、おそらく許理だ。
そのように考える根拠は大まかに分けて2つある。
想い出エピソードが許理重視の内容になっている
絵馬を掛ける直前のエピソードが、許理とはあって犬彦とはない
想い出エピソード
『恋は果てまで止まらない』で、幼馴染二人に関するエピソードが出てくるが、明らかに許理がメインで犬彦は終盤にしか出てこない。
歌い出しからして許理をまず思い浮かべている点からして、この歌は許理に向けての想いを告げている。
また、許理のことを「あんた」と二人称、つまり目の前にいるかのように表したのに対して、犬彦は「あいつ」と三人称、つまりその場にいない、あくまで脇役ポジションになっている。
そもそも、『恋は果てまで止まらない』という曲名自体が許理とのエピソード(犬彦は不在)を意識したものだろう。
LEON MALLへの道中の幼い二人の会話で、もととなったであろう宮比の発言がある。
となると、許理の「果てまでは無理」という返答が未来を暗示しているようで苦しくもなるのだが。
絵馬を掛ける直前のエピソード
前提として、絵馬を掛けた後の行動は解釈の影響を受けるが、それより前の行動は変わらないはずだ。
つまり、胸糞悪いが以下2つは既定路線であるととらえるしかない。
許理が《欲望に忠実で下劣な男達》に襲われる
その帰り道に許理と犬彦が会ってキスをする
そして、許理が「最近なんか妙に元気ない」のはこの件の影響であることが推測できる。
また、『夜を滑る二人』の場合、宮比は明らかに神社参詣の当日に告白しに行っている。
これらの時系列を整理すると、この宮比の無意味模様替えは許理が襲われた後、絵馬を掛ける前であることがわかる。
つまり宮比が絵馬を掛ける"直前"に想っていた相手は許理だ。
なお根拠としては弱いものの、絵馬に相手の名前を書かなかったことも間接的に許理が相手であることを表しているように思う。
名前を書かなかった理由は、リア友に見られたくなかったからだ。
もし犬彦が相手だった場合、名前を書いたとしても彼女の友達、例えば学校の友達や宗像 狭依は「犬彦」が誰だかわからない可能性が高い。
彼は3歳年上で、たとえ宮比と同じ高校に進学していたとしても在学期間が被らない。よって、宮比の友達は犬彦の顔を知らない人も多いだろう。
(小学生時代であれば在学期間が被るため、同じ小学校から高校に進学した人ならもしかすると知っている可能性もあるが)
対して許理の場合、当然同じ学校の友達であればすぐにわかるし、アイドルをしているため不特定多数がすぐに気づく可能性もある。
そのため、許理の名前を出すことを避けたというのは自然な動きであるように思う。
三角関係
ここまでで、宮比は許理に恋していることがわかる。
そしてそれと同時に、許理は犬彦に恋していることもわかる。
というのも、前述の通り許理が犬彦とキスをすることは、宮比が絵馬を掛ける前に起きた事実だ。
時系列的に絵馬の解釈の影響を受けない出来事であり、許理が好きな相手は犬彦であることがわかる。
狼樂神社の影響範囲がどこまで及ぶかにもよるが、参詣した描写のない許理の思考までは改変できないのであれば、宮比の想いは叶わないことになる。
もし叶えるならば、許理に不自然かつ強引な気持ちの変化を起こす必要がある。
また犬彦も、おそらく宮比よりも許理に想いが傾いている。
最初から好きだったかまではわからない。もしかすると状況的に許理に思わずキスしてしまい、恋愛感情の自覚はさておき責任を取ろうとしているだけかもしれない。
犬彦と許理は、彼女が襲われた当日に一夜を共にした。
許理はその後よく眠気を感じているようだが、これは妊娠初期に見られる症状でもある。
もし本当に妊娠していた場合、胎児の父親が犬彦の可能性も出てくる(もちろん暴漢の可能性もある)。
そのため、なおさら犬彦が許理に対して何らか責任を取ろうとして、結果的に宮比より許理に傾くのはあり得そうだ。
改変された恋心
『夜を駆ける二人』では、宮比の恋心を犬彦への想いであると捩じ曲げられたことになる。
その結果、許理への気持ちが嫉妬にすり替わってしまう。
このとき、「ウチの《地⛩線》から消えろよッ!!」は心の中で
言い、「違う... ごめん... そうじゃない!」以降を口に出して言った。
ここで気がかりなのは、神社関係者は心の中で念じたことしか聞き取ることが出来ないことだ。
つまり、もし彼が宮比の想いを絵馬から引き続き聞き取っていた場合、許理に消えて欲しいという部分までしか聞き取れず、その後の打ち消しがわからなかったということになる。
『夜を駆ける二人』では、その後許理は彼女たちの故郷の凪丘から去り戻らない。
つまり宮比の本来の想い人を、絵馬の解釈の歪みによって、間接的にとはいえ宮比によって追い出してしまう。
しかも、エンディング(参詣せり曲)で因子をすべて改修後、神宮を招くためには『生まれちゃいけない命など在りはしない!』を迎える必要があり、さらにそのためには『夜を駆ける二人』の選択が必須だ。
つまり狼樂神宮を呼び起こすには宮比の本来の想いを踏みにじることが必須という構図。無慈悲すぎんか。
なお、宮比は、その不自然な心境の変化の片鱗に無意識ながらも気づいているのかもしれない。
宮比が「例え世界の果てまでも」行けると思っていたのは、許理と二人のときだ。犬彦とではない。
だからここで「果てまで」と言いつつ、ふと我に返って疑問を持ってしまったあたり、その心情にほころびを感じさせる。
余談:即ち…小惑星を喰らう超紅炎
この曲は、NeinのオマケMaxiに収録されているものだ。
偶然か意図したものか定かではないが、宮比に向けた歌詞のように見える。
たとえばこの出だし、「キミ」を宮比、「彼」を犬彦、「彼女」を許理と置き換えると非常にしっくりくる。
だからといって無理に関連付ける気はないのだが、ちょっと気になったので共有まで。
結論
宮比の想い人は許理だろう。
犬彦に対してどう思っていたか、本来の気持ちはわからないが、陽だまりと例えた三人の想い出を大切にしているのだから、友情はあったはずだ。
余談だが、天啓の鈴を鳴らした場合、宮比と許理と犬彦、そして許理の子の4人が家族のように振る舞っている。
宮比の思想もポリアモリー(同意のうえで複数人と恋愛関係を結ぶ人)のようになっており、一見良いとこどりした万事解決エンディングのようになっている。
しかしもし許理の子の父親が犬彦だった場合、許理犬彦と子で家族の形としては成り立ち、宮比がそこに割り込んでいるようにも見える。
私には、辛い性経験した女と家族を喪い続けた男と非計画的に生まれた子で一生懸命に新たな家族になろうとしているところに、さらに性指向を改変された女を無理矢理捩じ込んだような、歪さや不自然さ、虚しさを感じてしまった……。
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キャラクターアイコン:
さざれ様(𝕏アカウント @sazozo0)
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
更新履歴
2023/11/30
初稿
2024/04/24
一部歌詞引用について「※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり」の注釈追記
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