【SH考察:054】Yieldの数式「3-1+1-2」の意味
Sound HorizonのElysionに登場する『Yield』では、曲中に「3-1+1-2」という数式が登場する。
これは登場人物の登場と退場を意味していそうだが、どの数字が誰を表しているのかは諸説あるため、成り立ちそうな説を検証した。
対象
4th Story Elysion~楽園幻想物語組曲~より『Yield』
考察
3-1+1-2
問題の数式が登場するのは終盤。
この「3」「1」「2」はそれぞれ人数を表し、プラスマイナスはその人物の登場と退場を表していると言える。
なぜ人数を表していると言えるかについては割と明確で、歌詞曰く「数を引く」というのは「果実が落ちる」ことであり、「果実」とはすなわち首だからだ。
では、この足されたり引かれた人物が誰なのかを整理しよう。
登場人物
私は、この曲に出てくる登場人物は5人だと考えている。
主人公の女性
男
男の妻または彼女
仮面の男
主人公の子供
歌詞で存在が明記されていない人物もいるため、順を追って誰がどのような人物で、どうして存在していると考えられるのかを述べる。
1. 主人公の女性
ジャケ絵左から三番目にいる、茶髪ロングヘアで緑色のオーバーオールを着ている女性だ。
5人の娘達のなかでは背が高い。
年齢は不明だが、「一人娘」という表現や、父と母のことを口に出している点(表現として父母の存在を強調している点)から、自立した大人というより子供としての要素を強く感じる。よって未成年と推定している。
2. 男
主人公が思いを寄せる相手。
容姿も年齢も不明だが、ジャケ絵で主人公の後ろに描かれている、テーブルを囲む二人のうち片方だろう。
同じ家でテーブルを囲んでいるところから、ひとまず既婚者と仮定する。
3. 男の妻または恋人
おそらくテーブルを囲む二人のうちもう片方。
「二人の♀」からして登場人物に主人公以外の女性が一人いることは確定していること、主人公が堂々と男に接近できないことから、男の傍に近しい関係の女性がいることは確定とみて良いだろう。
それが恋人なのか妻なのかは不明だが、今回はいったん妻と仮定する。
彼女については男以上に情報がないが、もしかすると「君」かもしれない……が、だとすると主人公は結構攻めた行動をしていることになる。
「君」は主人公が羨む相手で、主人公からすると幸せに見える人だ。
主人公からすれば、想い人である男の傍に堂々といられる女性は幸せに見えるだろう。
ただ、この場合浮気相手が本命相手に「あなたは幸せそうだね」と思っていることになり、直接言っていないにしても態度には出ているかもと思うと、個人的には結構攻めてるなぁ……と思う。
4. 仮面の男
ABYSSの頭文字の、女性たちが登場する曲すべてで最後に登場する仮面の男。
5. 主人公の子供
歌詞中に明確には描かれてはいないものの、歌詞の断片から暗喩されているとみなして、主人公が男との間の子を産むと考えたほうが説明しやすい。
これは後程数式の説明で改めて触れる。
数式の意味の仮説
私の方で二つほど仮説を考えてみた。
ひとつは一見歌詞に忠実に見える(が実は説明がつかなくなる)方、もうひとつは歌詞の裏の意味を推測したものだ。
(主人公・男・妻)-男+仮面の男-(主人公・仮面の男)
(主人公・男・妻)-主人公+子-(男・妻)
それぞれどうしてそう考えたのか、どれくらい成り立ちそうかを検証してみる。
仮説1:(主人公・男・妻)-男+仮面の男-(主人公・仮面の男)
これはざっくり言うと、ここで現れた仮面の男を数式の「+1」、仮面の男の主人公が消え去ったことを「-2」ととらえるものだ。
そのため、比較的歌詞に忠実に沿ったものになるから、曲から直感的には連想しやすい。ただ問題点として、最後に残されるのは妻になる。
先に言おう、この説は成り立ちにくい。理由を説明するために、順を追って説明する。
まず「3」で「二人の♀ 一人の♂」がいるが、主人公が思いを寄せる男を何らかの理由で刈り取る、すなわち首を落とす。これが「-1」。
その後「+1」で仮面の男が現れ、「-2」で主人公と共に去る。
最後に残るのは妻だ。
歌詞を愚直に表すとこうなるが、これは成り立たない。
具体的には、最後に妻が残るのがおかしい。
歌詞ブックレットの裏表紙、黒いABYSS~奈落幻想物語組曲~のほうのイラストを見ると、テーブルを囲う二人の頭が落ちて転がっている。
死んでいるのは二人、しかも明らかに近しい関係性の二人だから、この仮説のように死ぬのが一人だけ、妻だけが残るのはおかしい。
歌詞には無い人の出入りというか、生き死にを考慮しないといけなさそうだ。
仮説2:(主人公・男・妻)-主人公+子-(男・妻)
これは歌詞の裏を察してみようとしたものだ。具体的には「子」の存在を想定している。
また仮面の男は「最後に現」れているのに対し、数式の最後が引き算になっていることから、仮面の男は数式が終わった後に登場したものとみなす。
子はここから想定した。
「情事」は男女の関係、特に肉体関係を指す表現だ。
そして、「一夜限り」の関係だったが、なぜかその後「想いが実る」と矛盾したことを言っている。
この「実る」が、子供が生まれるという意味ではないか?と推測してみた。
この曲は頭(首)を果実と例えている点から、人間を果実、つまり実るものとしてとらえると、この「想いが実る」も人を指すのではないだろうか。
歌詞ブックレットの表紙、白い方のElysion~楽園幻想物語組曲~では、主人公が着ている服の胸に果実が描かれている。
しかし裏表紙、黒い方のABYSS~奈落幻想物語組曲~では、その胸の果実が消えている。
これも主人公に宿っていたものがなくなった、つまり胎内にいた子が出産で主人公から離れたことの暗喩とは思えないだろうか……。
最初は男女と主人公がいるが、主人公は一夜限りの情事を胸に表向きは身を引く。これが「-1」。
その後主人公が出産し「+1」。
そしてこの後何らかのいざこざがあり、男とその妻が両方首を斬られて死ぬ。これが「-2」。
このいざこざは、まぁ起きてもおかしくないだろう。
男からすれば浮気相手が自分の子を産んでしまったわけで、その妻からすれば怒り心頭だろう。普通に現実でも起こり得る修羅場だ。
この場合、その後仮面の男が主人公を連れて行ってしまうため、最後に残るのは主人公が産んだ子だ。
結論
私は仮説2として取り上げた、(主人公・男・妻)-主人公+子-(男・妻)を支持している。
ジャケ絵と矛盾せず、浮気相手の子の誕生によって男・妻・主人公という男女三人のいざこざが起こりやすそうな状況説明にもなる。
とりあえず、浮気はやめたほうが良いということが教訓として学べる話だ。
余談だが、今回ジャケットイラスト(歌詞ブックレットの表紙や裏表紙)をもとに考察した箇所が点在するため、本来であればその絵を添えたかったが、著作権的にアウトになる可能性が高いため控えた。
そのため、是非お手元にCDを用意してみてほしい。
―――
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
更新履歴
2023/09/02
初稿
2024/04/24
一部歌詞引用について「※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり」の注釈追記
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