【SH考察:004】詩人バラッドと詩人ルーナの関係
Sound Horizonの作中に詩人として登場する「バラッド」と「ルーナ」、そしてルーナが口にする「エンディミオ」。この関係を整理した。
対象
Pico Magicより『辿りつく詩』
Pico Magicまたは 1st Renewal Story Chronicle 2ndより『詩人バラッドの悲劇』
9th Story Neinより『名もなき女の詩』
考察
時系列から見る関係性
『辿りつく詩』は、Pico Magic版とChronicle 2nd版で、出だしが異なる。
Pico Magic版ではChronicle2nd版にないナレーションがあるのだ。
太字部分がChronicle 2nd版にはない。
だが、これがあるのとないのとでは、ルーナが探す恋人が誰なのか、捉え方が大きく変わってくる。
太字部分がある場合、ルーナは「バラッド(姓のみ、名不明、というか本名不明)」より明確に後に生まれている。
かつ、「彼の再来」と呼ばれているということは、「バラッド」が死んでからしばらくしてルーナが有名になっていること、つまり「詩人バラッド」と「ルーナ バラッド」の活躍時期がズレていることがわかる。
そしてルーナが探している恋人は「エンディミオ」。
おそらく名で、姓は不明。
そしてエンディミオは、とある城で亡くなっている。
城で亡くなったと言えば「バラッド」だ。
ブリタニアの冬薔薇を詩で怒らせて処刑されている。
ここで、バラッドとルーナとエンディミオの関係が整理できる一方で、「最期の詩」に矛盾が起きる。
詩人バラッドは、ブリタニアで冬薔薇を怒らせて処刑される。
バラッドには、既に亡くなっている恋人がいる。
バラッドは処刑前に最期の死を遺している。
バラッドの死後ルーナが活躍。
ルーナは恋人エンディミオを探して旅に出る。
ルーナは旅の最中バラッドの最期の詩を口ずさむ。
ルーナは「恋人が(=エンディミオが)最期に遺した詩」と言っている。
最後の2文のとおり、このままでは「最期の詩」を遺したのが誰かが矛盾してしまうのだ。
ただ、これはNeinでの、『名もなき詩』に書かれたR.E.V.Oの話にヒントがある。
この「男」は詩人バラッド、「女」はルーナのことだろう。
ここで注目すべきは、男が、恋人は死んでいると勘違いしている点だ。
よって、先ほどの箇条書きは以下のように修正できる。
詩人バラッドは、ブリタニアで冬薔薇を怒らせて処刑される。
バラッドには、既に亡くなっていると思っている恋人がいる。
しかし、実際にはその恋人は生きている。
バラッドは処刑前に最期の死を遺している。
バラッドの死後ルーナが活躍。
ルーナは恋人エンディミオを探して旅に出る。
ルーナは旅の最中バラッドの最期の詩を口ずさむ。
ルーナは「恋人が(=エンディミオが)最期に遺した詩」と言っている。
ここから、詩人バラッド=エンディミオで、冬薔薇を怒らせ処刑された。
ルーナはエンディミオの処刑を知らず、またエンディミオが遺した詩とも知らずにその詩を口ずさみながら彼を探す旅に出る、ということがわかる。
ちなみに、改変if世界である『名もなき女の詩』では、詩人バラッドについて以下のナレーションが入る。
『名もなき女の詩』では、冬薔薇に忖度し、冬薔薇の美しさをたたえるような歌に変わってしまった。
これにより、彼の詩への世間的評価が懐疑的なものになっている。
つまり、彼が『辿りつく詩』のように天才と謳われる可能性は低く、またそんな彼の詩が広まる可能性も低い。
広まらない以上ルーナにバラッドの詩を知るわけがない。
そして、その場合エンディミオを探すルーナには心の支えがなくなるため、途中で旅をやめて、助けてくれたパン屋に留まってしまう、としてもおかしくないのではないだろうか?
結論
時系列を詳しく整理し直した結果はこうである。
詩人バラッド=エンディミオとルーナは恋人同士。
詩人バラッドは、ブリタニアで冬薔薇を怒らせ捕まった。
バラッドは処刑前に最期の死を遺した。
詩は全土に広まる。
ルーナはエンディミオを探して旅に出る。
ルーナは旅の最中最期の詩を、エンディミオが作った者とは知らずに耳にして口ずさむ。
ルーナはブリタニアのとある城の牢番の話を聞いた結果、口ずさんでいた詩がエンディミオの詩であることを知る。
またエンディミオの死も知る。
ちなみに、夫婦ではなく恋人なのに、ルーナとエンディミオがどちらも「バラッド」と呼ばれているのは少し引っかかる。
だが、エンディミオの存在は歴史の闇の中、というように、本人そのものは姿かたちが明確には認知されず、詩だけが伝播している。
そのため、後に有名になったルーナの名字から逆輸入的にバラッドと呼んでいるだけかもしれない。
もしくは、本当に偶然同じ苗字だったのかもしれない。この辺りは正直詰め切れない。
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
更新履歴
2023/04/07
初稿
2023/04/14
微修正
2023/04/25
微修正、サムネイル変更
2023/05/02
歌詞引用元表記修正
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