【SH考察:065】通称「燃やせ君」って伊坂那美の息子だよね
Sound Horizonの絵馬に願ひを!にて、手水舎を覗き込むと見える記憶のうちのひとつ。
名乗りもせずいきなり喋り始める少年は、燃やせという声に苛まれている。
名乗らないため断定はできないが、彼は伊坂 那美の子、後の放課後の放火魔だと思われる。
その理由をまとめた。
対象
7.5th or 8.5th Story 絵馬に願ひを!Full Edition
考察
水面に揺れる一片の《記憶》のひとつ
参詣者の願ひの顛末の合間で、水面が揺らめく背景で、記憶や記録が呼び起こされる。
それは天照 美禍曰く、「わすれもの」だ。
(ちなみに、JASRACに『水面に揺れる一片の《記憶》』という曲名で登録がある)
この記憶や記録は、全部で13ものパターンある。
(通し番号は今回便宜上つけたもので、実際決まった順序があるかは不明)
1~11番は全て最初に「ある~の記憶/記録/告白」と言われるもの。後ろに分かりやすいように誰のものかをカッコ書きした。
12番と13番はいきなり喋り出すためタイトル不明だ。
あるジャーナリストの記憶(久延 鳶彦)
ある獣医の記憶(須久奈 鷹彦)
ある少女の記憶(須藤 勢理)
ある少女の記憶(宗像 狭依)
ある少年の記憶(天野 力)
ある少年の記憶(鹿島 健)
ある少年の記憶(杵瀬 命)
ある祖母の記憶(織部 深枝恵)
ある父親の記憶(佐久夜 大山)
ある母親の記録(織部/佐久夜or石長 鹿屋野)
ある霊能少女の告白(天照 美禍)
「燃やせ、燃やせと誰かが囁く」(?)
「酷いじゃないか!」(須久奈 月人)
このうち、名乗りがないのは12番と13番だが、13番は明らかに月人。声と態度から断定できる。
残る12番が誰なのかを考えたい。
燃やせと言う声は誰か
彼は誰かの声に駆られて、「燃やさなければならない」という義務感のような思想に取りつかれているように見える。
その声は怒りにも哀しみにも憎しみにも愛のようにも思える声。
このような声で「燃やせ」と言える人物は、作中ではひとりしかいない。
子を産めなかった伊咲 那美だ。つまり『暗闇を照らすヒカリ』のほうに分岐した場合の彼女。
本気で願っても叶わず、神を呪うほど怒り、その怒りは子を失ったことへの哀しみに通ずる。他を妬み憎しんだが、それらの感情は全て愛しい子のための衝動だったはずだ。
彼が聞いているのは、そのような伊咲 那美の声だろう。
命が廻る世界
サンホラの世界では輪廻転生が起こる。
わかりやすいのは『星屑の革紐』のエトワールの母親が黒犬プルーになったところだろうか。
子に関しては、生まれるまでは個としての存在が曖昧な感じもする。
誰それの子という存在が確立してないが故、誰かに望まれた結果、その人ではない別の誰かの子としてかもしれないが、いつか産まれるというような揺らぎが感じられる。
(下記2つの例がどちらもNeinであるため、改竄されたものという前提はあるものの)
『暗闇を照らすヒカリ』において、伊咲 那美は絵馬の願ひも虚しく突然死産した。
つまりこのときの胎児は産まれなかったため、「かつて伊咲 那美に望まれ、これからどこかで生まれる子」となった。
この子が『13文字の伝言』にて伊坂 那美の子になったのではないだろうか。
そして、「生きているなら燃えてやれ」という概念は、ヴァニスタがデビューしている以上秋津国では知られているものだ。
八島 知美が口にもしている。
というか、サンホラの世界では命を焔と表現することがたびたびあり、地平線を越えた概念でもあるように思う。
つまり伊咲 那美が、子に生き延びて欲しい・生まれて欲しいという思いが「燃える」という表現に繋がる可能性がある。
結果として伊坂 那美の子として生まれた彼は、その真意がわからずただ「燃やせ」「燃えろ」の声だけを聞き続けた結果、物に着火して燃焼させて放火魔になってしまったわけだが。
結論
私は「燃やせ、燃やせ」の声に苛まれる彼は、伊坂 那美の子である放課後の放火魔の高校生だと思っている。
伊咲 那美の子への愛がまるで呪いになったかのように、伊坂 那美の子に届き、しかし真意は伝わらず放火という行為に繋がってしまったという推測だ。
違う地平線だが、テレーゼに少し似ているかもしれない。
彼女は息子への愛で約束に詳しくなった末に魔女扱いされ火刑に処されたが、その際本物の魔女になると吐き捨て、MIKIはMärchenでは悪女役ばかりを演じた。
彼が真意を知る機会が得られるような天啓があれば良いのだが……。
なお放課後の放火魔については、伊坂 那美が産んだ子かという点も議論の余地があり、それは以前別記事にまとめている。
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
更新履歴
2023/11/02
初稿
2024/04/24
一部歌詞引用について「※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり」の注釈追記
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