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Sound Horizonの考察・調査記事まとめ

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ニンニ リズが書いた、Sound Horizonの楽曲や世界観に関する考察や調査記録記事のまとめ。
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2024年8月の記事一覧

【SH考察:106】ArkがなぜArkなのかさっぱりわからない

※2024/09/02更新 Sound Horizonで複数のアルバムに収録されている『Ark』。この単語は直訳すると箱舟という意味だが、曲中に全く箱舟が出てこず、全然箱舟らしくないものがArkと呼ばれている。 そのため、なぜ『Ark』という曲名なのかがさっぱりわからない。 今回はいつもとは異なり、ただただ私がいろいろ考えたものの煮詰まっているさまをお見せするだけになる。 もし他の方で何か知見をお持ちであれば、ぜひご教示いただきたい……。 対象4th Story Ely

【SH考察:105】アルテミシアの断髪と死の関連性

Sound HorizonのMoiraで、アルテミシアは自らの死期を悟ったがその運命に抗わなかった。一方でNeinでは改竄・否定の影響を受けて突如心変わりして逃げ出し、生き延びた代わりにその髪を剣で斬られた。 この「髪を剣で斬られる」という事象は、ギリシャ神話における死の扱いとの関連性が強い。 今回はその点に関する情報を整理しようと思う。 対象6th Story Moiraより『冥王 -Θανατος-』 9th Story Neinより『愛という名の咎』 考察ギリシ

【SH考察:104】エレフとミーシャの身分は紫のせいでバレバレだった説

Sound HorizonのMoiraで数奇な運命を辿る双子、エレフセウスとアルテミシア。二人は幼い頃から紫色のマントのような布を身にまとっている。 彼らに紫を印象付けているキャラクターデザインには、彼らの持つ特殊能力のほかに、史実からわかる紫の価値観も影響しているかもしれない。 今回は古代ギリシャにおける紫色の価値観について、エレフとミーシャと照らし合わせながら考えてみた。 対象6th Story Moira 考察キャラクターデザインとしての「シ」 エレフセウスと

【SH考察:103】「黒き死の病」は身体の黒変を意味しない

Sound HorizonのMärchen及びそのプロローグにあたるイドへ至る森へ至るイドでは、黒死病と呼ばれる恐ろしい病の存在が垣間見える。 この「黒死病」という名称に対して、日本ではしばしば「感染者の身体が黒くなるから」という由来が語られるが、それは誤りだ。 今回はなぜ誤りと言えるのか、また本来の意味を解説する。 対象Prologue Maxi イドへ至る森へ至るイドより『光と闇の童話』 7th Story Märchenより『宵闇の唄』 考察黒死病=ペストである

【SH考察:102】「自由か死か…」という言葉の重み

Sound Horizonの第六の地平線Moiraでは、曲中に「自由か死か…」というナレーションが入る。 前後の文脈からして違和感はなく聞き流してしまうようなフレーズだが、実際のギリシャ史、というよりは人類史を見ていくと、このフレーズに重みを感じるようになった。 今回はこの「自由か死か」の歴史を追っていこうと思う。 対象6th Story Moiraより『奴隷達の英雄 -Ελευσευς-』 考察ギリシャにおける「自由か死か」 エレフセウスが復讐を決意し、奴隷達を味方