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もう一度ピアノが弾けたなら

小学1年生〜中学2年生くらいまでピアノを習っていた。

はじめた理由は友達が習っていたから、つられて自分もやってみたくなったのだ。

週1回30分の稽古で、歩いて10分もかからない先生のところへ行く。

楽しさ半分、面倒が半分といったところだろうか。

ただ飽き性の自分が、よく続けてこれたなと思う。

7年目にして辞めようと思った理由も、とくにない。

強いていえば、面倒くさくなったのだろう。

ところがなに事もなく稽古を終えた最終日、気づいたらクルマの助手席で泣いていた。

これには僕もビックリした。

自分から辞めると言い出しといて、まさか泣くとは思わなかったのだ。

幸い夜で暗かったので、母にバレないようひっそりと泣いた。

こんなにピアノに対して情があったなんて、思いもしなかった。

7年という年月がそうさせたのかもしれないし、自分が知らないうちに愛着が湧いていたのかもしれない。

そんなこんなでピアノを弾かなくなったのだが、短大でピアノの授業があるので電子ピアノを買ってもらった。

6畳ほどしかない自分の部屋が、ピアノに占領された。

久しぶりに弾くなあという懐かしさと、やはり練習が面倒だという気持ちが占めていた。

短大を卒業してからは暇つぶしに弾く程度で、ピアノにはほとんど触れなかった。

むしろ場所をとって邪魔だなという風にさえ思っていた。

数年後ひとり人暮らしを始めようと思い、資金調達のためにピアノを売った。

・・・母に内緒で。

めちゃくちゃ怒られた。

あんなに怒られたのは、小学生以来だったかもしれない。

じつは以前に「姪っ子が使うかもしれないから、べつの部屋に移すまで待ってて」と言われていたのだが、いつまで経っても移動しないので許可なく僕が売ってしまったのだ。(母と姪っ子よ、本当にごめん)

怒られて当然のことをしたのだが、それよりもピアノを売ったあとの喪失感というかショックの方が大きかった。

あんなに邪魔だと思っていたのに。

たいして大事にしてこなかったくせに、あの喪失感は何だったのだろうと今でも思う。

失ってから大事だったと気づくのは、すべてピアノから学んでいる気がする。

ひとり暮らしをはじめてからはピアノの事はほとんど思い出さないが、それでもたまに弾きたくなる時がある。

というか、またピアノがある生活を望んでいる。

だから今度ピアノを買ったら、ぜったいに手放さないと決めたのだ。

もう一度ピアノが弾けたなら、他の誰でもない僕のためだけに弾こうと思う。








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