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昔、空には一面の星たちがいたという。

昔 空には一面の星たちがいたという。
星たちはおしゃべりが大好きだから
遠くの星に「おーい」
近くの星に「ヒソヒソ」
楽しい会話が空一面に黄砂する。
あまりにたくさんの星たちのざわめきは、
やがて流れるように、
積み重なるように、
豊かな階層をもつ音楽となる。
なので地球の人々には
自らが作り出す音は必要なかった。
人々は夜になると星を眺め、
星たちの作り出すメロディーに
身を委ねながら
今を慈しみ、過去を慈しみ、未来を慈しむ。
昔、空には満点の星がいたという。

そんな話は信じない。
私は満天の星なんて見たことがない。
それは妄想だ。
人々の孤独と悲しみの狭間で生み出された
微かな希望が幻を見たのだと。
そうでなければ苦しみに流れる血管
流れの狭間に見た夢だ。

もしもその話が本当だとしたら、
あの星たちは一体どこに行ったの?

教えてあげよう
井戸の中を覗いてごらん。
耳を済ませてごらん。
目を凝らしてごらん
暗闇のずっと遠くに
星々はいる。

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