自分が遺族になったこと③
忌引き休暇から復帰後、まだ悲しみが生々しく、現実感が薄くて、(今の自分に葬儀の司会ができるのかな? 以前同僚だった子は家族が自殺で亡くなった後でも担当中は平静だったな)などと仕事中に考えていた頃。
次に自分が担当する喪家様の情報を見ていて、「あ」と思った。故人の奥様が亡き母と同名だった。漢字も同じ。母の名前はそんなに珍しくないけれど、そこまでよく聞く名前でもない。
んーーーーー、やだなぁと正直思った。同時に、神様の介入だと感じていた。5件ほどの式が入っている中で、そこの喪家様の担当がまわってきたからだ。
喪主様は故人の実子で、故人の奥様が決定権者だったにも関わらず、私は喪主様とばかり打ち合わせをしていた。
奥様の名前を呼ぶと、思い出してしまうから嫌だった。
葬儀にはたくさんの参列者がきた。祭壇も、花が盛り盛りで美しい祭壇だった。
結果的に、喪家様に満足していただける送り出しが出来たと思う。
後日、渡すものがあり、喪家様の家を訪ねた。奥様が対応してくださった。
短い時間、話した。
「今にもあの人が帰ってくるんじゃないか。ただ少し出かけているだけなんじゃないかと思うときがある」
率直に喪失感について語ってくださった。配偶者を失くした悲しみについて、思った。名前のことを伝えようとしたが、できなかった。
母を失くしてしばらく、担当した何度かの式の中で、出棺直前の花入れの時、自分の母の見送りと重ねていた。他の人の式を通じて、私は何度も母を送った。他の人の手を通して、たくさんの花を送った。
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