産みたくないと言ってもいいですか?〜命懸けの妊娠出産〜66
リハビリが終わった後、夕食まで少し時間があったので夫にLINEをしようとスマホをいじる。さっき撮ってもらった赤ちゃんとの写真。綺麗に撮ってくれている。赤ちゃんの顔がはっきりと写っており私は満足して夫に写真を送りメッセージを添えた。
『やっと赤ちゃんに会えたよ〜!でも朝から気を失っちゃった…。真っ白な世界で怖かった。なんかそのまま死んじゃうんじゃないかと思ったよー…。』
LINEに夢中になっていると部屋がノックされ慌てた助産師さんが入ってきた。
「空月さん大丈夫!?」
「へ?あ、はい。大丈夫です。」
「酸素の値がかなり下がってたけど何してたの!?」
「LINE打ってました。」
「そうーーーー…。」
助産師さんはほっとしたような顔になり、私に
「しっかり呼吸してくださいね。」
と言った。私は明日夫が休みだが来てもいいか聞いてみようと思った。
「あの、明日夫が休みなんですが来てもらっても大丈夫ですか?」
「空月さん的にしんどいですか?」
「今朝のこともあって怖かったし少し会えたらと思うんですが。」
「わかりました。確認してきます。」
と言って助産師さんは部屋から出ていった。
(急になんだったんだろう。)
よくわからないが呼吸をしっかり意識してするようにした。鼻から酸素を入れているし、私はちゃんと息をしてるつもりなんだけどなぁ。と不思議に思っていた。
その後少しして夕飯が運ばれてくる。夫が来てもいいと許可がおりた。
(食欲ないなぁ…。)
なかなかご飯が喉を通っていかない。
(それにしても、お祝い膳っていつなんだろう。)
ちょうど1年前に同じ病院で出産した姉からお祝い膳が出ると聞いていた。姉は産後2日目に出たと言っていたが。自然分娩と帝王切開とじゃ少し違うのかもしれない。
(帝王切開は絶食期間がある分少し後にお祝い膳が出てくるんだろうな。楽しみ!)
夕飯を半分以上残して終わる。夫からLINEが帰ってきた。
『赤ちゃん小ちゃいね!可愛い!もう今は大丈夫なの?』
『可愛いのかはわからないけど、鼻の下の彫りが深いし…。小さいけどしっかり爪もあるし耳も大人と一緒ですごいよ!今は落ち着いてる。けど本当に死ぬかもしれないって思った…。』
『いや、いい顔してると思う。男前だわ。そんな簡単に死なないでしょ。』
(もう親バカになってる!)
『そういえば明日来てもいいって。面会は一応13時からだけどどうする?』
『じゃ、その頃に行くね。』
『わかった。前と同じようにインターホンで名乗ってからきてね。』
『OK!じゃ、ゆっくりおやすみ。』
LINEを終えると胸が張っているので助産師さんに搾乳を頼んだ。昨日からかなり出るようになってきている。お腹も痛い、胸も痛い、起き上がれないから腰も痛い、頭を上げると左肩から肩甲骨にかけても痛い。痛いところだらけだ。
早く明日にならないかな。夫に会いたい。赤ちゃんに会いたい。
私はそのまま眠りについた。
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