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産みたくないと言ってもいいですか?〜命懸けの妊娠出産〜32

カウンセリングで過去を掘り下げることはなかなかしんどい作業となる。一度のカウンセリングで話せる時間も決まっているので話はなかなか進まない。出産するまでにどれだけ自分の過去と対峙出来るんだろう…。

7月後半に入るとコロナがかなりの猛威を振るっていた。連日テレビで放送される感染者数や死者数、病院の逼迫具合。家にいてテレビを見ていると気が滅入るが録画のドラマも映画のDVDも見飽きてしまいやることがない。お腹の張りが酷く外に出ることもなかなかに難しく、だからと言って座り続けることが出来ず大好きだった手芸も作業が進まない。つわりで寝込むことが少なくなった今、自分のしたいことが出来ない、コロナ不安、動けないことにイライラが募る。

元々食べることが好きで妊娠前は夫と美味しいお店を見つけることが楽しかった。夫婦2人なら気軽に外食が出来る、コロナでだいぶ制限はされていたがそれでも安全の範囲内で外食を楽しんでいた。

それなのに…。

26週の妊婦健診前、私は糖負荷検査を受けるために処置室にいた。

「前日は9時から絶食、検査3時間前から絶飲食していただいてますね?」

「はい。」

朝イチ8時50分からの検査。起きてから飲むことも出来ず喉はカラカラだった。妊娠してからやたらと喉が渇き、夏も本番になり汗が止まらないからか常に飲み物を欲していた。そんな状態での絶飲食はかなりきつい。

「ではまず1回目の採血をします。その後甘いソーダを飲んでいただいて30分後、1時間後、2時間後と計4回採血します。検査が終わるまでは絶飲食なので我慢してくださいね。」

(11時まで飲むことも許されない…、まじか…。)

始まる前に喉の渇きはピークなのに…。1回目の採血をされソーダ水が出された。

「飲み辛いかもしれませんが全部飲み干してくださいね。」

ごくごくごくごく…。

(んー、おかわり!!)

飲みずらいどころかもっと飲みたいくらいに喉が渇いている。

「飲めましたね、早いですね、喉乾いてました…?」

「はい…あはは。」

「では30分後にまた採血しますので5分前にここに来てください。病院から出ることはしないでくださいね。」

これを1時間後、2時間後と待って採血、待って採血をし終わったら産科で妊婦健診という流れだった。

病院内どこに行くでもないので処置室の前で待っていたが座って待っているとどんどんお腹が張ってきてしまったため横になって待たせてもらった。

「では、検査はこれで終わりですので産科に行ってください。」

2時間の検査を終えた私は産科に行く前に自動販売機に寄り水を買ってほぼ一気飲みした。甘いソーダは飲んでいる時美味しかったがその後の喉の渇きはヤバかった。口に中がカラカラで甘さでネチャネチャ…。水美味しいー!と飲んだ後持ってきていたおにぎりを2個お腹に入れ産科へ行った。

産科で順番を待っているとやたらと汗をかき始めた。そして目の前がぐるぐると回り出す。

(あ、これヤバいやつだ…。)

目の前が暗くなり始める。急いで近くにいた事務員さんに声をかけると助産師さんが走って駆け寄ってきた。私は横にならせてもらいお腹にはベルトを巻かれた。胎児の心音が聞こえてくる。

「空月さん、こういうことよくあるんですか?」

「いえ、さっきまで糖負荷検査だったので脱水かもしれません。」

「あー、あれしんどいですからね。順番来るまでここで休んでいてください。呼びに来ますので。」

10分ほど休んでいるとだいぶ楽になった。そのあと、妊婦健診を受けると

「胎児の成長が早いですね。お腹がはりますか?」

「あまりお腹が張りすぎると子宮に負荷がかかって空月さんの子宮じゃ耐えられなくなって、子宮破裂とかになりかねないので張り止めの薬を出しますね。張ったら飲んでください。」

「子宮破裂!?」

「気をつけていれば大丈夫だと思うので出来るだけ動かないように生活してください。」

「でも体重が…。動かないと…。」

「次の検査結果で栄養士の指導を予約しておきますので食事の方で体重管理をしていきましょう!」

いろいろと出てくる問題。妊娠って本当、普通じゃいられないんだなと実感していた。スタスタ歩く他の人が羨ましくて仕方ない。




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